265 / 385
二人の聖女と悪魔の亡霊編
ファントムの目的
しおりを挟む「すごい理屈を自信満々に言い放つね、あの人」
「本当に、本当に申し訳ございません……!」
「泣いて謝られても……」
「いえ、本当に申し訳ありません。父王陛下が病に伏せた頃より、戦争を始めたりルレーン国の姫君へ勝手に求婚したり、様子がおかしい子ではあったのですがまさかここまでとは……!」
「世襲制本当にしんどいよね」
大臣さんと公爵さんに平謝りされたんだが、俺よりシャルロットとソーフトレスの皆さんに謝罪した方がいいと思う。
この様子だと戦争は両国王が双方ポンコツであったから起こり、長引いたのは間違いない。
両国の代理代表たちの、なんと腰の低いことよ。
アスメジスア基国の選挙王国制が引き継がれていたら、多分こんなことにはなっていないだろうね。
まあ、アスメジスア基国のあの制度かなり厳しいみたいだから続けるのも厳しかったのかもしれないけど。
厄介なのはコルテレの王オズワードが、奪取したギア・イニーツィオ三号機に乗ったまま降りてこない点だ。
シャルロット様の一号機と、ミレルダ嬢の二号機に乗っていた部下たちも同様。
武器を構え、いつでも両国の交渉人たちを攻撃できる体勢。
まあ、それはラウトも同じなんだけど。
で、現在の状況としてはコルテレ王オズワードが自国の大臣たちと公爵さんへ和平条約の撤回と、ソーフトレスへの全面降伏を要求するように命令して困らせている。
彼の中でシャルロット様の優先度はどのあたりなのか、今のところソーフトレスとの戦争勝利が最優先っぽい。
「やれやれ、やっと出てきたと思ったらとんだ小物が釣れたものだな」
「ファントム! どこ行ってたの!」
後ろの方に待機して眺めていた俺の横に、ようやくファントムが姿を現した。
亡霊なだけあり神出鬼没だなぁ。
ミレルダ嬢の文句やお説教にも耳を貸さないまま、俺たちの横を通り過ぎていった。
「オズワード陛下、お聞きください! ルオートニス王国第一王子ヒューバート殿下より、新技術石晶巨兵が齎されたのです! 石晶巨兵は聖女の歌声を増強し、結晶化した大地の治癒が可能となる代物! ヒューバート殿下はその技術を、停戦と和平、不可侵条約の締結を条件に両国へ提供してくださるとおっしゃってくださったのです!」
「その技術があれば、我らは新たな土地など不要となります! 失った土地を取り戻せるのです! これ以上の戦いは無用なのですよ!」
大臣さんたちだけでなく、オルヴォッド卿たちも必死に機体に篭城しているオズワード王へ呼びかける。
あんなでかいものへ近づくのだっておっかないだろうに、責任感の強い人たちだ。
いや、国の今後を思えばやるしかない。
ここで命をかけてアホを諌めなければ、国の信用がなくなる。
この場にはソーフトレスと聖域ルレーン国だけでなく外の国であるルオートニスの俺もいるしね。
国の今後のことを命懸けで思う、素晴らしい人たちだ。
『黙れ! それならばその技術ごと奪えばよいではないか!』
「な! なんということを!」
「ルオートニス王国には千年前の遺物を駆る神々もおられるのです! 神々の怒りに触れれば、逆に神罰が下りますぞ! 陛下!」
『神罰だと!? これまで我らを助けることのなかった神に、なぜ今生きる我々が罰されねばならない! そのような神に頭を垂れる必要はなかろう!』
そう言いたい気持ちはわかります。
千年間、神は人を救うことはなかった。
でも俺はその理由を知ってしまったからな。
……確かに、神々は人を救わなかった。
でも、守ってはくれていたんだ、ずっと。
この世界が本当に終わってしまわぬように、結晶病という権能を発現し世界を覆い、惑星とディアス、シズフさんを延命させたラウト。
人々の文明が失われぬよう魔法を授ける魔王となったディアス。
ハニュレオと、そしてデュレオを孤独から救ったシズフさん。
自分の生命を世界のために、千年もの間使い続けたデュレオの弟のクレア。
彼らが救ってない?
本気で言ってるんだろうな、そのことを知らないんだから。
でも、彼らの……それを踏み躙るような言い方は——腹が立つ。
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ」
『なに!?』
そこへファントムが入っていく。
これ以上場が混沌とするのは好ましくないだろうが、ようやくファントムの目的がはっきりわかるかもしれない。
それに応じてこちらも対応を変える。
ファントム、いったいなぜこんな面倒な罠を?
「そんなことよりテメェ、シャルロットに求婚した件はどうなっている? 本気でシャルロットと結婚するっていうのなら——まずは俺を倒してもらおうか!」
・・・・・・・・・・・・。
「ん?」
聞き間違いか?
俺、今聴力が弱くなっているからな?
「そうだよ! さっきから戦争のことばっかりで、シャルロットのことを本気で好きならどうしてルレーン国までコルテレと併合するべきとか言うの!? 意味わからないんだけど!」
真後ろでミレルダ嬢がそう叫んでいるので、もしかして俺の聞き間違いではなかったのだろうか?
いかん、ラウトがチベットスナキツネみたいな表情になっているような気がする。
気のせいであれ。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
未来世界に戦争する為に召喚されました
あさぼらけex
SF
西暦9980年、人類は地球を飛び出し宇宙に勢力圏を広めていた。
人類は三つの陣営に別れて、何かにつけて争っていた。
死人が出ない戦争が可能となったためである。
しかし、そのシステムを使う事が出来るのは、魂の波長が合った者だけだった。
その者はこの時代には存在しなかったため、過去の時代から召喚する事になった。
…なんでこんなシステム作ったんだろ?
な疑問はさておいて、この時代に召喚されて、こなす任務の数々。
そして騒動に巻き込まれていく。
何故主人公はこの時代に召喚されたのか?
その謎は最後に明らかになるかも?
第一章 宇宙召喚編
未来世界に魂を召喚された主人公が、宇宙空間を戦闘機で飛び回るお話です。
掲げられた目標に対して、提示される課題をクリアして、
最終的には答え合わせのように目標をクリアします。
ストレスの無い予定調和は、暇潰しに最適デス!
(´・ω・)
第二章 惑星ファンタジー迷走編 40話から
とある惑星での任務。
行方不明の仲間を探して、ファンタジーなジャンルに迷走してまいます。
千年の時を超えたミステリーに、全俺が涙する!
(´・ω・)
第三章 異次元からの侵略者 80話から
また舞台を宇宙に戻して、未知なる侵略者と戦うお話し。
そのつもりが、停戦状態の戦線の調査だけで、終わりました。
前章のファンタジー路線を、若干引きずりました。
(´・ω・)
第四章 地球へ 167話くらいから
さて、この時代の地球は、どうなっているのでしょう?
この物語の中心になる基地は、月と同じ大きさの宇宙ステーションです。
その先10億光年は何もない、そんな場所に位置してます。
つまり、銀河団を遠く離れてます。
なぜ、その様な場所に基地を構えたのか?
地球には何があるのか?
ついにその謎が解き明かされる!
はるかな時空を超えた感動を、見逃すな!
(´・ω・)
主人公が作者の思い通りに動いてくれないので、三章の途中から、好き勝手させてみました。
作者本人も、書いてみなければ分からない、そんな作品に仕上がりました。
ヽ(´▽`)/
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
祈りの力でレベルカンストした件!〜無能判定されたアーチャーは無双する〜
KeyBow
ファンタジー
主人公は高校の3年生。深蛇 武瑠(ふかだ たける)。以降タケル 男子21人、女子19人の進学校ではない普通科。大半は短大か地方の私立大学に進む。部活はアーチェリー部でキャプテン。平凡などこにでもいて、十把一絡げにされるような外観的に目立たない存在。それでも部活ではキャプテンをしていて、この土日に開催された県総体では見事に個人優勝した。また、2年生の後輩の坂倉 悠里菜も優勝している。
タケルに彼女はいない。想い人はいるが、彼氏がいると思い、その想いを伝えられない。(兄とのショッピングで仲良くしているのを彼氏と勘違い)
そんな中でも、変化があった。教育実習生の女性がスタイル抜群で美人。愛嬌も良く、男子が浮き足立つのとは裏腹に女子からの人気も高かった。タケルも歳上じゃなかったら恋をしたかもと思う。6限目が終わり、ホームルームが少しなが引いた。終わると担任のおっさん(40歳らしい)が顧問をしている部の生徒から質問を受け、教育実習生のミヤちゃん(竹下実弥子)は女子と雑談。タケルは荷物をまとめ、部活にと思っていた、後輩の二年生の坂倉 悠里菜(ゆっちゃん、リナ)が言伝で来た。担任が会議で遅れるからストレッチと走り込みをと言っていたと。この子はタケルに気があるが、タケルは気が付いていない。ゆっちゃんのクラスの担任がアーチェリー部の担任だ。ゆっちゃんと弓を持って(普段は学校においているが大会明けで家に持って帰っていた)。弓を背中に回して教室を出ようとしたら…扉がスライドしない。反対側は開いていたのでそっちに行くが見えない何かに阻まれて進めない。反発から尻餅をつく。ゆっちゃんは波紋のようなのが見え唖然とし、タケルの手を取る。その音からみっちゃんも扉を見て驚く。すると急に光に包まれ、気絶した。目を覚ますと多くの人がいる広間にいた。皆すぐに目覚めたが、丁度三人帰ったので40人がそこにいた。誰かが何だここと叫び、ゆっちゃんは震えながらタケルにしがみつく。王女と国王が出てきてありきたりな異世界召喚をしたむね話し出す。強大な魔物に立ち向かうべく勇者の(いせかいから40人しか呼べない)力をと。口々に避難が飛ぶが帰ることは出来ないと。能力測定をする。タケルは平凡な数値。もちろんチート級のもおり、一喜一憂。ゆっちゃんは弓の上級スキル持ちで、ステータスも上位。タケルは屑スキル持ちとされクラスのものからバカにされる。ウイッシュ!一日一回限定で運が良ければ願いを聞き入られる。意味不明だった。ステータス測定後、能力別に(伝えられず)面談をするからと扉の先に案内されたが、タケルが好きな女子(天川)シズクと他男子二人だけ別の扉を入ると、閉められ扉が消え失せた。四人がいないので担任が質問すると、能力が低いので召喚を取り消したと。しかし、帰る事が出来ないと言っただろ?となるが、ため息混じりに40人しか召喚出
俺はファンタジー世界を自重しない科学力で生きてゆく……万の軍勢?竜?神獣?そんなもん人型機動兵器で殲滅だ~『星を統べるエクスティターン』
ハイフィールド
ファンタジー
「人型機動兵器パイロットの俺がファンタジー世界に投げ出されたけど何とかなりそうだ」
対戦型ロボットアクションゲームの世界が実は現実世界だった → ファンタジーな惑星に不時着 → 仲間に裏切られてロボットも無しに一人っきり!? 果たして俺は生き残れるのか!? という、出だしで始まるファンタジーロボットアクション。序盤はロボット物SFでスタートして、途中(31話)からファンタジーになり、ロボットアクション×冒険×国作り×戦争と欲張りなお話になる予定です。相変わらずテンプレ物ですが、テンプレ素材をヒロが調理するとこんな料理になります……を、お楽しみ下さい。
1話あたり3500~6000文字程になると思いますのでサラッと読めるかと思います。
第3回ファンタジーカップにエントリーだけはしています。なんとか200位以内に入りたいので是非とも応援よろしくお願いします(5/10現在ギリギリの位置にいます)
タイトルの「ファンタジー世界を自重しない~」を早く読みたい方は1章ラスト(30話目)に大雑把なキャラ紹介とあらすじを入れておきますので、そこから読んでお試ししてみて下さい。
途中に軍事や科学の話も出てきますが、特別そっち方面に詳しい訳ではありません。
さらっと浅くネットで調べているだけなので「何となく言いたい事は分かる」位の解釈でお願いします。
遙か遠い未来の物語なので科学なんて完全に妄想科学です。遙かに進んだ科学は魔法と見分けが付かない云々ってやつです。
三点リーダーを多用する作風です。苦手な方は申し訳ございません。
ほとんど無い予定ですが、タイトル末尾の★はR15要素あり。後書きにあらすじを乗せるので苦手な人は飛ばして下さい。
6/28 2、3章に短いプロローグを追加しました。
現在4章ストック中 進捗率3%
※ご忠告を頂いてタイトル変更しました……説明系のタイトルにするなら中途半端なのは駄目らしいです。
アルファポリスはタイトル70文字以内なので入りませんでしたが、フルタイトルでは
”俺はファンタジー世界を自重しない科学力(ちから)で生きてゆく……万の軍勢? 竜? 神獣? そんなもん人型機動兵器で殲滅だ~『星を統べるエクスティターン - rule the Stars EXT -』”
となります。
スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした
大豆茶
ファンタジー
大学受験を乗り越えた高校三年生の青年『相模 型太(さがみ けいた)』。
無事進路が決まったので受験勉強のため封印していた幼少からの趣味、プラモデル作りを再開した。
しかし長い間押さえていた衝動が爆発し、型太は三日三晩、不眠不休で作業に没頭してしまう。
三日経っていることに気付いた時には既に遅く、型太は椅子から立ち上がると同時に気を失ってしまう。
型太が目を覚さますと、そこは見知らぬ土地だった。
アニメやマンガ関連の造形が深い型太は、自分は異世界転生したのだと悟る。
もうプラモデルを作ることができなくなるという喪失感はあるものの、それよりもこの異世界でどんな冒険が待ちわびているのだろうと、型太は胸を躍らせる。
しかし自分のステータスを確認すると、どの能力値も最低ランクで、スキルはたったのひとつだけ。
それも、『モデラー』という謎のスキルだった。
竜が空を飛んでいるような剣と魔法の世界で、どう考えても生き延びることが出来なさそうな能力に型太は絶望する。
しかし、意外なところで型太の持つ謎スキルと、プラモデルの製作技術が役に立つとは、この時はまだ知るよしもなかった。
これは、異世界で趣味を満喫しながら無双してしまう男の物語である。
※主人公がプラモデル作り始めるのは10話あたりからです。全体的にゆったりと話が進行しますのでご了承ください。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる