終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
227 / 385
間章

番外編 守護神たち(2)

しおりを挟む
 
「遠慮はいらない。

 右の剣に炎、左の剣に氷結を纏い、一振りで四人を薙ぎ飛ばす。
 魔法騎士たちの合同魔法も、反対の一振りで相殺した。

「……え、ヤバ……」

 真顔で呟くデュレオだが、それを相手にしている騎士たちの方が冗談ではないだろう。
 すぐに体勢を立て直す前衛騎士たちに襲いかかるのは、ディアスが初手で用意していた八つの魔法陣の一つが発動する。

「うわぁぁあああああああああっ!」

 火球が一つ、凄まじい速度で飛び出して騎士たちの足元に落ちると大爆発を起こす。
 その衝撃波で、後衛の魔法騎士たちさえ吹っ飛んだ。
 ほぼほぼ戦闘不能の十名を見て、ディアスは溜息を吐く。

「後衛の魔法騎士たちは五名もいるのだから、援護に二人ほど人数を割きなさい。前衛へ強化魔法の補助を行うだけでだいぶ違う。前衛も二人ほど中衛を置いておけば、即壊滅などということはない。作戦もなしに突っ込んでくるのもよくないな。階級が一番上の者は、全体を見て臨機応変に指示を出さなければダメだろう。実践経験が少ないのであれば、実践経験の多い者が指示を出しなさい。階級の上下は実践経験の前では無意味に等しい」

 そう言いながら、残っていた七つの魔法陣の一つを発動させる。
 方々に騎士たちの転がった場所をすべて包み込む、巨大な治癒の魔法陣。

「かの者たちを癒せ。[サークルヒーリング]」
「う、うう……」
「こ、これは……!」
「こ、これほど広範囲の治癒魔法!?」
「次の十名、前へ出なさい。最初の者たちの失敗を踏まえて、作戦を立てる時間をやろう。そのあとに挑戦する者たちも、前に戦う者たちの戦い方を見て学びなさい。俺に一撃入れずとも、今俺の背後にあるすべての魔法陣を発動させる——を、勝利条件にしてもいい。新たに展開はしないから、残り六つ、頑張って発動させてみなさい」
「「「うっ」」」

 それはそれでとんでもない条件であるような。
 しかし、勝利条件が追加されたのはいいことなのかもしれない。
 そうポジティブに捉えることとして、次のチームが前へ出た。

「強いな」

 十回ほど、騎士団と魔法騎士団のチームとの戦いが繰り返される。
 しかし、結局ディアス・ロス一人にその後魔法を使わせることができたチームは皆無。
 一回戦のチームには、よほど加減をしていたのだろう。
 それを見てシズフがはっきりと断定した。
 ディアス・ロスは、強い。

「まあ、うん……舐めてはいたかもね……」

 デュレオでさえもそう口にする。
 複数の魔法を同時に展開し、同時に消すのは普通ではできない。
 デュレオでさえ、事前の下準備に精神支配系を施すが、それは一度発動すれば魔力を吸い続けるので他の魔法を使っても問題ない——というレベル。
 ディアスの攻撃、防御、強化補助、回復治癒を八つ同時に扱うのは訳が違う。
 単純に魔力が膨大でなければ不可能だし、その魔力をそれぞれの属性に配分、魔法陣を形成するために量を調整、出力して維持までしなければいけない。
 涼しい顔をして、正直外れもいいところだ。

「その剣は杖代わりになっているのか?」
「ああ、鉄に結晶魔石クリステルストーンを砕いたものを混ぜ合わせ、高温と魔力で焼き上げ、雷魔法で打って形を整えたものだ。剣の作り方はよく知らなかったから……まあでも成功したといえると思う」
「無茶苦茶やりやがる」
「俺も剣の作り方など知らんが絶対違うだろ、それ……」

 ディアスが抜いた剣を興味深そうに眺めるシズフと、その作り方に真顔で突っ込むデュレオとラウト。
 しかしふと、デュレオがその作り方に首を傾げた。

「んん? 結晶魔石クリステルストーン? って、加工できるの?」
「魔力を注いで加工するやり方がある。魔導具などは加工して作るものだ」
「ごめんね、ロス家の坊ちゃんが当たり前の常識みたいに言うことって、本当に当たり前かどうか信用ができないの」
「な、なぜっ」
「俺もほぼ同意見だが、アグリットとジェラルドが石晶巨兵クォーツドールを作っている時に、結晶魔石クリステルストーンを加工しているのは見たことがある。……ここまで形を変える加工は見たことはないが」
「ほらね」
「な、なにがだ!」

 つまりディアスがほどよくおかしいということだ。

「……ヒューバート・ルオートニスが魔樹の皮とやらの代わりになるものを探していたが、これではダメなのか?」
「ん、んん……さすがに製造方法が難しいのではないか? 素材は手に入りやすいものだが」
(多分使用魔力量が喧嘩売ってるレベルだろうな)
(鉄と結晶魔石クリステルストーンを魔力を注ぎながら雷魔法で製鉄するとか、喧嘩売ってるだろ……)

 デュレオとラウトはツッコミをきちんと声に出した方がいい。

「だが、この黒い剣は——ギア・フィーネのエンジンにとてもよく似ているな」
「え」
「一度ザードがギア・フィーネのエンジンを取り出して調べているのを見たことがあるが、これと似ていた」
「……、……い、いや。だが、ありえない……千年前に結晶魔石クリステルストーンは存在していない」
「それもそうか」

 そうしてすぐに興味を失うシズフ。
 彼とは反対に、ディアスの顔はより曇った。
 その曇った表情を見て、目を細めるデュレオ。

「……でもギアンなら千年前に結晶魔石クリステルストーンの原型みたいなものは、作り出せてそうだけどね」
「ふん……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...