終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
242 / 385
二人の聖女と悪魔の亡霊編

VSファントム(1)

しおりを挟む
 
「……俺だって……」

 羨ましいって思うよ。
 ディアスも、ラウトも、シズフさんも、みんな強いんだもん。
 もちろん三人のあの強さが、悲しいことや理不尽なものが山のように築き上がった上を歩いてきた結果なんだろうというのは、わかってる。
 結晶化津波をたった三機で抑え込んだようなものなんだ。
 それを間近で見て、同じギア・フィーネシリーズの登録者なのに情けないと思ったよ。
 俺ができて、アベルト・ザグレブにできなかったことってなんだよ?
 わからんよ、そんなの。
 でも俺は死にたくない。
 あれに当たれば死ぬ。

「負けるわけには、いかない!」

 ギア2。
 モニターの端に上がったギアが表示された。
 途端に目の前がぐらつく。
 でも、今の……イノセント・ゼロなら——!

『ダメだ、ヒューバート! 今の君では!』
『なんでお前みたいな雑魚が、アイツの見たかった世界にいる!? 納得いかねぇんだよ!』

 四号機の登録者が、見たかった世界……?

「…………」

 ギア・フィーネ同士が手を取り合って、争いのない平和な世界を守る。
 顔を上げた。
 なんだ、今の、頭の中に浮かんだイメージは。
 あれがそうなのか?
 あれが……。

「お、俺だって、た……戦う覚悟なら……もう、とっくに……できてる!」
『!』

 石晶巨兵クォーツドールが戦争に利用されるのなら、俺はイノセント・ゼロの力を用いて潰す。
 それで守ると、あの日、レナの歌で石晶巨兵クォーツドール結晶化した大地クリステルエリアを浄化した時に決めたんだ。
 それを示せと言うのなら、やってやろうじゃないか!

『その気になるのが遅ぇと言っている! 舐めんなよ雑魚!』
「っ——!」

 今ギア2に上がった。
 だからより感覚が鋭くなったのを感じる。
 けど、たとえギアが上がっても、格が違いすぎた。
 そもそも実力の桁が違う。
 放たれた[ライオットサンダーアロー]を避け、ファントムへと突っ込んだら、ワイヤーを左手首部分にかけられて思い切り地面へ向かってぶん投げられた。
 マジかよ!
 しかもそのワイヤー、しっかり切断機能ついてる!
 イノセント・ゼロの左手が切り落とされた!

「うがあっ!」

 そして背中が地面に思い切り叩きつけられる。
 衝撃が操縦席にも届く。
 痛みに呻いている間に、操縦席を二本の刃が貫いた。
 両腕の刃で操縦席を貫こうとしてきたのか!
 ギリギリ、刃先だけが操縦席のモニターを破壊して引き抜かれていく。
 ……ギアが1のまま、操縦席の装甲が、もっと弱かったら——。

「…………っ」

 わかってたはずなのに、ギア2に上がっても手も足も出ない。
 これが千年前の世界で、他のギア・フィーネシリーズに一度も中破すら許さなかった『最強』!
 この人が三号機に乗れば、ディアスやラウトやシズフさんすら「無理」と言う。
 そんな相手に、俺は……!
 でも!

『ザード・コアブロシア!』
『チッ!』
「!」

 ビームがイノセント・ゼロの上を通過する。
 ギリギリでこちらに破損のない距離。
 ファントムだけを狙い撃った?
 それに今の声は、ディアス!?

『どういうつもりだ! お前がヒューバートを害するのなら、俺も黙ってはいない!』
『過保護がもう一人。……さすがに一号機を相手にするのは分が悪いな』

 地面に倒れたイノセント・ゼロを跨ぎ、オールドミラーを周囲に浮遊させたまま怒りを叫ぶディアス。
 俺を、守ろうとしてくれている。
 あ、やば……。

「ちが、ディアス、俺が……自力のギア上げができないから……ぶっ」
『ヒューバート!』

 頭が痛い。
 意識が、ブツブツと……これは……同調障害の症状。
 ああ、ま、また……。



 ***



「またぶっ倒れたのかぁ……」

 目が覚めたら夜!
 テントの中!
 息もしづらいし、鼻血だしたな、これ。

「自力のギア上げなどでここまで無理をする必要はなかろうて」
「うわ、面倒くせ。ちょっとどついただけで過保護すぎ」
「お前もなぜ止めない、ラウト」
「自力のギア上げ不足ならした方がいいと思った」
「脳筋だからねぇ、ラウトも」

 つけ加えるナルミさん。
 確かに。ラウトもシズフさんも脳筋だよね。

「ギア・フィーネに登録者の体調に影響を与える機能があったなんて……」
「心配していただきありがとうございます……でも大丈夫ですよ、シャルロット様。よい経験になりました……」
「ど、どうぞお休みになってください、ヒューバート様」

 両の鼻にティッシュ詰めてるところを、これほどの美少女に見下ろされる俺の気持ちよ……。
 震える~~~~。
 ディアスも激おこだしね。
 いや、ディアスは俺をフルボッコにしたファントムに対して怒ってるんだけど。
 ……優しい。

「でもまあ、通常時の同調率が16%に上がったし、効果はあったんじゃね?」

 地味すぎる上昇率……。
 なんか命懸けでやってその効果は泣けるんですが……?

「ご先祖様、ヒューバートがギアを上げた時の同調率はどのくらいなんですか?」
「ギア1の基準はおそらく50%」
「え」

 ジェラルドがこそ、と聞いた答えに、俺の方が声を出してしまった。
 ギア1が? 同調率50%……? マ?

「ギア2が65%、ギア3が80%、ギア4が90%。ギア5が100%だと思う。多分な。検証していないが、そこの雑魚がギアを1と2に上げた時の数値は予想通りだった」
「……つ、通常時の同調率と、差がありすぎるんですが……」
「だから今ぶっ倒れてんだろ。なに言ってんだ雑魚」

 …………納得☆
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...