終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
221 / 385
間章

弟の恋模様(2)

しおりを挟む
 
「で、レオナルドの相談事への、俺の考えだが」
「はい」
「まず聖女育成に力を入れてはどうだろう。デュレオには俺から話すから、俺がソーフトレスとコルテレに行っている間、デュレオに聖女を教育してもらうといい。ハニュレオの聖女たちは、デュレオに教えを受けてかなり力が増したそうだ」
「え! そ、そのようなことがおできになるのですか!?」

 らしいよ。
 スヴィア嬢が複雑さに悶絶していたけれど。

「聖殿の長として、聖女候補たちの力を底上げしておくのは十分レオナルドの実績になるだろう。彼女たちにお金をかけるようにして、地方の小聖殿も設備を整えるといいと思う。そうすれば地方からも寄付金が増えるはずだ」
「わかりました!」
「俺の留守中に守護神教を布教するのはレオナルドに任せなければいけないから、頑張ってくれよな」
「は、はい! お任せください!」

 うーん、素直で頼もしい。
 ……あ、そうだ。

「それと、マリヤのことなんだが」
「マリヤ!」

 相変わらずすごい食いつきがいいな。

「レナ仕えだったんだが、ディアスがあっさり目の上の傷跡を消してくれたんだ」
「!」
「レナと俺の結婚話が進んでいて、母上はライモンドの子育てで忙しいから侍女を増やすと言っている。マリヤの身内を起用する予定だそうだから、お前もライモンドをよく見てやるといい。来月誕生日だしな」
「え? な、なぜ僕がライモンドを——」

 お、わからんか?
 よーし、ではお兄ちゃんが教えてやろうではないか。

「いいか? レオナルド。母上はマリヤの家族。母と姉を起用する」
「は、はい」
「子育てをマリヤの母と姉が手伝い、そこへお前が異母弟の世話を焼きにくる。するとマリヤの母と姉と遭遇する」
「は、はい」
「お前が異母弟を世話して可愛がる話を、母と姉経由でマリヤが聞く。マリヤはさぞ、お前の優しさに感動するはずだ」
「!?」

 まあ、マリヤ自身がどうやら俺に対しても強火みたいになっていたからな。
 ……あれ、本当になんで?
 いつの間に?
 レナとパティがコツコツ育てたとしか思えないよね。
 でも俺に強火みたいになるのやっぱりおかしくない?
 一度ちゃんと話してみた方がいい?
 でもなー、レナの侍女に話しかけていいのか、ちょっと悩むよね。
 ジェラルドを間に挟んでみるか?
 いや、あんまりいい結果にならなさそう。
 あれかな? ディアスをうちの国に呼んだのが俺だから?
 なんにしても、傷跡が消えてよかったよね。
 これでかなり前向きになったと思うんだよ。

「な、なるほど……直接ではなく、周りから……外堀を埋めるのですね!」
「あと、マリヤは子爵家だろう? お前と結婚するには身分が足りない。だからランディの家——アダムス侯爵家に養女として入ってもらえないか、それとなく打診しておくんだ。もちろん宰相のルディエルにな? 先にそっと話しかけて、相談、って感じで。ルディエルは元々身分違いの恋を叶えるために宰相まで上り詰めた男だから、きっと相談に乗ってくれるはずだ」
「な! なるほど!」

 ランディの父、ルディエル侯爵は、奥さんであるエミリア夫人に一目惚れし、身分の違う侯爵家に通い詰めた。
 当時の侯爵である、エミリア夫人の父親とうちの父上の助力で無事に結婚し、現在は宰相の地位にいる。
 なのでルディエルは絶対にレオナルドの味方をしてくると思う。
 アダムス侯爵家にとっても、第二王子のレオナルドと養女の結婚は悪い話ではない。
 レオナルドはアダムス侯爵家にとって甥の立場だが、メリリア元妃が色々やらかしているせいで何度も綱渡りのような目に遭っている。
 レオナルド自身も聖殿の管理を自ら行うことで、自分は王家の者であると周囲に喧伝しているような状況だ。
 そこで俺がマリヤをアダムス侯爵家に養子入りさせ、レオナルドと結婚させればアダムス侯爵家にとってもレオナルドにとっても揺らいでいたところをがっちり安定させることができる。
 ……まあ、宰相はずっと父上派だしランディが俺の側近としていい働きをしているので、アダムス侯爵家自体は割と土台がしっかりしているんだけど。
 結構王家と近しいし、レオナルドが婿入りすればアダムス侯爵家は公爵家に陞爵しょうしゃくされても問題はない。
 若干王家並みの権威に成長してきているから、そこは別に考えた方がいいかもしれないけどなぁ。
 貴族間でもあんまり発言権に偏りがでかいと大変なんです。
 とはいえリーンズ先輩は家と疎遠すぎて、もうリーンズ先輩個人に爵位を与える話も出ているし、ミラー家の伯爵家陞爵は内定済みだし……一気に偏ることはないだろう、多分。
 もしくは——もう少しレオナルドが実績を積んだらレオナルド個人を公爵にしてマリヤを妻にする、とか?
 いや、それは厳しいな。
 領地はこれから広がり、増えていくからアリといえばアリなんだが領地運営未経験者が増えるということでもあるし。
 可能ならミドレと同じく、セドルコに面するところに国がもう一つ欲しい。
 レオナルドを大公にして、国境を任せられたら——……。

「マリヤと結婚できるのなら、僕はなんでもします……!」
「うん、でも、彼女の気持ちを最優先にな」
「はい! がんばります! マリヤに好きになってもらえるように! ライモンドを構い倒しますね!」
「う、うん……」

 兄としてもしっかりしてほしい感はある。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...