終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
211 / 385
間章

魔法の始まり

しおりを挟む

 騎士は悲しみと苦痛が入り交じった表情を見せ、ゆっくりと項垂れる。

「あのー、石を譲るのは無理なんだけどさ……騎士さんとオレで協力プレイするってのはどう?」

 あんまりにも打ちひしがれた様子が気の毒になって、オレはとっさに思いつきの提案を口に出してしまった。

「……協力だと?」

 騎士は凜々しい眉の間に深い皺を寄せて顔を上げる。オレは顎に手をやって考えながら話し出した。

「そう。オレの願いは、絶対アンタには譲れないけど、すごく個人的な小さいお願い事なんだ。アンタの願い事も、恋人を自由にしてやりたいってだけだろ? どちらも大それた願い事じゃない。オレの持ってる命願石は特別製みたいだから、小さなお願いなら、二つを同時に叶える方法があるかも知れないじゃん?」
「まさか! 二つの望みを同時に叶えるなど、聞いたことが無い」

 騎士は馬鹿にしたように吐き捨てたけど、オレは割と真剣だった。

「石を譲れって言うけどさ、アンタはこの石に触れないだろ。触ろうとしたら、さっきみたいに電撃で追い払われる。どうやって持ち運ぶんだよ? オレを殺したら奪うことはできるかも知れないけど、オレの死と同時に石が効力を失う可能性もあるよ。アンタが望みを叶えるには、オレに協力するしかなくない?」

 オレの指摘に、騎士は思いきり舌打ちしてそっぽを向いた。オレは気にせず続ける。

「オレはオレで、この世界のことをほとんど知らない。一人で冒険に出ても、他の巡礼者を出し抜けるとはとても思えない。滅石を一番多く集めないと願いが叶わないんだから、協力するのが一番望みに近いんじゃないかと思うんだけど……」

 そこまでオレの考えを話すと、騎士は考え込むように顎に手を当て、

「……お前の叶えたい望みとは、なんだ」

 と聞いてきた。

「うっ……!」

 オレは思わず言葉に詰まる。
 そりゃ聞かれるよな。目的が何か分からない人間とは協力したくないもんな。
 でも、このシリアスな雰囲気の中、ちんちんつけて欲しいだけですとはとても言い出せない。

「それは……言えない。とても個人的なことだから」

 騎士は忌々しげに舌打ちし、

「お前の望みが分からないなら、協力することなど出来ないだろうが!」

 と怒鳴った。

「それはそうなんだけど……! でもオレはそっちの望みを知ってるから、両方叶える方法はオレが考えれば良いじゃん! オレだってフィオレラには幸せになって欲しいし!」

 オレも後に退けなくて騎士と額を付き合わせる勢いで怒鳴り返す。

「お前のような下郎に、大聖女の名を呼ぶ資格はない!」
「怒るとこソコかよ!? いや、オレはアンタとフィオレラ様の恋路を邪魔する気は無いから。冷静に考えよう」

 オレはエロゲ愛好家だが性癖はいたってノーマルなので、NTR(寝取られ)やBSS(僕が先に好きだったのに)には興味ない。正ヒロインは主人公とくっついてくれて良い。むしろフィオレラはゲームで攻略済みなので、残ったフリーの女の子に会って攻略したい気持ちが強い。というか、攻略する前に願いを叶えてちんちんを取り戻さねばならないのだ!

 騎士はオレから少し距離を取って立ち上がり、顎に手を当てて考え込んだ。オレも立ち上がって握りしめていた石をポケットにしまい直し、ずっと黙ったまま横にいたカレルの存在をようやく思い出した。

「……カレルはどうする……?」

 なんとなく後ろめたい気持ちでひげもじゃの顔を見上げると、カレルは

「どうもしない。アキオがそこの騎士と旅に出るなら、オレは自分の仕事に戻るだけだ」

 と首を振る。それにオレが言葉を返す前に、騎士が割り込んできた。

「それは認められんな。お前にはスパイ容疑がかかっている。ここを出れば、私の手の者がお前を捕らえて再び投獄する手はずになっている。逃げられると思うなよ」
「は、タダの人間風情が偉そうに」

 剣呑な二人の目線がぶつかり合い、見えない火花が散るようだ。オレはその間に立って、二人を交互に睨み、大声で言った。

「やーめーろーよー! どうせならカレルにも協力してもらった方がいいよ! せっかく知り合ったんだから、仲良くしよう!」
「協力!? この混ざり者とか? はっ、とんでもない話だ」
「オレはファタリタの人間と手を結ぶ気は無い」

「もおお~! カレルの仕事は命願教の秘密を探ることだよな? そんで、騎士さんは命願教の教義に反して大聖女を役目から解放したいんだろ? どっちも鍵になるのは命願教の秘密だ。だったら協力した方が効率が良いと思わないか!?」
 
 オレは二人に指を突きつける。カレルはしばらく騎士の方を睨んでいたが、ふと表情を緩めて

「分かった。オレはアキオに協力する。アキオはファタリタの人間だが、命願教の毒におかされていないようだから」

 とオレにだけ頷いて見せた。
 騎士はしばらく苦虫を噛みつぶしたような顔で地面を睨んでいたが、

「……ちっ、分かった。そちらに有利すぎる気がするが、私には他に手がない。お前の言うとおりにしよう」

 と、呟いた。

「よーし、じゃ、これから協力して頑張っていこーぜ!」

 ようやくなんとか話がまとまった。オレは二人に向かって手を差し出したが、握ってくれたのはカレルだけだった。

 初期パーティーはひげもじゃの熊男と、元主役のイケメン騎士、レベル1モブのオレ。本来なら美少女と度に出るはずなのに、何故か男ばかりで残念だけど、ようやくこれからオレの異世界での冒険が始まるんだ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...