上 下
308 / 385
18歳編

落とし前(3)

しおりを挟む
 
『は~い! というわけで、ディアスさん、ラウト、シズフさん! 三号機のシステムに連結よろしくお願いしま~す! こっちで情報処理してターゲットロックオンしますね~!』
『ほう。了解した』
『了解』
『……了解』

 ……やっちまいましたか? 俺。
 やっちまいましたね?
 これはやってしまったな? 俺。
 めちゃくちゃ楽しそうなファントムとジェラルド。
 それに興味深そうな笑みで返事をするディアスと、冷静なシズフさんにちょっと不本意そうなラウト。
 俺抜きで十分って感じですか?

「あ、あの、ファントム……これからなにが起こるんでしょうか?」
「千年前はシンプルにギア・フィーネが別の勢力に散ってて、できなかった技術を使う。簡単に言えば『連結』だな」
「連結?」

 それがなに、って感じだけど、ファントムの説明によると『ハッキング』はそもそもギア・フィーネ同士がシステムを“連結”させる機能の応用にすぎない。
 連結するとどうなるの、って話だが、共闘用の連結が行われると『思考共有』と『思考加速』、さらに『未来予測』ができるようになる。
 これはギア・フィーネのGFエンジンに入っている“天才”の脳が拡張され、量子演算コンピューターが強化されて可能になるギア・フィーネ最強のシステム。
 実は千年前、四号機と三号機はギア4に到達した戦争終期に使えるようになったようだが、その時点でもうすでに“一国家級の脅威”として認められたのはそのシステムを二機で使用した結果。
 はい。もうそれだけ聞いてすでにヤバいですね。
 ギア・フィーネの登録者の思考を共有し、思考を加速して未来予測を行う。
 相手の行動の先読みができるということもすでにヤバいが、それをやるのがギア・フィーネっていうのがヤバいのだ。

「まあ、俺も二機以上が“連結”するところは初めて見る。俺とアベルトで行った“連結”はアイツが最前線で突っ込んで、敵を撹乱したところを狙撃するってやり方だった。ただ、まあ、あの頃すでに俺とアイツは“連結”せずとも互いのやるべき役割が明確になっていたから、使ってもあまり関係なかったんだが」
「……まさしく戦友なんですね」
「まぁな。正直ラウト・セレンテージ……あいつがアベルトの手の汚れなんぞを気にしていて、最後まで手を取らなかったのはアイツの覚悟への侮辱だとさえ思っていた」
「っえ」

 エアーフリートの中に初めて入った時の話、聞いてたのか?
 驚いて顔を上げると、ファントムは腕を組んで膨れっ面になっている。

「アベルトは必要なら敵を殺す覚悟をちゃんとしていた。今のお前のように。ただ、それをさせたくなかったやつらが、お節介でそうさせなかっただけだ。……その筆頭が超天才で、超最強な狙撃能力を持つこの俺だったってだけで」
「……ファントム……」
「俺はあのクソガキにも落とし前をつけさせるぜ。とりあえず今日のところは“連結”でその意味を理解させるけどな。位置情報はリアルタイムで転送するから、お前はとっとと移動を開始しな。俺は“王都ここ”から狙い撃つ」

 は?
 思わずファントムが表示したままの管理機体二機の場所を見る。
 えーと? これは……距離的に国の中央から端ってレベルだが?
 北海道の中央から、尻尾みたいなところまでの距離を撃つって認識でよろしい?
 そんなことできんの?

「本当は俺一人で両方同時に撃ち抜くこともできるけどな。回収に行く必要があるから、仮名称ベータのメインカメラで許してやるよ。お前は仮名称アルファを潰せ」
「……っ、りょ、了解」

 と、ファントムは東から南へ向かって動くモノを指差す。
 それを仮名称アルファとし、俺が担当する。
 北から西へ動いているモノはベータ。
 ファントムが担当してくれる。

「じゃあ祭りの開始だ。開催宣言は言い出しっぺがやれよ、王子様」
「え」

 ちらりとジェラルドたちの顔が表示されるモニターを見る。
 地図と同じく浮かぶそれらから、四人それぞれの顔が俺を見つめていた。
 ジェラルドとディアスはニヤニヤと。
 シズフさんとラウトは無表情で。

「……。……こほん! では、始末してください」
『『『『了解』』』』

 聖女たちの歌声が響く中のギア上げだ。
 四人の右目が各ギア・フィーネの右目のカラーと色が替わる。
 その上で、さらにギアが上がると神鎧化しているシズフさんとラウトの両眼が金に輝く。
 神鎧を纏う神の証。

「俺たちも出るぜ」
「はい」

 ファントムと俺も自分の機体に乗り込む。
 エアーフリートのハッチが開き、送られた位置情報を頼りに空へと飛び出す。
 結界の上に重なった殺戮兵器はうごうごと忙しなく動き回り、結界へ攻撃を行なっている。
 あんなものが結界の中に一機でも入り込めば、村一つ町一つ容易く殲滅するだろう。
 そんなことはさせない——!

『るんるる~ん♪』

 ギア・フィーネの“連結”システムが作動する。
 王都から離れながら後方をモニターで確認すると、俺もどうやら“連結”システムの中に入れてもらったらしくてモニターを見ずとも状況がわかってしまう。
 え、すげぇ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...