216 / 385
間章
王宮勉強会(1)
しおりを挟む「か弱いの意味調べ直しておいでよ」
「私はお前みたいに不死じゃないんですよ」
「よく言うよ、ヒューマノイドの私的利用で現に復活してるじゃん。人格データが混同してて完璧って感じじゃないのが、いかにもらしいケド」
「当たり前ですよ。人格なんて繊細なものを、データ化する技術を確立させたギアンが頭おかしいんです」
「それは全面的に同意するけどさぁ」
同意するんかい。
「けどまあワタシを戦地へ連れて行くのなら護衛は多めの方がいいですよ。あの国はシズフにとって敵国ですし、デュレオを連れて行くのに不安があるのならシズフとデュレオは置いていきなさい」
「じゃあ、ディアスとラウトを連れて行く感じですね」
「それがいいと思いますよ。と言っても千年経ってますし、ダイグロリアのことはあの二人もよく知らないと思うので、誰を連れて行っても似たようなもんだと思いますけどねぇ」
「ええ……」
所属していた軍事主要都市以外のことは、基本的にあまり知らないもんなのだろうか?
まあ、こんだけ広けりゃわからんのも無理ないか?
俺も前世、隣の学区のこととかさっぱり知らなかったし、そんなもんだろうか。
一応ラウトとディアスとシズフさんとデュレオに聞いてみてから決めよう。
シズフさんは——寝てるしねぇー!
***
「うっうっ、申し訳ありません、王妃様、ヒューバート様ぁ」
「あぁ、レナ……あなたが忙しいのはよく知っています。追試になってしまったのも仕方ありません。進級試験で追試なんて前代未聞ではありますが、それを合格すれば高等部一年として通ったと認められます。次の二年生への進級試験も頑張りましょうね」
「はうっ! ……はいぃ」
「…………」
はい、レナとジェラルドが進級試験に落ちました。
俺は合格したので、このほぼ一年間の授業出席日数不足は政務ということで免除。
今は二年生への進級試験勉強を、城の一室で母上に見守られながら行っている。
ジェラルドはディアスがものすごく丁寧におしえているのだが、ディアスが教えるとスルスル覚えていくのでジェラルドは心配ない。元々の地頭がいいもん。
問題はレナである。
「レナ、そこはこちらの文法を使うんだよ」
「は、はいっ」
「焦ると間違えるから焦らないで大丈夫。君は知識というより焦りからする凡ミスで点数を取り逃がしている方が多い。だから問題を解く時は落ち着いて」
「は、はい!」
「あと力も抜いて」
「はい!」
ダメかもしれない。
ナルミさんに教わっているのだが、母上が見ている前のせいかガッチガッチなのだ。
とはいえ母上としては、俺とレナの結婚話も進めたかったらしい。
一応卒業してから、というのが今までの共通認識だったのだが、側室打診が三桁をゆうに越え、そろそろ四桁近いと聞かされた。
宇宙猫である。
理由を聞けば国内だけでなく、ミドレ公国の王侯貴族からのものが半数。
多分国内は未婚の令嬢がいる家すべてだろうとのこと。
なので俺の年上も年下も、なんなら生まれていないけど多分女の子だろうって無茶苦茶な打診まで。
俺をなんだと思ってるんですか!
そんな感じで、レナとの結婚を来年に早めようかと思っているのだ。
側室の打診なので、減るとは思えないけどな。
少なくとも母上は最近この側室打診のせいで、かなり政務に影響が出てるっぽい。
専属の女官を増やすと決めたほどだ。
なので、レナには頑張ってもらわねばならない。
…………無理そうなんだけど。
「それで、デモンド。肝心のヒューバートの成績はどうなのです?」
「ヒューバート殿下は優秀でらっしゃいますね。師走に二年生への進級試験もございますが、この成績ならば問題はないでしょう。実技の方はミラー君に引けを取りませんよ」
デモンド先生、それはジェラルドが手加減しているからです。
ジェラルドが本気を出せば実技試験場所が全壊する。
ちなみにこのデモンド先生は俺が父上と母上にお願いした、ハニュレオのマロヌ姫付きにする外交官候補。
デモンド先生以外にも、教員資格のある数名の貴族がこの場にいる。
俺とレナとジェラルドの勉強を見てもらう名目だが、実質的にハニュレオへの派遣外交官試験だ。
デモンド先生は母上推しな。
「それにしても、うちのランディが他国の姫の従者を務めるとは驚きです。殿下の信頼をそこまで勝ち取っているとは——」
「ランディは大変優秀で、頼りになりますよ、スティールさん」
そしてこっちは宰相からの推し。
スティール・アダムス。
ランディの兄の一人だ。
優秀な文官で、俺と父、宰相と思想が近い。
この人も有力候補……むしろこの人は決まりかなぁ。
「ヒューバート殿下はいつ頃次の国へと立つ予定なのですか?」
「んー、神無月か、霜月には出たかったのだが……」
新しい書類を何枚か目の前に差し出してきたデモンド先生に質問されるが、ついレナの方を見る。
いっぱいいっぱいっぽいんだよなぁ。
やはり来年まで国内に留まって、足元の地固を行うべきだろうか。
ミドレとの外交が活発化して、国内の様相もかなり様変わりしているはずだし今後はハニュレオとも外交が始まる。
ディアスが「ハニュレオは距離があるからソーフトレスとコルテレが拠点として使えるようになるまで、転移魔法陣を固定して、そこで人や物資の行き来をしたらいいのではないか?」ってサラッととんでもねぇことを言いおるんだよなぁ。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
未来世界に戦争する為に召喚されました
あさぼらけex
SF
西暦9980年、人類は地球を飛び出し宇宙に勢力圏を広めていた。
人類は三つの陣営に別れて、何かにつけて争っていた。
死人が出ない戦争が可能となったためである。
しかし、そのシステムを使う事が出来るのは、魂の波長が合った者だけだった。
その者はこの時代には存在しなかったため、過去の時代から召喚する事になった。
…なんでこんなシステム作ったんだろ?
な疑問はさておいて、この時代に召喚されて、こなす任務の数々。
そして騒動に巻き込まれていく。
何故主人公はこの時代に召喚されたのか?
その謎は最後に明らかになるかも?
第一章 宇宙召喚編
未来世界に魂を召喚された主人公が、宇宙空間を戦闘機で飛び回るお話です。
掲げられた目標に対して、提示される課題をクリアして、
最終的には答え合わせのように目標をクリアします。
ストレスの無い予定調和は、暇潰しに最適デス!
(´・ω・)
第二章 惑星ファンタジー迷走編 40話から
とある惑星での任務。
行方不明の仲間を探して、ファンタジーなジャンルに迷走してまいます。
千年の時を超えたミステリーに、全俺が涙する!
(´・ω・)
第三章 異次元からの侵略者 80話から
また舞台を宇宙に戻して、未知なる侵略者と戦うお話し。
そのつもりが、停戦状態の戦線の調査だけで、終わりました。
前章のファンタジー路線を、若干引きずりました。
(´・ω・)
第四章 地球へ 167話くらいから
さて、この時代の地球は、どうなっているのでしょう?
この物語の中心になる基地は、月と同じ大きさの宇宙ステーションです。
その先10億光年は何もない、そんな場所に位置してます。
つまり、銀河団を遠く離れてます。
なぜ、その様な場所に基地を構えたのか?
地球には何があるのか?
ついにその謎が解き明かされる!
はるかな時空を超えた感動を、見逃すな!
(´・ω・)
主人公が作者の思い通りに動いてくれないので、三章の途中から、好き勝手させてみました。
作者本人も、書いてみなければ分からない、そんな作品に仕上がりました。
ヽ(´▽`)/
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
祈りの力でレベルカンストした件!〜無能判定されたアーチャーは無双する〜
KeyBow
ファンタジー
主人公は高校の3年生。深蛇 武瑠(ふかだ たける)。以降タケル 男子21人、女子19人の進学校ではない普通科。大半は短大か地方の私立大学に進む。部活はアーチェリー部でキャプテン。平凡などこにでもいて、十把一絡げにされるような外観的に目立たない存在。それでも部活ではキャプテンをしていて、この土日に開催された県総体では見事に個人優勝した。また、2年生の後輩の坂倉 悠里菜も優勝している。
タケルに彼女はいない。想い人はいるが、彼氏がいると思い、その想いを伝えられない。(兄とのショッピングで仲良くしているのを彼氏と勘違い)
そんな中でも、変化があった。教育実習生の女性がスタイル抜群で美人。愛嬌も良く、男子が浮き足立つのとは裏腹に女子からの人気も高かった。タケルも歳上じゃなかったら恋をしたかもと思う。6限目が終わり、ホームルームが少しなが引いた。終わると担任のおっさん(40歳らしい)が顧問をしている部の生徒から質問を受け、教育実習生のミヤちゃん(竹下実弥子)は女子と雑談。タケルは荷物をまとめ、部活にと思っていた、後輩の二年生の坂倉 悠里菜(ゆっちゃん、リナ)が言伝で来た。担任が会議で遅れるからストレッチと走り込みをと言っていたと。この子はタケルに気があるが、タケルは気が付いていない。ゆっちゃんのクラスの担任がアーチェリー部の担任だ。ゆっちゃんと弓を持って(普段は学校においているが大会明けで家に持って帰っていた)。弓を背中に回して教室を出ようとしたら…扉がスライドしない。反対側は開いていたのでそっちに行くが見えない何かに阻まれて進めない。反発から尻餅をつく。ゆっちゃんは波紋のようなのが見え唖然とし、タケルの手を取る。その音からみっちゃんも扉を見て驚く。すると急に光に包まれ、気絶した。目を覚ますと多くの人がいる広間にいた。皆すぐに目覚めたが、丁度三人帰ったので40人がそこにいた。誰かが何だここと叫び、ゆっちゃんは震えながらタケルにしがみつく。王女と国王が出てきてありきたりな異世界召喚をしたむね話し出す。強大な魔物に立ち向かうべく勇者の(いせかいから40人しか呼べない)力をと。口々に避難が飛ぶが帰ることは出来ないと。能力測定をする。タケルは平凡な数値。もちろんチート級のもおり、一喜一憂。ゆっちゃんは弓の上級スキル持ちで、ステータスも上位。タケルは屑スキル持ちとされクラスのものからバカにされる。ウイッシュ!一日一回限定で運が良ければ願いを聞き入られる。意味不明だった。ステータス測定後、能力別に(伝えられず)面談をするからと扉の先に案内されたが、タケルが好きな女子(天川)シズクと他男子二人だけ別の扉を入ると、閉められ扉が消え失せた。四人がいないので担任が質問すると、能力が低いので召喚を取り消したと。しかし、帰る事が出来ないと言っただろ?となるが、ため息混じりに40人しか召喚出
俺はファンタジー世界を自重しない科学力で生きてゆく……万の軍勢?竜?神獣?そんなもん人型機動兵器で殲滅だ~『星を統べるエクスティターン』
ハイフィールド
ファンタジー
「人型機動兵器パイロットの俺がファンタジー世界に投げ出されたけど何とかなりそうだ」
対戦型ロボットアクションゲームの世界が実は現実世界だった → ファンタジーな惑星に不時着 → 仲間に裏切られてロボットも無しに一人っきり!? 果たして俺は生き残れるのか!? という、出だしで始まるファンタジーロボットアクション。序盤はロボット物SFでスタートして、途中(31話)からファンタジーになり、ロボットアクション×冒険×国作り×戦争と欲張りなお話になる予定です。相変わらずテンプレ物ですが、テンプレ素材をヒロが調理するとこんな料理になります……を、お楽しみ下さい。
1話あたり3500~6000文字程になると思いますのでサラッと読めるかと思います。
第3回ファンタジーカップにエントリーだけはしています。なんとか200位以内に入りたいので是非とも応援よろしくお願いします(5/10現在ギリギリの位置にいます)
タイトルの「ファンタジー世界を自重しない~」を早く読みたい方は1章ラスト(30話目)に大雑把なキャラ紹介とあらすじを入れておきますので、そこから読んでお試ししてみて下さい。
途中に軍事や科学の話も出てきますが、特別そっち方面に詳しい訳ではありません。
さらっと浅くネットで調べているだけなので「何となく言いたい事は分かる」位の解釈でお願いします。
遙か遠い未来の物語なので科学なんて完全に妄想科学です。遙かに進んだ科学は魔法と見分けが付かない云々ってやつです。
三点リーダーを多用する作風です。苦手な方は申し訳ございません。
ほとんど無い予定ですが、タイトル末尾の★はR15要素あり。後書きにあらすじを乗せるので苦手な人は飛ばして下さい。
6/28 2、3章に短いプロローグを追加しました。
現在4章ストック中 進捗率3%
※ご忠告を頂いてタイトル変更しました……説明系のタイトルにするなら中途半端なのは駄目らしいです。
アルファポリスはタイトル70文字以内なので入りませんでしたが、フルタイトルでは
”俺はファンタジー世界を自重しない科学力(ちから)で生きてゆく……万の軍勢? 竜? 神獣? そんなもん人型機動兵器で殲滅だ~『星を統べるエクスティターン - rule the Stars EXT -』”
となります。
スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした
大豆茶
ファンタジー
大学受験を乗り越えた高校三年生の青年『相模 型太(さがみ けいた)』。
無事進路が決まったので受験勉強のため封印していた幼少からの趣味、プラモデル作りを再開した。
しかし長い間押さえていた衝動が爆発し、型太は三日三晩、不眠不休で作業に没頭してしまう。
三日経っていることに気付いた時には既に遅く、型太は椅子から立ち上がると同時に気を失ってしまう。
型太が目を覚さますと、そこは見知らぬ土地だった。
アニメやマンガ関連の造形が深い型太は、自分は異世界転生したのだと悟る。
もうプラモデルを作ることができなくなるという喪失感はあるものの、それよりもこの異世界でどんな冒険が待ちわびているのだろうと、型太は胸を躍らせる。
しかし自分のステータスを確認すると、どの能力値も最低ランクで、スキルはたったのひとつだけ。
それも、『モデラー』という謎のスキルだった。
竜が空を飛んでいるような剣と魔法の世界で、どう考えても生き延びることが出来なさそうな能力に型太は絶望する。
しかし、意外なところで型太の持つ謎スキルと、プラモデルの製作技術が役に立つとは、この時はまだ知るよしもなかった。
これは、異世界で趣味を満喫しながら無双してしまう男の物語である。
※主人公がプラモデル作り始めるのは10話あたりからです。全体的にゆったりと話が進行しますのでご了承ください。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる