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間章
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しおりを挟む「ヒューバート、宇宙環境はそれほどに過酷ということだ」
「えぅ」
「まして千年前に終戦してから、地上は結晶化が拡がっていった。それにより地上からの物支給を望めなくなった宇宙が選べるのは、他の惑星を探して根付くか……コロニーの環境を惑星レベルに進歩させるか……。どちらもお前が想像するよりも過酷な道だ」
「……っ」
俺の想像を絶する、ということか。
そのために縋れるものに縋ったまでのこと。
その対価が人間の寿命を奪うものだとしても、宇宙の人類は宇宙に適応するためにそれを選んだのか。
「まあ、でも、ノーティスナノマシンの原材料が俺だとは思ってなかったみたいだね。シズフが結晶病で副作用を克服しているのも向こうは寝耳に水だっただろう。一応セドルコ帝国で情報収集は行っていたみたいだけど、常識的に考えて千年前の歌手と登録者が生きてるとは思わないもん」
「それはそうだよね。あれ、じゃあ宇宙側は、まだデュレオが原材料ってことも、シズフさんが副作用を克服してるってことも知らないの?」
「そう。宇宙のやつらが今回襲ってきたのは登録者が新しくなっているであろうギア・フィーネの奪取だったっぽいよ。それから、それの集まるルオートニスを手に入れて、ゆっくり調べたかったみたい。でも衛星兵器まで持ち出して無効化するつもりだったギア・フィーネは神鎧化しているし登録者は千年前と変わらない……なんなら千年前よりも強くなっているしで『どうなってるの~!?』って感じ?」
「……宇宙は本当に可哀想なんですね」
デュレオの説明に心の底から宇宙の人たちに同情してしまった。
それはそうだよなぁ……千年前の登録者が今も現役で乗ってるとは思わんよなぁ……。
「正直なところ科学技術は進歩していても、短命となった宇宙の人類はカツカツみたいだね。寿命も平均30代みたい」
「そんなに短くなっているんですか!?」
「だから地上のナノマシンが入っていない人類の遺伝子も欲しいみたい。それはセドルコ帝国で婚姻関係を結んで、実験開始してるっぽいよ」
クスクスと邪悪な笑みを浮かべるデュレオ。
あんなこと言ってますけど、とディアスを見ると、お手上げポーズ。
「セドルコ帝国はかなり宇宙と強めに繋がっているってことですか」
「まあ、優秀な人材が多いのは間違いない。それになかなか面白いデータも吸い出せた。見な」
とファントムがデュレオに負けない不敵な笑みでモニターを表示する。
そこにはギア・イニーツィオに似た五機の機体。
あーーー……。
「ギア・フィーネを模した機体の宇宙版……ですか?」
「ああ。ギア・マレディツィオーネというらしい。機体タイプも完全にパクってんな」
ズラリと並んだ機体は、確かにカラー以外ギア・フィーネの一号機から五号機に特化したタイプも同じらしい。
全部強そう、だけど……。
「機体性能はどうですか?」
「ぶっちゃけ俺が作ったギア・イニーツィオと大差はないだろうな。そもそもギア・フィーネがギア・フィーネと呼ばれる所以はエンジンだ」
GFエンジンとかいうやつですね。
中身がマジで謎という、エネルギー生産量と排出量がイカれた物体。
そういえばこれもマジでなに?
……あれ? エネルギー生産量……?
「…………ディアス」
「気づいたか?」
「えーと……もしかして、宇宙の問題も地上の問題も、俺とジェラルドがギア5に到達して、ディアスも一号機と、俺とジェラルドが三号機と四号機を神鎧化させたらなんとかなる……?」
「おそらく。そしてそれが王苑寺ギアンの“計画”だろう。やはり王苑寺ギアンは人類にギア・フィーネという力を捨てさせるために——そしてギア・フィーネと登録者を利用して世界を救うためにギア・フィーネを造っていた」
しかし俺の思っている通りなら、ギア・フィーネの登録者もギア・フィーネも消滅するってことではないか。
はぁー、なるほどねー。
世界のために死ね、と。
「…………」
俺のギアはあと一つ。
ディアスはすでに神格化しているから、死ぬことはない。
多分次になにか大きな戦いがあって、“歌い手”の助力があればディアスはギア5に到達する。
ジェラルドには無理をさせたくないけど、俺より才能があるからギア5に到達するのは俺よりも速いだろう。
『早く五柱を揃えろ』ってそいう意味……。
「“連結”だね~」
「そう」
「どういうことですか?」
この場でおおよその事情を察知した者と、そうでない者の表情には明確に差がある。
ランディとレナ、リーンズ先輩はわかっていない。
意外にもシズフさんとラウトも察していて、溜息が出た。
「宇宙と地上のエネルギー生産の概念を取り戻すには、この惑星の“創世神”という神様が必要なんだ。でもその神様は千年前の戦争で死んでしまった」
神という概念を失った時代の話だ。
そのまま千年、神はいないものとして信仰は“聖女”に移っていった。
しかしそれもまた、ラウトが神格化して齎した『結晶病』の権能により世界に根づいていったものだ。
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