281 / 385
間章
情報共有(3)
しおりを挟む「ヒューバート、宇宙環境はそれほどに過酷ということだ」
「えぅ」
「まして千年前に終戦してから、地上は結晶化が拡がっていった。それにより地上からの物支給を望めなくなった宇宙が選べるのは、他の惑星を探して根付くか……コロニーの環境を惑星レベルに進歩させるか……。どちらもお前が想像するよりも過酷な道だ」
「……っ」
俺の想像を絶する、ということか。
そのために縋れるものに縋ったまでのこと。
その対価が人間の寿命を奪うものだとしても、宇宙の人類は宇宙に適応するためにそれを選んだのか。
「まあ、でも、ノーティスナノマシンの原材料が俺だとは思ってなかったみたいだね。シズフが結晶病で副作用を克服しているのも向こうは寝耳に水だっただろう。一応セドルコ帝国で情報収集は行っていたみたいだけど、常識的に考えて千年前の歌手と登録者が生きてるとは思わないもん」
「それはそうだよね。あれ、じゃあ宇宙側は、まだデュレオが原材料ってことも、シズフさんが副作用を克服してるってことも知らないの?」
「そう。宇宙のやつらが今回襲ってきたのは登録者が新しくなっているであろうギア・フィーネの奪取だったっぽいよ。それから、それの集まるルオートニスを手に入れて、ゆっくり調べたかったみたい。でも衛星兵器まで持ち出して無効化するつもりだったギア・フィーネは神鎧化しているし登録者は千年前と変わらない……なんなら千年前よりも強くなっているしで『どうなってるの~!?』って感じ?」
「……宇宙は本当に可哀想なんですね」
デュレオの説明に心の底から宇宙の人たちに同情してしまった。
それはそうだよなぁ……千年前の登録者が今も現役で乗ってるとは思わんよなぁ……。
「正直なところ科学技術は進歩していても、短命となった宇宙の人類はカツカツみたいだね。寿命も平均30代みたい」
「そんなに短くなっているんですか!?」
「だから地上のナノマシンが入っていない人類の遺伝子も欲しいみたい。それはセドルコ帝国で婚姻関係を結んで、実験開始してるっぽいよ」
クスクスと邪悪な笑みを浮かべるデュレオ。
あんなこと言ってますけど、とディアスを見ると、お手上げポーズ。
「セドルコ帝国はかなり宇宙と強めに繋がっているってことですか」
「まあ、優秀な人材が多いのは間違いない。それになかなか面白いデータも吸い出せた。見な」
とファントムがデュレオに負けない不敵な笑みでモニターを表示する。
そこにはギア・イニーツィオに似た五機の機体。
あーーー……。
「ギア・フィーネを模した機体の宇宙版……ですか?」
「ああ。ギア・マレディツィオーネというらしい。機体タイプも完全にパクってんな」
ズラリと並んだ機体は、確かにカラー以外ギア・フィーネの一号機から五号機に特化したタイプも同じらしい。
全部強そう、だけど……。
「機体性能はどうですか?」
「ぶっちゃけ俺が作ったギア・イニーツィオと大差はないだろうな。そもそもギア・フィーネがギア・フィーネと呼ばれる所以はエンジンだ」
GFエンジンとかいうやつですね。
中身がマジで謎という、エネルギー生産量と排出量がイカれた物体。
そういえばこれもマジでなに?
……あれ? エネルギー生産量……?
「…………ディアス」
「気づいたか?」
「えーと……もしかして、宇宙の問題も地上の問題も、俺とジェラルドがギア5に到達して、ディアスも一号機と、俺とジェラルドが三号機と四号機を神鎧化させたらなんとかなる……?」
「おそらく。そしてそれが王苑寺ギアンの“計画”だろう。やはり王苑寺ギアンは人類にギア・フィーネという力を捨てさせるために——そしてギア・フィーネと登録者を利用して世界を救うためにギア・フィーネを造っていた」
しかし俺の思っている通りなら、ギア・フィーネの登録者もギア・フィーネも消滅するってことではないか。
はぁー、なるほどねー。
世界のために死ね、と。
「…………」
俺のギアはあと一つ。
ディアスはすでに神格化しているから、死ぬことはない。
多分次になにか大きな戦いがあって、“歌い手”の助力があればディアスはギア5に到達する。
ジェラルドには無理をさせたくないけど、俺より才能があるからギア5に到達するのは俺よりも速いだろう。
『早く五柱を揃えろ』ってそいう意味……。
「“連結”だね~」
「そう」
「どういうことですか?」
この場でおおよその事情を察知した者と、そうでない者の表情には明確に差がある。
ランディとレナ、リーンズ先輩はわかっていない。
意外にもシズフさんとラウトも察していて、溜息が出た。
「宇宙と地上のエネルギー生産の概念を取り戻すには、この惑星の“創世神”という神様が必要なんだ。でもその神様は千年前の戦争で死んでしまった」
神という概念を失った時代の話だ。
そのまま千年、神はいないものとして信仰は“聖女”に移っていった。
しかしそれもまた、ラウトが神格化して齎した『結晶病』の権能により世界に根づいていったものだ。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。
転生無双の金属支配者《メタルマスター》
芍薬甘草湯
ファンタジー
異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。
成長したアウルムは冒険の旅へ。
そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。
(ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)
お時間ありましたら読んでやってください。
感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。
同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269
も良かったら読んでみてくださいませ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる