終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
234 / 385
二人の聖女と悪魔の亡霊編

ファントム(1)

しおりを挟む
 
「ヒューバート王子は、世界を救おうと活動してらっしゃる。わたくしたちは——いえ、ルレーン国はヒューバート王子をギア・フィーネ四号機イノセント・ゼロの登録者と認めても、大丈夫だと思っております」
「い、いいのですか?」
「クス……だってキミ、ずっと目をキラキラさせながら石晶巨兵クォーツドールっていう魔導具の説明してるんだもん。警戒してたボクたちが、なんだか馬鹿みたいに思えてきたよ。ね」
「ええ」
「え……」

 ミレルダ嬢がそう言うと、二人の聖女は声を出して笑い出す。
 お、おおぉう?

「ヒューバート王子は信頼に足るお方だと思います。それに、この石晶巨兵クォーツドール……もきっと興味津々だと思いますわ」
「あの方?」
「はい。ご紹介しますわね」

 と、シャルロット王女が後方の木の上へ手を上げる。
 すると、その木の上からガサと人影が落ちてきた。
 え、俺の[索敵]にまったく反応がない!
 トニスのおっさんがよく使う、[隠遁]魔法か!

「だから言ったでしょう? ヒューバート王子は大丈夫ですよ」
「ごめんなさい、トニス様。わたくしも不要だと言ったのですが……」
「ダメだよ。ソーフトレスとコルテレは戦争中なんだ。そんな中で異国から人が来るなんて怪しすぎる。……気を悪くしたらごめんなさい。でも、ボクたちはシャルロットを守らなければいけなかったんだ」
「あ、ああ、そういうことか。いや、当たり前だと思うよ」

 暗がりから歩み寄ってくるのは、二人と同じように足下までマントで覆われた男。
 確かに女の二人旅は危険すぎるもんな。
 むしろ護衛の男がいるのは当たり前だろう。
 おっさんも知ってて黙ってたみたいだし、つまり俺は合格っこと?
 ハァーーー、生きた心地はしないけど、仕方ない。

「……」
「? ディアス?」

 だが、安堵の溜息を吐いた俺と違ってディアスとナルミさんの空気はさっきより冷ややか。
 なんならディアスは俺と聖女たちの間に割って入り、剣の柄に手をかけた。
 表情も、見たことがないほど険しいんだが?
 ナルミさんもいつもの妖しい笑みがない。
 え、なに?
 ディアスが剣を構えたのは——ラウト以来だな?

「ほう……やはり貴様らにはわかるか」
「その声……しかしどういうことだ? 貴様は死んだはずだが?」
「というか、その器……可動式人型量子演算処理ヒューマノイドじゃないか。どういうこと? これを完成させたのは、ワタシだけのはずですけど? いや、そんなことはに言っても無駄でしょうけど……まさかお前みたいなやつが、一国の守護神に収まってたとは言いませんよね?」
「え? え? ディアス? ナルミさん?」
「……ファントム? あの、こちらの方々とお知り合いなのですか?」

 俺たちだけでなく、シャルロット王女とミレルダ嬢も困惑。
 この三人、顔見知り?
 っていうか、ディアスとナルミさんが知り合いって、千年前の——関係者ってことでは!?

「ああ、お前らは“守護神”っていう形で現世に留まっているんだったか? まあ、今更神のふりをしてもな。俺はただの亡霊だ、気にするな。俺のことはファントムとでも呼べばいい」
「っ」

 フードをあっさりと取る男。
 でも、その顔の上半分は、青い光の線が走るSFモノに出てくるようなゴーグルに覆われている。
 藍染色の髪とナルミさんみたいな妖しい笑みと、耳が死にそうな声……この声、俺も聞き覚えがあるぞ。
 一度聞いたら忘れられない——この声は!

「さ、三号機の、登録者の声……?」
「…………。……へぇ……?」

 俺の呟きに、男は一瞬笑みを消した。
 しかし、すぐににったりと笑う。
 ゾワッと背筋が薄寒いモノに襲われる。
 え、なんだ、これ。
 こんな感覚初めてだ。
 デュレオが[精神誘導]を使っていた時とは違う……なんだ!?

「なかなか勘のいい坊主だ。いいぜ、お前らにはきちんと自己紹介しておいてやろう。可動式人型量子演算処理戦闘型ヒューマノイドの器に、三号機登録者『ザード・コアブロシア』の人格データをダウンロードして稼働している。活動理由はギア・フィーネ三号機の新たな登録者を探すこと。故に俺のことは“ファントム”と呼べ」

 ゴーグルは外さないまま、胸に手を当てた男が“自己紹介”してくれる。
 だが、あまりにも情報過多すぎる!
 可動式人型量子演算処理戦闘型ヒューマノイド!?
 ナルミさんと同じだけど、戦闘型!?
 それに三号機の登録者の人格データをダウンロードしたってことは、実質三号機の登録者じゃん!
 いや、それもだけど……。

「……三号機の……登録者捜し!? な、なんでそんなこと!」
「四号機が起動して、飛び去っていったんだ。登録者を見つけたと考えるのが自然だろう? ならばルレーン国の国守くにもりとして、三号機の登録者を早急に新しく据えたい。ヒューマノイド体ではGF電波を受信できないからな」
「なっ……」

 しれっとマントの下からスナイパーライフルを取り出し、肩に担ぐ“ファントム”。
 あ、なるほど?
 木の上に隠れて、万が一俺たちと交渉が失敗した時はあれで撃ち抜かれてたんですね?
 じゃ、なくて!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...