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18歳編
将来の話をしよう(2)
しおりを挟む出店を離れて、少し人気のない場所に向かう。
下町の公園もずいぶん整えられて、居心地がいい空間になっている。
リーンズ先輩の研究は庶民にも浸透しているんだな、と実感するような花壇。
草木で作られた小丘と、植えられた木々。
ここなら話しやすそうだな。
見晴らしもいいし、大通りも見える。
「俺は父上になにかあれば王になる」
「はい」
「レナも、王太子妃から、王妃になるだろう。何事もなければ」
「はい」
「仕事は俺の両親と同様の振り分けになると思う。……問題はお互いに忙しくて時間が合わないんじゃないかってところ」
「は、はい。それはあり得そうですね。とても」
レナもやはりそう思っていたのか。
実際今日の午前中合わせるだけで、数日前から調整したもんね。
「だから、先に決めておきたいんだ。どんなに忙しくても、俺はレナを優先する時間を作りたい。俺たちはまだ学生だけど、結婚したら夫婦としてやるべきこともある」
「っ」
そう、子作りとかね。
「けど、俺はそれを義務だけだと思いたくない。レナに、えっとその……俺との子だから欲しいって思って欲しいっていうか」
自分で言っててセクハラっぽくて冷や汗が出る。
大丈夫? これ。
訴えられたりしない?
「あと、単純に俺がレナともっとイチャイチャしたいというか」
あああああ、願望がヌルッと溢れたー。
「あ! 学生のうちはさすがに妊娠とかさせないから安心してほしい! そういうのは成人してから……」
待って。
この国の成人年齢18歳やんけ。
俺来週誕生日で18歳やんけ。
いかんいかんいかん。
「あ、いや。成人して、卒業してから」
つまり今年の師走の三十一日以降ということですね。
具体的に言うと。
いや、具体的に将来のことを話したいってこう言う意味じゃねーからな!?
「でも、成人して卒業後ってお互いすごく忙しくなりそうだしなぁ……。妊娠したら仕事セーブしなきゃいけないよね」
母上がライモンドを妊娠中そうだった。
それでその影響がレナにきたのだ。
側室がいれば手伝ってもらえるけど、俺は側室を娶る気はないし。
「……子作りも王族の義務です、ヒューバート様」
「そ、そうだよね。でも俺はレナが聖女の仕事も好きっていうか、大事にしてるの知ってるつもりで——」
だから、レナが自分の、聖女の仕事を諦めなくて済むように、って思って話をしているつもりなのだが、レナの表情がなんとも言えずに綻んでいて硬直した。
え、かわいい。
かわいいけど、でもなんでそんな嬉しそうにはにかんでおられるのかがわからない。
「レ、レナ?」
「に、妊娠しても出歩けなくなるわけではありません」
「そうだけど……安全のために母上は城に篭ってるよ?」
「はい。そうなったとしても、王妃としての事務処理がたくさんあります」
「そ、それはそうだね」
母上も楽な姿勢——なぜか立って仕事をしていた時があり、聞いたことがあるんだけど妊娠中ってなぜかよく痔になるらしいよ。座ってられないんだって——で仕事していた。
そうしなければならないほど、王妃という立場も仕事がある。
まあ、お茶会とか社交が主な仕事の一つでもあるので、母上は妊娠中も意地になって毎月お茶会していたけど。
レナはこれから国外外交も加わってくるから本当、母上の比ではないのではと思う。
レナの負担が減るのなら、信頼できる外交に秀でた側室が必要なのかな、と思う時もあるけど……それはレナが望んだ時に検討したい、って、そういう話もしなければ。
ただその時はマルティア以外でお願いします。
「ヒューバート様、大丈夫です。わたし、この国とヒューバート様のためなら頑張れます。でも、頑張りすぎて体を壊してはいけないからと周りが本当に気遣ってくれます。倒れたことはないのですが、ヒューバート様を見て周りの方々……特にパティとマリヤがすごく気遣ってくれて」
「あ、ああ……」
俺、レナの反面教師にまでされてんの?
ありがたいけどね?
さすがはジェラルドのねーちゃんだよ、優秀だなぁ。
「だからわたしは大丈夫です。卒業して、健康状態がお互いに良好な時に……わたしは、王太子妃としてのお勤めと……そして、ヒューバート様を好きな一人の女の子として、ヒューバート様の御子を授かりたいと考えています」
「っ、レナ……」
「今日の、この時間を作るのが、ヒューバート様にとってもとても大変だったのだとわたしにもよくわかります。それなのに、今後も二人の時間を作ろうと心がけてくださり、嬉しいです。あの、では、土曜日の夜、夕飯は必ず共にするというのはいかがでしょうか? 明確にしておけば、周りの皆もそのように予定を組んでくれると思いますし」
「あ! それいいね! 俺は日曜日強制休日だし」
休日に強制がつくってなんだろうな?
しかも日曜日が強制的に休みにされるって。
俺、来週18歳だけど今のところまだ17歳なのに。
「じゃあ土曜日の夜は俺が夕飯作ろうかな」
「ま、まあ! ず、ずるいです!」
「ずるい!?」
「わたしもヒューバート様に手作りのご飯を食べてもらいたいです! 各週ごとに交代しましょう!」
それはつまりレナも俺の手料理を食べたいと?
は? 愛しみの嵐か?
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