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18歳編
誕生日と結婚式(1)
しおりを挟む女性向けラノベを原作とした漫画『救国聖女は浮気王子に捨てられる~私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした~』。
聖女候補、レナ・ヘムズリーは、体内に結晶魔石を持つことで気味悪がられ、実の両親に虐げられていた。
しかし、類稀なる資質を持っていたことで王太子ヒューバートの婚約者となる。
でも、その婚約者のヒューバートも平民上がりの聖女マルティアに寝取られ、婚約破棄の上なんと国外追放されてしまう。
レナの力で国を守っていたルオートニスは結晶化した大地に侵食され、結晶病で両親が亡くなり新王となったヒューバートは責任を取らされてレナと同じく結晶化した大地に追放される。
対してレナは、聖女の体ということで結晶化した大地を歩いても結晶化することはなく、彷徨い、そして[死者の村]で魔王と呼ばれる男に保護された。
その男は『デュラハン』と名乗り、レナの聖女としての才能を見抜いて重宝してくれる。
貧しいが、とても穏やかで幸せな日々を送る聖女レナとデュラハンの物語。
ザマァはしっかり描かれ、レナとデュラハンが力を合わせて結晶化した大地を浄化して村を地上に降ろし、土地を広げて一つの王国を作っていく。
ルオートニスはその時に一度滅び、かつてルオートニスだったところをレナが訪れて亡んだ祖国を想うシーンもある。
聖女としての優しい姿。
そして悲しみに暮れるレナを慰めるデュラハン。
村がどんどん大きくなるストーリーは、間もなく最後の困難——結晶化津波を迎えようとしていた。
俺が続きを読みたかった、ラストイベント。
漫画の中のレナとデュラハンは、きっと結晶化津波だって愛の力で乗り越えていくことだろう。
そうさ、きっと漫画のレナとデュラハンも、どんな困難だって二人で支え合い、村の人たちを守りながら乗り越えてハッピーエンドだ。
「ヒューバート様」
「っ……」
通された新婦の控室。
純白のドレスに身を包んだ、白菫色の髪、薄花色の瞳の花嫁。
言葉が出てこない。
この世にこれほど美しい存在があるだろうか?
俺の語彙など素足で逃げ出したぞ。
どんな言葉を尽くしても、言い表せる表現が見つからない。
それでもなんとか絞り出さねば。
そう、せめて……せめて一言でも……!
「全部口に出てますよ。やっぱり一生直らなそうですね、それ」
「うっ」
パティにツッコミを入れられ、口を押さえる。
そうか、全部口に出ていたか。
俺の口は相変わらずレナ限定で洪水の如く全部出るな。
「え、えーと、あまりにも美しすぎて美の概念の女神かと思ったけど、それだと俺の奥さんとして人間の世界にいてもらうことができないから、レナはずっとレナでいてほしいと思うぐらい本当に綺麗だよ。ちょっと美術品かってくらい完璧なる美そのもので、隣に立つ覚悟ができないし目が潰れそうなほど眩しくて直視できないけど美しいというのだけはよくわかるっていうか」
ちょっと言語おかしくなってそうだけど、まあ、うん。綺麗だよ。
っていうかそれ以外の言葉がないよ。
人間って不自由だね。
「あ、ありがとうございます。ヒューバート様のタキシード姿も…………と、とても素敵です」
「あ、ありがとう。レナと母上がデザインを考えてくれたんだよね」
「……は……はい」
「レ、レナ?」
急に俯いてしまって、どうしたんだろうか?
すると隣でによによしていたパティが、「レナ様もヒューバート様を直視できない状態なんですよ」と言う。
え、ええええ?
「だ、だって、わ、わたしがヒューバート様に着ていただきたいなって、思った服を、ヒューバート様が着ているんですよ……!? い、今までヒューバート様にいただいたドレスを着て、ヒューバート様が『直視できない』って言ってる、大袈裟だなぁ、ってちょっと思ってましたけど……大袈裟じゃないですね、これ! 無理ですね!」
「だろう!? 無理だろう!? 直視できないよねぇ!?」
「無理ですねぇ!」
「頑張って慣れてくださいお二人とも! 結婚式ですよ、今日! 本番ですよ!」
と、パティに叫ばれるけど、それなら昨日の打ち合わせの時にどうしてウエディングドレス姿のレナを見せてくれなかったんだ。
こんなことになるのは、ちょっと考えればわかるだろう!
まあ、レナまで俺なんかのタキシード姿にそんな、「直視できない」症状が出るとは思わなかったけれど。
耐性貫通効果付与のレナのドレス姿なんて、初見でどうにかできるわけないだろう!
レナのドレス姿はいつだって初見殺しだぞ!
それなのにパティが「ウエディングドレスは本番にお見せします」なんて言うから!
そら見たことか。
やっぱりこうなったじゃないか!
こうなると思うじゃん、普通!
「各国の要人も来ておられるんだからしっかりしてください! 国際的なお客様を招いての結婚式なんて、世界初ですよ!」
パティはそう言うけど、この時代になってからの世界初でしょ。
千年前は普通に行われてたと思うよ。
まあ、この国になってからは初めてだろうけれど。
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