終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

対策会議(4)

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「全戦力でないにしても、広範囲に攻撃を展開されると面倒ではある。こちらは防衛に集中し過ぎているところがあるから」
「……それは……」

 俺が「話し合いを」第一に考えているから、攻勢に出られないことを言ってるよね。
 それに不満は持っていなさそうだけど、宣戦布告されたならばって感じだろうか。
 宇宙側もこちらが攻勢に出るのは本当に嫌だろう。
 しかし、こちらが攻勢に転じることはない。
 ラウトの帝都への衛星兵器降下は、正直“偶然”と言い張れば通ってしまうからだ。
 もちろん宇宙側からは軌道のデータを取られていて、ありえないと言われればそれまでなんだけどさ。
 少なくとも地上では確認のしようがない。
 神の怒りに触れた、といえば——それだって真実なのだ。
 だって落としたのは本物の“神”なのだから。
 荒神の怒りに触れたセドルコ帝国の帝都に、煽った宇宙の兵器が結晶化して墜落したのだ。
 それこそが絶対的な力——神の審判。
 人間がとやかく文句をつけるのが愚かなのだ。
 ただ、それでもルオートニスがギア・フィーネとその神々を消しかけて攻勢に出ることはない。
 それを見越した上で、宇宙がさらにセドルコ帝国を傀儡に戦争を続けるというのなら……守るために剣を取らねばならないだろう。
 本当に、セドルコ帝国と宇宙の人々にはお勧めしないけどね。

「もー、乗り込んで結晶病ばら撒いてくればよくね?」
「俺もその方が早いと思う」
「やめてね?」

 気が短くファントムとラウトは殺意が高すぎる。
 今までの俺と父上の話聞いてた?
 いやぁ、対話って本当に難しいよねぇ!

「じゃあ俺が行ってあげようかぁ? しっちゃかめっちゃに仕上げてきてあげるよぉ」
「起きてたの? 宇宙の狙いはデュレオだからね!? 自覚して!?」

 あともうお前らが行くとオーバーキルだからやめてあげて。
 ラウトの今回の衛星兵器降下はマジでオーバーキルよ?
 オーバーキルやめてって言ってるよね?

「じゃあ俺様が直に『ハッキング』してコロニー全部衝突させて一網打尽にするか」
「オーバーキルやめてって言ってるんだってば! 会話! 俺は宇宙の人たちと会話をしたいなぁ!?」
「会話だなんてそんな野蛮な。ここは穏便に謀略と暴力で制圧してしまった方が早いよ~。……ファントムの言う通り全部コロニーを地上に落としちゃおうよ。今回の衛星兵器の落下も衝撃まで全部クレアのご飯になったんでしょう?」
「っ……それは……」

 そうらしいんだわ。
 衛星兵器がセドルコ帝国の帝都に落下したのは、約六時間前。
 しかし、その時に起こるはずの衝撃波がルオートニスには来なかった。
 これは、異常である。
 そんなことはあるはずがない。
 さすがに衝撃波までレナや聖女候補たちの結界で防いだのか、って思ったが、あれは空気の振動なので結界では防げないそうだ。
 規格外の強風みたいなもんなので。
 だから、落下地点をトニスのおっさんの使い魔で調べてもらったが、帝都は一度巨大な結晶柱に包まれて、その後少しずつその柱が地面に消えていった——という証言が多く上がった。
 おそらくだが、帝都に落ちた衛星兵器とその衝撃、落下による帝都の死者たち——すべてを結晶病で包み、クレアとギアンが取り込んだのだと思う。
 結晶化津波で国を一つ喰らうより、ある意味効率的に生命エネルギーと落下により発生した膨大な衝撃のエネルギーを得られたはずだ。
 衝撃波で帝国の他の村や町、うちの国やミドレ公国に被害が及ばなかったのは、ある意味ありがたいのだが……。

「宇宙のコロニーを全部地上に落として、エネルギー発生の概念に変換してしまえば、このまま地上の結晶化した大地クリステルエリアを治療し続けて人口を増やしていっても、きっとあと数百年は“保つ”んじゃない? 効率的でいいと思うなぁ~」
「だとしても……それ以外の方法を選ぶよ。人が多く犠牲にならなくて済む方法がいい。宇宙の人たちが地上に抗えない郷愁を感じるのなら、新たに治療して得た土地に住んでもらえばいい。労力はたくさんある方がいいからね」
「はあ?」

 あれ、なんかデュレオにすごい顔で睨まれた。
 しかもファントムやラウトにまで変な顔をされている。
 ナルミさんとディアスは、どことなく呆れたような目で見られてない?
 俺なんか変なこと言った?

「驚いたというか、呆れたというか……ヒューバート殿下って本当にお人好しなんだね」
「え」

 本当に心底呆れ果てたかのように溜息を吐かれ、ミレルダ嬢に頭を抱えられた。
 父上を見上げると優しく微笑まれる。

「よいよい。救世の王たる者、そのぐらい器が大きくなければ」
「な、なんかそんなに変なこと言いました?」
「ううん。単純に攻めてきた敵にそこまでの待遇を与えるなんて、信じられないって話だよ。でも、ヒューバート殿下の考え方は未来的なのかもしれないね。小さくなっていく大地を、いかにして奪い合うか——そうして生きてきたから、逆に土地を与えるって言われると本当に驚くんだ」
「ああ、なるほど」

 ミレルダ嬢に言われて納得した。
 もう千年前からこの世界は、土地を失い続けているのだ。
 土地がなくなるということは、住める人間も限られているし、作物も家畜も増えないということ。

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