終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
250 / 385
二人の聖女と悪魔の亡霊編

俺天災に愛されすぎでは?(1)

しおりを挟む
 
「ぶん殴ってでも連れて帰ってもらう。ソーフトレスのソルドレッド王も同様だ。そのためにお前たちを連れてきた。両国王が無能であるのならば、代理の王をすぐに用意してもらう。それができないのならば、石晶巨兵クォーツドールは聖域ルレーン国のみに置く。今回の件で、ルレーン国も貴国らへの対応は変わるだろう。いいか? 正念場だぞ、卿ら」

 俺が間違えたら、ディアスとラウトとジェラルドとランディ、そしてレナがきっと叱ってくれる。
 ナルミさんがどうして間違えたのかを教えてくれるはずだし、デュレオは指差して嘲笑うだろう。
 シズフさんはめちゃくちゃ興味なさそうだろうなぁ。
 俺は幸せだ。とても恵まれている。
 誰に裏切られても「仕方ない」と思える。
 俺は凡人だから、みんなが導いてくれたらきっと大丈夫。

「ハニュレオの時よりしんどいな、今回」
「戦時中の国へ来ているんだから当たり前だろう? 正直思っていたよりだいぶ生ぬるいぐらいだけど」

 俺はとてもしんどいのだが、ナルミさんたちに言わせると「ぬるい」らしい。
 千年前、ほんとどんだけキツかったんだよぉ。怖いよぉ。

「千年前ならもうとっくにルレーン国は血の海だな」
「占拠されて、上位の貴族以外は貴賤問わず処刑されているだろう」
「女子どもは見せしめとしてまともな死に方をさせてもらえず、死体は無惨なものばかりになるよねぇ」
「も、もうやめて?」

 シャルロット様とミレルダ嬢が震え始めているから。
 半泣きになってきているから。
 不安を煽るのやめてあげて。

『おい』
「ウワー! ……ファントム!」
『ルレーン国上空に着いたぞ。けど、それよりちょっとこれを見ろ。なんだ? これ』
「え?」

 壁がいきなりモニターになる。
 そしてそこに映し出されたのは、ついこの間も目にしたものだ。
 いや、この頻度で見ることになるのおかしくない?
 真っ白な霧を纏って進んでくる——巨大なな、あまりにも巨大な青い龍。

「っ! 結晶化津波……! な、なんで!」
『結晶化津波……? なんだそれ?』

 しかも青い龍——青龍だ!
 ハニュレオの時に現れた陸帝竜ベヒモスよりは細いが、長さは陸帝竜ベヒモス二体分。
 つまり、クソ長い。町が二つ並んできた感じである。
 いや、ふざけんなよ?
 しかもお供はすべて竜種だ。
 つまり全体的に硬い強いデカブツしかいない。

「結晶化津波!? ねぇ、嘘でしょ!? ルレーン国に向かっているよ!?」
「そ、そんな! このタイミングで……そんな!」
「しかも竜種ばかりだから速度が速い! すぐに迎撃を始めないと、ルレーン国の結界を破られるぞ!」

 結晶化津波って天災だろ?
 こんな頻度で起こるものか?
 ラウトの言う通り今回は速度も問題だ。
 一秒でも早く対応しなければ間に合わない。

「っ! ラウト、ディアス! 先行してほしい! おっさん、俺の護衛は解除! ジェラルドと一緒にシャルロット様とミレルダ嬢を連れて結界の強化と、撃ち漏らしの討伐を頼む! トニスのおっさんは近隣の村の避難誘導をお願い!」
「よろしいんで?」
「問題ない!」

 [隠遁]魔法で姿を隠していたトニスのおっさんが姿を現す。
 辺境伯たちは驚いていたが、よく怒られるので俺だってこのくらいはしますよ。

「ファントム、エアーフリートは戦える!?」
『現状航行に問題はないが、戦闘ともなるとエネルギー不足だな。ギア・フィーネを一機積んだままなら主砲を使えるが……俺一人で艦の制御と攻撃を全部やるのは、ハッキングが使えない今さすがに無理だぞ』
「ならナルミさん、手伝ってくれ! ギア・フィーネは四号機を残す。俺は一番——弱いから!」

 本当は涙が出そうなほど悔しいけれど、思い知ったばかりなんだ。
 俺は本当に、マジで、役に立たないぐらいに弱い。
 戦場に立っても足手纏いになる。

「ヒューバート様……」
「デリセット卿とオルヴォッド卿、そしてその部下の面々も気焔キエンをミレルダ嬢に貸し出すから、一緒にルレーン国に降りて自国の王を探し出せ! このような事態にまだ保身を優先させるようなら、その時点でその国の王と交渉はしない! 肝に銘じろ!」
「「「っは!」」」
「ぎょ、御意に!」

 ラウトは神鎧と同化、ディアスは魔法で瞬間移動。
 先にラウトが晶魔獣たちの群れの真上に転移し、開戦の狼煙をあげる。
 さすがにチャージしていないと、あの巨体を撃ち抜くのは難しいようだ。
 ジェラルドとミレルダ嬢は頷き合ってシャルロット様と両国の辺境伯たちを連れ、ドックの方へ急ぐ。
 ナルミさんも「仕方ないねぇ」と言いつつ艦橋へ向かってくれた。
 残るは俺だ。

「ファントム、俺は四号機に乗っていた方がいいのか?」
『もちろん。ギアを上げて、維持し続けろ。ギアは高ければ高いほどいい。雑魚のテメェにできるかな?』
「……やるよ」

 つまり、俺の苦手な“自力のギア上げ”。
 その上それの維持をやれってことか。
 笑えるくらいキツい。
 でも、やる。やるさ。

『ところで歩きながらでいいから結晶化津波のこといい加減説明しろや』
「ほ、本当に知らないの?」
『知らねー』

 それはちょっと意外だけど、丁寧にご説明いたしました。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

未来から来た美女の俺

廣瀬純一
SF
未来から来た美女が未来の自分だった男の話

処理中です...