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二人の聖女と悪魔の亡霊編
合流(2)
しおりを挟む「んー、つまり……俺たちに聖域に入ろうとしている、ソーフトレスをなんとかしてほしい? それが俺たちへ聖女さんが協力してくれる条件か?」
「概ねそれで合っています。聖女殿たちも、両国が休戦してくれることを望んでいますからね。しかし、本人たちもまさか故郷の聖域に踏み込まれるとは思っていなかったようです。聖域はその名の通り、他国には不可侵の地ですからね」
だろうなぁ。
……元ルレーン国のあった土地——聖域。
四号機と、おそらくだが三号機もそこにあるのではないか——と言われる地。
確かに人を寄せつけないよう、聖域とされている理由もわかる。
ギア・フィーネという、とんでもないチート遺物を二つも抱えているのだとしたら……そりゃあそう。
「えーっとぉ、まとめると聖域の聖女の願いはコルテレとソーフトレスの休戦・停戦。あと、聖域に侵攻してるソーフトレスを追い出してほしい?」
「そうだね」
「ぼくたちは石晶巨兵でコルテレとソーフトレスを仲直りさせて、技術提供を受けつつ和平と不可侵条約を結びたい」
「そうだな」
俺とおっさんがジェラルドのまとめに頷く。
うん、こうして整理すると、確かに協力しあった方がいいな。
「コルテレが発見した“遺物”は使えないはずだよな?」
「ああ。使えたとしても、ラウトがそれを許さない」
「おや、コルテレが見つけた“遺物”をご覧になってきたんで?」
「ああ、来る途中でな。ラウトとディアスに聞いた感じ、地上からは使えなさそうだ。本体は宇宙にあるみたいで」
「な、なんすかそれ」
ディアスが「ラウトが許さない」と言うのなら多分、本当に絶対許さないだろう。
破壊行為は一応止めてきたけど、脅して一部結晶化するぐらいはやりそうだからちょっと心配。
おっさんにも衛星兵器のことを話し、「千年前はさすが規模が違いますねぇ……」と乾いた笑いを浮かべられつつ次の話題。
「聖域って本当に“遺物”がありそうなの?」
これ、割と大事。
もし四号機と三号機が聖域——ルレーン国にあったものだとしたら、俺はそれを勝手に使ってることにならない?
苔とか生えてなかったし、多分普通に手入れされてたと思うんだが、もし国宝とかに指定されてるやつを勝手に乗り回してたとしたら……こ、国際問題とかに、なりません?
他にもエアーフリートと三号機が聖域にあるのだとしたら、コルテレとソーフトレスに渡すのは危険だ。
さすがに千年前の登録者“ザード・コアブロシア”級の乗り手は現代に望めないだろうけど、万が一それと同等の乗り手に渡ると四体一でも厳しそう。
もちろん、当時はラウトもシズフさんもギア5だったわけではないから、負ける原因を上げるとするのならば間違いなく俺が足を引っ張ったせい、だろうけど。
「それは本人たちに聞いた方がいいでしょう。ギア・フィーネを見れば、教えてくれると思います」
「うーん。まあ、そうかー」
盗人呼ばわりされたらどうしよう。
では、その問題は追々ということで。
「使者を出すのは両国同時でなければいけないだろうけど、それに関してはなにか策はあるのかい?」
と、目を細めて笑うのはナルミさん。
もちろんそれは考えてある。
「国境で待ち合わせしてもらうよ。使者にはラウトとディアスに行ってもらう」
「え、旦那とラウトの旦那が行くんで?」
「……ラウトは使者向きではないのでは?」
「コルテレの方に行ってもらうよ」
「ああ、なるほど」
これだけ言えばナルミさんはにこりと笑う。
今、ラウトはコルテレの山の中の基地に行っている。
あのラウトが見るだけで終わるはずはない。
まあ、なにかしらの接触はしてくると思うし、その接触はコルテレにある種の脅威として覚えられるだろう。
それを無視して——見なかったことにしてこのまま戦争を続けるのだとしたら、コルテレの軍は負ける。
「両国の話し合いの場を設けて、そこで話をまとめたい」
「その時にわたしの出番というわけですね。イイよ」
「よろしくお願いします!」
なお、笑顔が大変あくどいのだが、大丈夫だろうか。
「他になにか気になることはあるか?」
「あー、そうっすね……本国の方はどうですか?」
「おっさんの言ってた通りかな。メリリアはセドルコ帝国に、亡命したみたいだ」
「以前使者が来た時は返り討ちにしましたが、もう少し情報はほしいね。難民に混ぜて少し追い返すといいと思うなぁ」
「なるほど! そんな手が」
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「うわぁ」
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