終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
292 / 385
18歳編

将来の話をしよう(2)

しおりを挟む
 産声を上げることなく生まれた正妃の生んだ第一王子は、その後の成育状態で一般的な発育との違いが指摘され、また、王家のみで行われる簡易的な精霊との相性判断でも、魂の力の薄さが明らかになるだけで、どの精霊から反応もなかったことから、王子の存在そのものを問題視するものまで現れる始末。

 誕生の祝いにと訪れた貴族達は、ただ眠っているとしか見えない赤子の頭上で、値踏みするような視線とともにひっそりと交わされる会話を当の赤子が聞いていることを知りもせずに……。

「一応陛下の初めてのお子様だからな、それも男児」

「しかし……ここだけの話、このご様子では難しいのではないか……」

「ん?難しいとは、ご成長のことか?次代は?と言うことか?」

「イヤイヤ、そこは……。陛下もまだお若い、側妃や愛妾を持たれれば、長子が次代と決まっておる訳でも……」

「あぁ、伯爵はまだご存じなかったか。陛下は……イヤ、そろそろ暇致そうか」

「侯爵様。ここには我々しか居りませんぞ、このように話を途中で終わらせられると、明日私は寝不足で仕事も手につかないでしょう」

「うむ、それも困るな。伯爵の錬金術は、それは素晴らしいものだ。これからも我らのためにその手腕を振るってもらわなければ、公爵様も期待しておるしな。……ここだけの話だ、まだこのことは公爵家とその縁戚たる数家の侯爵家しか知らぬ事……」

「それは是非とも、この金を生む事しか能のない私が、本領を発揮するためにもお教え願いたい」

「この数ヶ月前か、陛下はとある伯爵家を、またぞろ訪ねた」

「とあるとは……あの!まだ切れていなかったのですか?」

「うむ。会いに行った人物は、『あれ』ではなく、可愛い盛りの……な」

「まぁ、親心というものですかな。生まれながらに陰にいなければならない子と、これから生れ出る輝ける子。……輝けるかどうか、この様子では、ですが」

「確かにそのような気持ちがあったのかもしれないがな。とにかくその時に、偶々その子が掛かっていた『風邪』に感染ってしまったらしくてな……」

「風邪ですか?」

「あぁ、子供ならばただの風邪。大人が感染れば……『種無しの風邪』にな」

「なっ、なんと⁉︎」

「であるから、これから陛下の御子のお生まれになる可能性は、限りなく無に等しい」

「そう、選択肢は……」

 その時には、少し場を離れていた乳母が部屋に入ってきた。

 次代の王になるかもしれない嫡男である赤ん坊が、ただ一人部屋に置いておかれている事がすでに異常な事であるのだ。その上部屋の中に有象無象が入り込める状態である事も。

 誰もいないと思っていた乳母は、部屋の中に入り込んでいた人物が、自分より身分の随分と高い、侯爵と伯爵である事がわかると、抗議の声をあげるでもなく、頭を下げた。

 誕生のお祝いは、この寝室まで入る事なく次ノ間で王妃の女官が受ける事になっていたはずである。しかし、その指摘を乳母の身分でする事も難しい。乳母の元々の身分も、王子の乳母となるには思いもよらない程低いものであったのだ。

 いくら身分が高いと言っても、この場所に入っていた事は言い訳のきかない事。

 恰幅のいい二人の男は、小さく咳払いをすると何事もなかったかのように次ノ間に移動を開始する。

 その時に、何気なく体に似合わない大きなベッドで眠っているはずの王子にチラリと目をやった。

 その瞬間、侯爵は背筋に走った冷たさに、肉の厚い肩が思わず震えた。

 何もなく眠っているだけと思っていた赤子が、パチリと目を開けて侯爵を見つめていたからだ。その瞳の色はまるで何もかも見透かすような、深淵の泉の淵に立たされているような、そんな心持ちを持たせる、とても赤子とは思えない虚無の色。

 この王宮で成人を迎えた15の時より、策謀の波を泳いできた侯爵が、恐れを抱くそんな瞳。

「……まさかな……」

 無理やりその瞳から視線を引き剥がした侯爵は、赤子には目をやらなかったのだろう訝しげに侯爵を伺う伯爵を引き連れて、堂々と隣の部屋への扉を潜った。





 しかし、その侯爵の判断は間違っていなかった。

 だって、一つになった『俺』は、『僕』の記憶としてその時の事を事細かく覚えているのだから。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

死んだ一人の少女と死んだ一人の少年は幸せを知る。

タユタ
SF
これは私が中学生の頃、初めて書いた小説なので日本語もおかしければ内容もよく分からない所が多く至らない点ばかりですが、どうぞ読んでみてください。あなたの考えに少しでもアイデアを足せますように。

処理中です...