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ハニュレオ編
事後——登録者(4)
しおりを挟む「ただ、そう言われるとザードのことだから人格データはどこかに残していそうだとも思う」
「人格データ?」
「サルヴェイションやイノセント・ゼロに音声サポートを頼んでいただろう? あれの原型は登録者の人格データをギア・フィーネが保存し、ロードして使っているのだ。サルヴェイションのサポートと話して思ったのだが、サルヴェイションのサポートには俺の人格データが使われているようだ」
「あ」
そういえば『人格データダウンロード』とか言ってたね。
完全に同じというわけではなさそうだけど、かなり近いんだろう。
三号機の登録者の人格データかぁ。……ヤバそうだなぁ……考えただけで震えちゃう。
「なんだ?」
「あ、ええと……その[長距離精密狙撃ユニット]? っていうのは、回収できないんですかね? 放置するの、危険そうな感じがするんですが」
「それは俺も思ったが、現時点で扱える者は少なかろう。そもそもあれはザードがギア・フィーネ専用として作っている。魔力で動く石晶巨兵ではエネルギー源が異なるし、ラウトの時に使われているのならエネルギー残量も残り少ないと思う。アレは確か単独だと三発しか撃てなかったはずだ」
「そ、そうなんですか」
そうか、エネルギー源が別なのか。
そういわれるとそうだな。
エネルギーが切れたら、使い物にならない、とはいえあと何発残ってるのかわからないしねぇ?
「でも回収しておいた方がいいと思うんですよ。これから土地が戻っていくと、いつか誰かに見つかると思います。それが戦争に悪用されるともしれませんし」
「ふむ……千年前の遺物は負の遺産として、どこかでしっかり管理する組織を作った方がいいかもしれないな。ルオートニスだけに任せると、他国からの非難が集中するだろうから、各国から人を募り中立の組織を立ち上げるべきだろう」
「そうですね。中立か……ディアスには任せられませんか?」
「俺は正直向かない。武器など大半使い方がわからない」
「あ、うーーーん」
使い方がわからない人に任せるのも怖いなぁ……。
なら、ナルミさんだろうか?
デュレオに任せると間違いなくロクなことにならないし。
シズフさんは……あの人はなにかの管理に絶対向いてない。
消去法でナルミさんかな?
「まあ、それは追々でよかろう」
「そうですかね」
「回収については俺からラウトに頼んでおく。五号機ならば扱えると思う。それから、結晶化津波の後始末についてだが」
「はい」
結構被害は出てるだろうなぁ。
しかし、俺は他国の者。
津波対応を全面的にやらかしてしまったが、後始末までやらされるのは勘弁なんだよな。
復興支援はやるけどね。
「お前たちが津波と戦った場所まで、およそ三十キロの規模で結晶化した大地が拡張。範囲内にあった町と村が五つほど連絡途絶。石晶巨兵で大地を回復してほしいと要請がきている」
「ああ、まあ、それは、そうですね」
被害者人数をあえて伏せたのは、俺への配慮かな。
俺が思わず頭を抱えると、その上から手のひらが重なり治癒魔法がかけられる。
熱が上がってたのか、ひどく冷たく感じて気持ちいい。
「そろそろ限界だな。横になりなさい」
「は、はい」
「対応についてはランディが行っているから、お前はなにも心配せずに休みなさい。ラウトとシズフも俺が面倒を見ている。デュレオ・ビドロはシズフが見ているのでなにも問題はない。……まあ、存外“歌い手”としてレナに歌の指導などをしている様子だったから、問題はなかろう」
「え、レナを?」
あのイケメンが?
……でも平然と人を傷つけるやつに、レナがなびくわけないし……だ、大丈夫かな?
歌い手として、指導。
へ、へぇーーー?
「元々アスメジスア基国にも名の通ったシンガーソングライターだ。世界でもっとも有名な歌手の一人なのだから、そんな歌手に指導を受けられるのはレナにとっても悪くなかろう」
「ま、まあそうなんですけど」
「スヴィア嬢とマロヌ姫も一緒に学んでいるから、大丈夫だと思うぞ。心配ならば本人に聞いてみるといい」
「う、うーーん」
まあ、それは、はい、その通り、だと思いますけれども。
ベッドに寝かされて頭に治癒魔法をかけ続けられる。
「お前の優秀な部下で、幼馴染たちに任せておけばいい」
「……はい」
横になっただけなのに、もう眠たくなってきた。
頭を撫で撫でされると、意識がとろけていく。
「…………」
ふわふわとする。
とぽん、とぽん、と水の音?
暗いのに、すぐ側に誰かいるのがわかる。
青い髪と、長いマントで覆われた長身の男。
口許が弧を描き、楽し気に俺を見ている。
誰だ?
『システムエラーも時々面白いことになる』
『補修は限界に近い。君のおかげで補修素材が再び増える兆しはあるが、一刻も早く“核”を確保しなければ』
男の隣に白い、茶色い長い髪の少年、いや、少女?が現れた。
白く光る肌は多分裸。
足首まで絡む長い髪だけが、茶色く光っていた。
なんだか、見覚えがあるような?
どこだったっけ?
『待っているよ。それまでは、僕が』
『とはいえ時間はない。せいぜい急ぐことだ。……そのための——』
なんだ?
誰だ?
お前たちは、いったい……。
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