終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
190 / 385
ハニュレオ編

ひとまず落着?(3)

しおりを挟む
 
 そう、ディアス・ロスだ。
 千年前の医学はどう考えたって俺の前世の世界よりやべーもん。
 ディアスにソードリオ王の体調を見せればいいんだ。

「かの医神ならば、ソードリオ王をマロヌ姫が成人するまで支えてくれるはずです。陛下に医神の加護を授けていただけるよう、俺から頼んでみます」
「な、なんと……そのような神が? わ、儂がマロヌが成人する時まで、生きられると?」
「もちろん、現状の王の体調を見せてからでなければお約束はできませんよ? でも、可能性は高いと思います」

 だってディアスだし。
 なんとかしそう。
 生き生き治療始めそう。

「ダメ元でも、診ていただきましょう」
「…………」

 俺を見上げるソードリオ王が、涙を浮かべ始めた。
 あ、そんな……泣くほど!?
 期待させすぎてしまったか!?
 ダメだった時どうしよう!?

「おとうさまがながいきできるようになるのですか?」
「聞いてみなければダメですが、医学の神なので今よりは良くなると思いますよ」
「はわわぁ……! おとうさま、よかったですね!」
「そうだな」

 親子がこんなに喜ぶと、言いづらい!
 でも嘘は言ってないぞ。
 ディアスなら今よりは絶対マシにしてくれるよ!

「で、エドワードの件なのですが」
「あ、ああ、どうかよろしく頼めないだろうか」
「あ、その話はなくなってないんですね……」

 残念。
 なぜ俺があんなやつを側使えにして面倒見なければならないのだ。
 正直嫌すぎる。
 率直にお断り申し上げたい。

「どっこいしょ」
「だ、大丈夫ですか?」

 騎士に支えられ、立ち上がるソードリオ王。
 そして不意に杖を取り出す。
 使い古された、よい杖だ。
 それをおもむろにエドワードの方へと向ける。
 まさか?

「王家に仇なす堕落せし魂よ、ソードリオ・ハニュレオの名が下に贖罪の赦しを与える——[禁呪・隷属]!」
「んな、父上——ぎゃああああああああ!」

 ほ、本当に使ったー!?
 自分の息子に! 禁術を! 使ったーーー!?

「ヒューバート様、あれはまさか」
「う、うん、王家にのみ許されている禁術。[隷属]魔法」

 駆け寄ってきたレナに頷く。
 これはファンタジーハーレムものとかでよく見る『奴隷』を作り出す魔法。
 しかしこの世界では魂を拘束して隷属化する『呪い』の類に部類されるため、使用者にも反動がある。
 俺たちの世界に存在魔法属性は全部で八つ。
 地、水、火、風、雷、氷、光、闇。
 聖殿から認められていないものに無属性と聖女の聖属性がある。
 そして禁術は、世間一般に秘匿されている——呪属性。
 使用には対価が必要であり、使い方を誤れば使用者だけでなく使用者の周辺にも被害が出る危険な属性なのだ。
 そのため、使用は王家のみと定められており、ルオートニス王家は対価に自分の持つ記憶を差し出す。
 実際に見るのは初めてだが、ハニュレオはこの禁術を隠していないのだろうか?

「ち、父上……なぜ、なぜ……!」

 エドワードの額から首に鎖の紋様が刻まれる。
 一目で隷属化しているとわかる姿だ。
 こんな姿になるんだ……。

「エドワード・ハニュレオ、今この時を以てハニュレオ王家より汝を除外する! ハニュレオの名を名乗ることは許さぬ!」
「なっ、なっ!」
「そしてヒューバート・ルオートニス王子の小間使いとして仕えよ! ヒューバート・ルオートニス王子を主人とし、主人が命を落とした時、共にその生を終わらせること!」
「っ~~~~!? ち、父上! 冗談はおやめください!?」
「主人に逆らいし時は、その隷属紋により激痛の罰が下るものとする!」
「父上えええぇ!」

 うん、完全に俺に丸投げする気だ。
 いらねー。
 俺にはレナがいるから、エドワードが巨乳の色っぽいお姉さんだとしてもいらねぇー。
 確かにエドワードもイケメンの部類なんだろうけど、レナにジェラルドにランディにラウトにシズフさんにデュレオ。
 国に帰ればディアスにナルミさん。
 破格の観賞用美形揃い踏みなので、エドワードはなんていうか、並ぶと平凡というか。
 俺並みの平凡に見えるんだよ。
 どんまい、って感じの。
 うるせー! 誰がどんまいだ!

「エド……」
「スヴィアよ、其方はエドワードに近づくのを禁止する」
「っ!」
「其方はエドワードを甘やかす。それに、いずれルオートニスに帰るヒューバート殿下に、ハニュレオの聖女であるお前を一緒について行かせるわけにはいかぬ」
「……っ」

 若干共依存みたいだったしなぁ、エドワードとスヴィア嬢は。
 俺もそれがいいと思うよ。
 つらいかもしれないけど、スヴィア嬢にはこの国の石晶巨兵クォーツドールと国土回復に努めてもらいたいしな。

「というか、完全に俺がエドワードの面倒を見る流れになっている」
「ヒューバート様、嫌なことは嫌ってはっきり言った方がいいと思いますっ!」
「あれは断りづらいですね……」
「でもいらないよねぇ~」

 俺の婚約者と幼馴染たちも反対なんだってさ!

「あんな魔法もあるのだな」
「えー、王子様なら隷属化した人間の扱いとかも学んでおいた方がいいんじゃないのぉ? できることとかできないこととか、知っておいた方がいいよ。……口封じする時は俺が食べてあげる」
「そうか、機密情報のあるところとかに連れて行けないもんな」
「あれ? 食べてあげる、のところはスルー? 意外と大物だねぇ?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...