287 / 385
18歳編
お疲れですよ
しおりを挟む「はぁ……」
「ヒューバート殿下、大丈夫ですか? 顔色があまりよろしくないようですが」
「いや、大丈夫だよ。ランディ。ちょっと忙しくて……」
「そ、そうですね」
はい、相変わらず忙しいです。
実はもうすぐ俺の誕生日——水無月の8日——なんだけど……その日は俺とレナの結婚式でもある。
デュレオから「レネエルにはジューンブライド、6月、あ、今の時代だと水無月? そうそう水無月の花嫁! っていうのが永遠の幸福になれるっていう験担ぎがあってね」と口を滑らせやがってな。
母上もレナもそれを聞いて「じゃあヒューバートの誕生日がある水無月で」とその気になってしまったのだ。
まあね。西方に行っている間に結婚式の準備を頼むよ、って言ってレナとデュレオを母上とシズフさんに丸投げしたのは俺だけどさ。
こうなるとは思わんだろう。
母上がデュレオと話せたことがよほど嬉しかったのか、かなり盛大なものになっていた。
なお、招待状などもすでに発送済み。
出席者名簿は見せられたけど、おつき合いしていく予定の国々から人を招いて国を挙げた大々的な結婚式になる予定。
そもそも、他国から要人を招くってこと事態数百年ぶりとなる。
まして西方諸国とハニュレオは、国交断絶して数百年ぶり。
再び国同士の国交ができるとあり、その立役者となった俺とレナの結婚式は下手したら世界規模の祝日になりかねない……。
実際ミドレとハニュレオからは、『水無月の8日を、英雄祝福祭の日として祝ってもよいでしょうか?』的な打診が来ているそうだ。
…………ナニソレ…………。
俺が震えながら父上に「え? なにこれ」と聞いたら父上は「他国に借りを作ると思いなさい」と承諾の意を表明する予定と聞いてちょっと泣いた。
いらんいらんいらん、そんなのカッコ悪い。
そう言ったけど、一応俺のそういう否定の意は添えて返答するとのこと。
多分覆らん。
はぁ。
……そんな感じで俺は結婚式の準備の他に他国から人を招くアレそれと、セドルコ帝国への石晶巨兵売り込みのタイミングやら宇宙の情報収集、拿捕した宇宙戦艦のアレそれからその乗組員の捕虜のアレそれまで、まあやることが多い多い。
加えて学院生活も残すところあと一年となり、ランディは今年の師走に卒業。
卒業後はルレーン国へ婿入りのために出国する予定なので、俺は新たな側近の選出と卒業後にジェラルドが治める予定の国境領地の視察、来年の卒業論文の制作などが重なることになった。泣く。
……そんな感じでまぁ、俺はランディとジェラルドの両側近を手放すことになるのだ。側近なのに側にいてもらえないので仕方ない。
最近めっきりおとなしい聖殿も、かなりしつこくマルティアを含めた聖女候補たちを俺の側室にとゴリ押ししていると聞くし。
懲りなさすぎでは?
レオナルドにも抑えられないとは困ったもんだよ、ほんと。
まあ、その方がその手の自分勝手な貴族の洗い出しがスムーズに進むのだけれど。
「あと、レナといよいよ結婚すると思うと、なんかこう……もっとレナと二人の将来のこととか話せばよかったなって、想っちゃうんだよ」
「二人の将来のこと、ですか?」
「そう。俺、忙しさにかまけてレナとあんまり二人で将来どうしたいからとか具体的な話はしてこなかったんだよね。今思うと『将来は王と聖女で王妃なレナと二人、国を守っていく』っていうふわっとした理想の話しかしてないんだわ。具体的に、俺は王になって政務をこなすから、レナには母上のように社交で情報を集めてほしい……とかさー。でもレナもそんなに社交が得意な方ではないから、政務の一部を手伝ってもらって二人で社交を頑張ろうね、とか。子どもを作るタイミングとか、子育てをどんなふうにしていくべきか、とか」
俺の前世の両親も、今世の両親も仲はいい。
けど、両親がどんなふうに話し合って円満な夫婦生活を送っていたのかわからない。
まあ、今世は家庭が特殊なので今世の両親に相談に乗ってもらえればいいんだろう。
しかしなー、俺とレナは最近本当にお互い忙しい。
すれ違って気持ちが冷めてしまったら?
俺は好きだけど、レナが他の男を好きになってしまうとかあるかもしれんし。
これからたくさん海外の人間が来るようになるし。
うううう。
「…………ランディ、なにをメモしてる?」
「あ、えーと……参考になりそうだと思いまして」
「そっかー」
立ったままメモ帳にやたらと真面目になんか書き残していると思ったら。
そ、そうだなー、うん、ランディの相手も王族だもんな。
……逆に考えるとランディに相談しやすくなるってことか!?
「一度レナ嬢とゆっくりお話しする時間を取られてはいかがですか?」
「学校が終わると分刻みスケジュールになっているんだ、最近」
「ほ、本当にお忙しいのですね」
「本当に忙しいよ。日曜日だけは無理矢理休むように言われているんだけど、レナが忙しいんだよね」
「セドルコ帝国付近の結界強化ですね」
「そう」
セドルコ帝国への牽制のため、レナと聖殿は北の国境に赴き結界強化に努めている。
父上が壁の建設を行い、さらに聖女と聖女候補による結界強化。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる