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ハニュレオ編
ひとまず落着?(3)
しおりを挟むそう、ディアス・ロスだ。
千年前の医学はどう考えたって俺の前世の世界よりやべーもん。
ディアスにソードリオ王の体調を見せればいいんだ。
「かの医神ならば、ソードリオ王をマロヌ姫が成人するまで支えてくれるはずです。陛下に医神の加護を授けていただけるよう、俺から頼んでみます」
「な、なんと……そのような神が? わ、儂がマロヌが成人する時まで、生きられると?」
「もちろん、現状の王の体調を見せてからでなければお約束はできませんよ? でも、可能性は高いと思います」
だってディアスだし。
なんとかしそう。
生き生き治療始めそう。
「ダメ元でも、診ていただきましょう」
「…………」
俺を見上げるソードリオ王が、涙を浮かべ始めた。
あ、そんな……泣くほど!?
期待させすぎてしまったか!?
ダメだった時どうしよう!?
「おとうさまがながいきできるようになるのですか?」
「聞いてみなければダメですが、医学の神なので今よりは良くなると思いますよ」
「はわわぁ……! おとうさま、よかったですね!」
「そうだな」
親子がこんなに喜ぶと、言いづらい!
でも嘘は言ってないぞ。
ディアスなら今よりは絶対マシにしてくれるよ!
「で、エドワードの件なのですが」
「あ、ああ、どうかよろしく頼めないだろうか」
「あ、その話はなくなってないんですね……」
残念。
なぜ俺があんなやつを側使えにして面倒見なければならないのだ。
正直嫌すぎる。
率直にお断り申し上げたい。
「どっこいしょ」
「だ、大丈夫ですか?」
騎士に支えられ、立ち上がるソードリオ王。
そして不意に杖を取り出す。
使い古された、よい杖だ。
それを徐にエドワードの方へと向ける。
まさか?
「王家に仇なす堕落せし魂よ、ソードリオ・ハニュレオの名が下に贖罪の赦しを与える——[禁呪・隷属]!」
「んな、父上——ぎゃああああああああ!」
ほ、本当に使ったー!?
自分の息子に! 禁術を! 使ったーーー!?
「ヒューバート様、あれはまさか」
「う、うん、王家にのみ許されている禁術。[隷属]魔法」
駆け寄ってきたレナに頷く。
これはファンタジーハーレムものとかでよく見る『奴隷』を作り出す魔法。
しかしこの世界では魂を拘束して隷属化する『呪い』の類に部類されるため、使用者にも反動がある。
俺たちの世界に存在魔法属性は全部で八つ。
地、水、火、風、雷、氷、光、闇。
聖殿から認められていないものに無属性と聖女の聖属性がある。
そして禁術は、世間一般に秘匿されている——呪属性。
使用には対価が必要であり、使い方を誤れば使用者だけでなく使用者の周辺にも被害が出る危険な属性なのだ。
そのため、使用は王家のみと定められており、ルオートニス王家は対価に自分の持つ記憶を差し出す。
実際に見るのは初めてだが、ハニュレオはこの禁術を隠していないのだろうか?
「ち、父上……なぜ、なぜ……!」
エドワードの額から首に鎖の紋様が刻まれる。
一目で隷属化しているとわかる姿だ。
こんな姿になるんだ……。
「エドワード・ハニュレオ、今この時を以てハニュレオ王家より汝を除外する! ハニュレオの名を名乗ることは許さぬ!」
「なっ、なっ!」
「そしてヒューバート・ルオートニス王子の小間使いとして仕えよ! ヒューバート・ルオートニス王子を主人とし、主人が命を落とした時、共にその生を終わらせること!」
「っ~~~~!? ち、父上! 冗談はおやめください!?」
「主人に逆らいし時は、その隷属紋により激痛の罰が下るものとする!」
「父上えええぇ!」
うん、完全に俺に丸投げする気だ。
いらねー。
俺にはレナがいるから、エドワードが巨乳の色っぽいお姉さんだとしてもいらねぇー。
確かにエドワードもイケメンの部類なんだろうけど、レナにジェラルドにランディにラウトにシズフさんにデュレオ。
国に帰ればディアスにナルミさん。
破格の観賞用美形揃い踏みなので、エドワードはなんていうか、並ぶと平凡というか。
俺並みの平凡に見えるんだよ。
どんまい、って感じの。
うるせー! 誰がどんまいだ!
「エド……」
「スヴィアよ、其方はエドワードに近づくのを禁止する」
「っ!」
「其方はエドワードを甘やかす。それに、いずれルオートニスに帰るヒューバート殿下に、ハニュレオの聖女であるお前を一緒について行かせるわけにはいかぬ」
「……っ」
若干共依存みたいだったしなぁ、エドワードとスヴィア嬢は。
俺もそれがいいと思うよ。
つらいかもしれないけど、スヴィア嬢にはこの国の石晶巨兵と国土回復に努めてもらいたいしな。
「というか、完全に俺がエドワードの面倒を見る流れになっている」
「ヒューバート様、嫌なことは嫌ってはっきり言った方がいいと思いますっ!」
「あれは断りづらいですね……」
「でもいらないよねぇ~」
俺の婚約者と幼馴染たちも反対なんだってさ!
「あんな魔法もあるのだな」
「えー、王子様なら隷属化した人間の扱いとかも学んでおいた方がいいんじゃないのぉ? できることとかできないこととか、知っておいた方がいいよ。……口封じする時は俺が食べてあげる」
「そうか、機密情報のあるところとかに連れて行けないもんな」
「あれ? 食べてあげる、のところはスルー? 意外と大物だねぇ?」
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