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ハニュレオ編

ひとまず落着?(2)

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「ああ、なるほど。なんとなくこの中で一番美味しそうだけど不味そうだな、と思ったのはマクナッドとフェノの血を引いてるからかぁ。げっ、ってことはあの二人の子孫、結婚してたの? はぁー、通りでなんかなんとも言えない感じがするわけだ」
「誰?」

 また千年前の新キャラ?
 そろそろ俺、覚えられなくなりそうなんですけど?
 でも俺の祖先?
 有名人なんだろうか?

「レネエルの為政者と中立財閥のトップだね。マクナッドは若いのに共和主義連合国軍でシズフの乗ってたふねの艦長やってたよ。戦後はレネエルの首相にまで上り詰めて、戦後処理を行っていたはず。あの子本当に美味しそうだったんだ」
「へ、へぇ……」

 デュレオの感想がさぁ……。

「フェノは中立勢力、シヴォル財閥のトップだね。いくつかの支援機構で、世界のバランスを最後まで取り持とうとしていたの。ホンッッッット邪魔でしかなかった。フェノ本人もすごく不味そうだったし。普通女の子って美味しそうなんだけどね」
「へ、へぇ……」

 感想がさぁ……!

「あの艦の艦長か……」

 そしてラウトが思い切り顔を顰めてる。
 厄介だったんだな……。

「マクナッドとフェノの子孫だったのか」
「シズフさんはあんまり嫌そうじゃない……」
「同僚と同僚の身内だからな」
「そ、そうなんですね」
「……そうか、ヒューバートはマクナッドとフェノの子孫か……」
「?」

 なぜかシズフさんに頭を撫でられている俺。
 ディアスみたいに俺を可愛がってる?
 なぜ?
 顔の綺麗な人に撫でられるのは悪い気はしないので抵抗はしないけれども!

「ヒューバート王子」
「あ、はい!」

 忘れていたわけではないけれど、声をかけられてソードリオ王に向き直る。
 神妙な面持ちだったソードリオ王は、突然しゃがんで地面に手をついた。
 え!? 土下座!?

「陛下!?」
「な、なにをなさっておられるのですか!」
「ヒューバート王子、どうか馬鹿息子を貴公の側使えとしてこき使ってはいただけないだろうかっ」
「「は!?」」

 間抜けな聞き返しをしてしまったのは俺とエドワードだ。
 騎士たちに肩を掴まれ、頭は上がるが一国の王が俺のような若輩者に頭を下げるなんて!
 しかもこんな人がたくさんいるところで……!
 国の威信に関わるぞ!?

「どうせ儂は永くはない。マロヌがルオートニス王国の後ろ盾を約束されたならば、我が国は実質的にルオートニス王国の属国も同然」
「い、いや、ですから!」
「わかっておる。我が国と貴国は対等である、と。だがここまで施される側であり、マロヌの後ろ盾となってもらう以上、それは我が国に次期女王を育てる力がないと示しているも同然……!」
「あ……」

 しまった、そうなってしまうのか。
 やはり内政干渉になる、よなぁ。
 今からでも撤回すべきか?

「あの、それでしたら断ってください。ハニュレオとは対等に交友関係を築いて行きたいのです」
「いいや。情けない話、マロヌを庇護するにはもう、儂の力は及ばぬ。有力貴族たちは皆、エドワードについておった。今しがたそれらも、死んでしまったが」
「!」

 デュレオが食い殺した五人を、ソードリオ王が振り返る。
 あ、あの五人、そんな有力貴族だったの!?
 殺しちゃったねぇえええ!?

「混乱は避けられん。しかし、儂にはもう御するだけの体力がない」
「……ソードリオ王……」
「くっ! ち、父上、それならばおれを王に——!」
「愚息はあの通り話にならん」
「そうですねぇ」
「なんだと!?」

 申し訳ないぐらい使い物にならなさそう。

「あんなに虐めてあげたのに、まだ威勢がいいねぇ?」
「ひ、ひぃ!」

 でもデュレオがにっこり微笑みかけると、すーぐ大人しくなるな。
 そういうとこだぞ。

「迷惑になるのはわかっておる。しかし、もはや我が国は、貴国に頼らねばやっていけないようだ……」
「…………」

 これは俺がオズ——デュレオをこっちに引き摺り込んだのも大きい。
 とはいえ、今日の出来事は遅かれ早かれ起きていたのだろう。
 そこにたまたま、俺たちが居合わせただけ。
 もしも俺たちが居合わせないまま、今日のことが起こっていたら?
 ソードリオ王とマロヌ姫、エドワードは死んでいたと思うし、ハニュレオは大混乱に陥っていただろうな。
 とはいえ、オズという後ろ盾を失った姫を安全に育てるには、敵味方の判別から始めなければならない。
 ソードリオ王には、その時間が残されていないのだ。
 前世の世界ならばいざ知らず、この世界の今のような時代に77歳は超高齢。
 今この場で息を引き取ったって不思議じゃない。
 ソードリオ王が元気なのは、マロヌ姫がいるからだと思う。
 だが、いくらなんでもマロヌ姫が成人するまでは……。
 うーん、現代の医術がこの時代にあれば……!

「あ、あるな?」
「む?」

 パチン、と思わず指を鳴らしてしまった。
 そうだわ、あるわ。
 あるっつーか、いるわ。

「ラウト、ギア・フィーネ同士なら通信開けるよな?」
「は? ああ?」
「うちの医神を呼び出そう」
「は? 医神……?」
「はい。我が国の守護神には医学の神もいるのですよ。シズフさんは一度ルオートニスに連れ帰って、医神に診せるつもりでしたが……どうせなら来てもらいましょう」

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