終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

誕生日と結婚式(2)

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 初めてなのか?
 ミドレ公国と地続きだった頃やってない?
 わからんけど。

「いかん、すでに意識が朦朧としてきた」
「レナ様、ヒューバート様をしっかり見ていてください。この方すぐ命狙われますからね」
「へあ!? は、はい!」

 パティ、余計なことをレナに吹き込まないでほしい。
 俺が意識朦朧としているのはレナの美しさが原因だ。
 でも、昨日トニスのおっさんに「セドルコ帝国は暗殺がお家芸ですから、影の警護はフル活用してくださいね。あと、解毒薬はあるだけ全部取り揃えておいてください。ディアスの旦那とリーンズさんにも、必ず近くにいてもらってくださいよ」と、くどくどくどくど注意された。
 食事には全部[全異常浄化]魔法がかけられる予定だし、ラウトによるご加護【反射結晶】が俺とレナと父上、母上、レオナルドにかけられる。
 ラウトのこの【反射結晶】とはラウトの権能『結晶病』を用いた加護。
 簡単に言うと——自動反撃フルカウンターである。
 もし俺が攻撃を受けたら、自動でこの加護が発動して俺に攻撃した相手を結晶化させるのだ。
 ……過剰報復すぎん?
 そう心配した俺に対して、ラウトが嫌悪感丸出しの顔をしたのは忘れられない。
 お前その表情一部界隈にはご褒美だぞ。

「ですがパティ、ヒューバート様を害して得をする方がいるのでしょうか?」
「当たり前でございましょう! レナ様だって狙われる可能性は高いんですよ! というか、影の者が処理していますが、レナ様だって何度も襲われかけているのです」
「え! そ、そうだったんですか!?」
「ヒューバート殿下の婚約者という理由で、十分その対象になります! 実際何度かミドレ公国に行った時は、ヒューバート殿下がその危険性を感じてレナ様を安全性の高いミドレへ逃しておられたからなのですよ」
「えっ」

 あ、その話今する?
 もう昔のことだと思うんだけどなぁ。

「ヒューバート様、そ、そうだったのですか?」
「まあ……レナには安全なところで心穏やかに過ごしてほしいし」
「っ……!」

 言葉にならない、とばかりに顔を赤らめて、感動している様子のレナ。
 パティに「早いですよ」と叱られているけれど、俺はきっとこのあと記憶が残らないからいいんじゃないだろうか。



 ——緊張しすぎて意識が朦朧とする。
 ウエディングドレスのレナが聖殿の祭壇前に、ゆっくりと歩み寄ってきた。
 ルオートニスの結婚式では、嫁入りする場合新郎が先に入場して祭壇の前に立ち、花嫁を待つ。
 婿入りの場合は逆で、新婦が祭壇の前に立ち新郎を迎え入れる。
 招待客の前でお辞儀をしてから、客に対して愛を誓い合い新郎のタイと新婦のブーケを交換。
 新郎はもらったブーケを花嫁の方に差し出し、花嫁は新郎にもらったタイをブーケの持ち手部分に結ぶ。
 そして新婦がブーケを再び受け取って、新郎と共に聖殿の外へとでる。
 お客さんも外へ出て、背を向けた新婦がブーケを後ろに向かって投げるブーケトスを行い、オープン馬車で町の人へもお披露目。
 ブーケトスの文化がこの世界にもあって驚いたけど、ディアスも「千年前の結婚式の形式がまだ一部でも残っているとは」と言っていたから千年前からブーケトスは人気だったんだろうな。
 なお、俺はマジで記憶がない。
 気づいたらそのブーケトスになっていた。
 緊張で記憶が飛ぶって本当なんだね。

「……レナ?」
「はっ!」

 レナも記憶が飛んでない?
 大丈夫?
 聖殿の外まで来てようやく俺もレナは意識を取り戻したらしい。
 このブケートスのあと、町でお披露目という名の市中引き回しが行われるのに、意識なんてない方がよかったんじゃない?
 でもまあ、レナの場合はちゃんとブーケトスしないとだしなぁ。

「では、ブーケトスのお時間です!」

 司会がそう叫ぶと、レナがあわあわしながら集まった人々の前に立ち、後ろを向く。
 というか、俺と向き合う形。
 ブーケトスといえば女性が並ぶイメージだが、未婚ならば男も並んでいい。
 なんならこのブーケトスでブーケを得て、意中の女性に交際を申し込んだりプロポーズするのが“男気”とされているそうだ。
 なるほどねぇ。
 というわけでランディとミレルダ嬢が参戦していて、俺の頬は引き攣った。
 ジェラルドォ……お前は参加しないのかよぉ……なんでミレルダ嬢の方が腕まくりしてんのぉ。
 っていうか——未婚勢の圧が凄まじい……!!

「い、いきます!」

 その言い知れぬ圧を感じ取り、レナも声が固い。
 先程までのふわふわした表情がかけらもなくなっている。
 真剣な眼差しで俺を見て、こくりと頷かれた。
 な、なぜ?
 わからんけど、俺も頷いてやった。
 するとなにか意を決したように、レナは後ろへ向けてブーケを投げる。

「!? なんだ!?」

 奇妙な感覚を覚えて空を見上げた。
 次の瞬間落下してくる赤黒い粒。
 聖女の結界に阻まれて結界の内側までは入ってこれないようだが……レナも感じて見上げている。

「ヒューバート様、あれは……!」
「国中に落ちている——!? まさか、宇宙からの攻撃か!? 本気でまだやる気なのか!?」

 しかも、今日!?
 ビタビタと空が黒いものに覆われ始めたことで、ブーケトスに夢中になっていた者も空を見上げ始めた。


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