上 下
194 / 385
ハニュレオ編

運命の強制力?(2)

しおりを挟む
 
 っていうかさぁぁぁぁ!
 俺まだ16歳ですけどぅぉぉぉおお!?
『ヒューバート・ルオートニス』が結晶化した大地クリステルエリアに呑まれて死ぬのは、18歳の時だろおおおおぉ!?
 なんでこんなに早く結晶化津波とか、死亡フラグが立ってんのおおおぉぉぉ!?
 俺がレナと仲良くして、破滅エンドを回避しようと色々変えたせいかなぁぁぁぁあ!?
 だとしたら運命の強制力ハンパなくねえええぇ!?
 泣くよ? ゲロ吐くよ?
 オエエエエエエエェッッッ!

「当然のようにこの俺とブレイクナイトゼロを戦力に数えるな」
「え? ダメなの?」

 ラウトが不満そう。
 さすがの俺もラウトが嫌というのなら、強制はできない。
 なぜならラウトの方が神様として偉いので。

「別に。ただチャージ100%を撃つのなら、お前の大好きな結晶魔石クリステルストーンは諦めろよ」
「ええぇ……」

 陸竜と陸帝竜ベヒモス結晶魔石クリステルストーンは、なんとか残していただけないでしょうか。

「ヒューバート・ルオートニス、俺とディプライヴも戦力に数えてくれて構わない」
「えっ、い、いいんですか?」
「晶魔獣というのはよくわからないが、その状態のお前が出るというのならよほど切羽詰まった状況なのだろう? それならば……お前より俺が出た方がましだろう」
「それは……そうですね」

 というか、めちゃくちゃ心強いですね。
 俺、多分役には立ちませんしね?
 棒立ちで魔法使って壁に徹しますよ?

「結晶化津波とやらが如何程のものか、楽しみだな」
「ラウトだけだよ」

 舌舐めずりまでしおってからに。

「デュレオ、お前はここで歌を歌え」
「はあ?」

 出入り口の扉に歩き出していたシズフさんが、立ち止まってデュレオにそう言った。
 忘れてたけど、そうか、そういえば——デュレオは千年前の“歌い手”なのだ。
 “歌い手”……ギア・フィーネのギア上げを手助けしてくれるブースター。

「なんでお前らのこと助けるようなことしなきゃならないわけー? 嫌でーす」
「死ねないのなら、俺が一緒に永遠を生きてやる」
「は?」

 振り返ったシズフさんが告げたのは、側から聞くとプロポーズ?
 なぜだかその声と言葉がとても静かに響いて聞こえてきた。
 まるで、この場にシズフさんとデュレオだけしかいないみたいだ。
 映画の中。
 俺たちは観客。
 みたいな……。

「……正気?」
「…………」

 聞き返したデュレオに答えることなく、部屋から出て行ってしまう。
 ラウトもキョトンとしてから、俺たちの顔を見て肩を竦めてあとを追う。
 残った俺たちと技術者たち、そしてデュレオ。
 ソファーに座ったままやる気のなさそうな顔をしていたデュレオは、また「正気じゃないよねぇ」と嘲笑を浮かべる。

「……俺たちも動き出そう。王都と技術者の人たちを頼むよ、レナ」
「わかりました。ソードリオ陛下にも許可をいただきます。……お側で歌わなくても、大丈夫なのでしょうか」
「どうせ俺は突っ立って王都に晶魔獣が抜けないよう、壁を作ってるだけだろうから大丈夫。むしろ、王都を守るにはレナの力が必要不可欠だよ。頼むね」
「はい! わかりました!」
「よし、ジェラルド、ランディ、行くぞ」
「は~い」
「はっ!」

 結晶化しないギア・フィーネと石晶巨兵クォーツドールで対応するのは、戦略的にも正しいはずだ。
 王都の守りはソードリオ王とハニュレオの騎士団に任せよう。

「「…………」」
「あ、さ、先に行ってて、いいよ……!」

 部屋から出ようとしているジェラルドとランディが、のろのろと起き上がった俺を振り返る。
 俺の体、今ほとんど自分の意思通りに動かないんですわ。
 ここは俺に任せて先に行け……なんてな……ふふ……。

「せ、先行いたしますね!」
「ゆっくり来ていいからね~」
「お、おーう……」

 気を遣わせてしまったが、ここからまた一時間ほどかけてイノセント・ゼロに向かう。
 その間にレナがソードリオ王に事態を伝え、俺と入れ違いで例の早馬が入ってきた。
 たくさん水飲んで安心して寝ててくれ。

「イノセント」
『レーダーで確認している。接近している物体が晶魔獣だな? これを倒す感じ?』
「ああ、俺は一番操縦が下手だから、できるだけ動かずに漏れたヤツの足止め役だ」
『了解。頑張ろうな』
「もちろん。——イノセント・ゼロ、行くぞ!」

 ロボアニメのように母艦から出撃!って感じじゃないから、城からよろよろ飛び立つ。
 ここから五キロほどのところで戦闘が既に始まっている。

「……そういえばシズフさんが、デュレオに『歌え』って言ってたけど、城に置いてきてよかったのかな?」
『デュレオ? デュレオ・ビドロ? “歌い手”が城にいるのか?』
「いるね」
『——それなら距離はあまり関係ない。“歌い手”の歌声も脳波に影響する波動だから』
「波動?」

 ポテモン?
 なんかそういうポテモンいたよね?
 あんな感じ?

「うわ……」

 見えてきた結晶化津波。
 白いもやを立てながら、巨大な“山”。
 雲を纏った、山が迫ってきている。

「……あはは……」

 笑っちまうわ、こんなの。
 横幅の距離が、ヤベェ。
 地平線すべてが晶魔獣なのか。
 これが、結晶化津波。
 これが、この世界でもっとも恐れられる自然災害。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...