終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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ハニュレオ編

マロヌ姫

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 恨んでても不思議ではないのに。
 ラウトも理解できない、とばかりに首を傾げる。

「デュレオの歌を聞けばわかる」
「貴様……説明が面倒になったな?」
「…………」

 思い切り目を逸らしたー!
 説明が面倒になったんだー!
 なんなら顔がうつらうつらしてる。
 ね、寝る気だー!

「オズ、オズ……っオズ、死んでしまったのですか……?」
「マロヌ姫」

 わあ、顔がぐしゅぐしゅ。
 ビシャ泣きしながら歩み寄ってきたマロヌ姫が心配しているのは、オズことデュレオ。
 あんなグロ映像見せつけられても、裏切られていると言われても、まだデュレオのことを慕ってるのか。
 健気で可哀想すぎる。

「……。マロヌ姫というのか」
「ひっ、あ、は、はひ……」

 俺が答えようとしたら、右肩を掴まれた。
 シズフさんの顔、近。
 美し過ぎて見惚れる。
 じゃなくて、ここは任せろってこと?
 大丈夫なのか?
 と、思ったら、ちゃんとしゃがんで目線を合わせ、片膝を立てて跪いている。
 いやー、イケメンがやると本当にかっこいいですねー。

「ラウト・セレンテージ、デュレオと話せるようにできるか?」
「できなくはないが……完全に解放はしないぞ」
「ひとまずはそれでいい」

 ラウトが視線で「いいか?」と聞いてくるのでもちろん頷いた。
 シズフさんになにか策があるのなら、任せてみるよ。
 そんなわけでラウトがデュレオの結晶化を半分ほど解く。
 と言っても、顔と胸の部分まで消して、手脚部分の結晶は残したけど。

「反則じゃない? こんなの人間が操っていい力じゃないよ。魔力とは違う、別の異質な力。なにこれ」
「神力というやつだ。俺の権能」
「はあ? 神力って——神様にでもなっちゃったわけぇ?」
「そうらしいな」
「……は? 正気?」

 さすがのデュレオも、ラウトの結晶病には抵抗が利かないらしい。
 それを確認してから、シズフさんの方を見る。

「マロヌ姫、アレは人ではない。それでもまだ側に置きたいというのだろうか」

 聞いたこともないような優しい口調と声。
 子どもに優しい。
 顔もいいし性格も優しい、薄幸虚弱の美青年……ヤバくない?
 虚弱はなんか違うか?

「は、はい。オズといっしょにいたいです」
「アレは人を喰わねばならぬさがを持つ。あなたにアレの餌が用意できるのか?」
「……え、えさ……? ……えさ……って」
「人間だ」

 さらに続けてシズフさんは「食わずとも飢えて死ぬことはないけれど」とつけ加える。
 当然、飢え死には試したことがあるんだろう。
 その上で、人の血肉が必要、ということなのだろうか。
 精神的に飢えるってこと?

「特に人間の心臓の血を、アレは好む。あなたにアレが喰う命の責任を取れるのだろうか?」
「……え、えっと、えっと……」
「俺の言葉の意味がわからないのであれば、今のあなたにアレは手に負えない。手放すことを薦める」
「ふん」

 完全に犬猫の扱いのような言い方。
 けど、食糧があまりにも物騒すぎて誰もなにも言えない。
 ハニュレオの騎士もエドワードの兵も、顔が青い。
 デュレオの捕食シーンを見て、それでも姫がデュレオを側に置きたいと言う意味がわからないのだろう。
 無理もない。
 正直うちの国にもいてほしくはない。
 けれど野放しにもできないしなぁ。

「お、おとうさまっ」
「ならん。人を喰うとわかったものを、お前の側には置けぬ」
「っ! で、でも!」
「もし、それでも側に置きたいと願うなら——」
「は、はい!」
「立派な淑女になることだ。誰もが認める女王に、なればいい」
「…………え?」

 え?
 俺たちも目を見開いてシズフさんを見た。
 どういうこと?

「そして誰にも文句を言わせないようになればいい。あなたにはカネス・ヴィナティキ帝国最後の女帝、ラミレス・イオ・カネス・ヴィナティキの血が流れているのだから」
「……? かねす、びぃ……?」
「え? あれ? 本当だ。今気づいた」

 待て待て待て。
 待ってほしい。
 今度は俺でもわからないことを言い出したぞ。
 そしてシズフさんだけでなく、デュレオも参戦してきた。

「カネス・ヴィナティキ帝国って、元々ハニュレオがあった土地に千年前あった国、だよね? ハニュレオ王家はその末裔じゃないの?」
「いや、直系ではないな。王と王子にカネス・ヴィナティキ皇帝家の血は感じられない」

 俺の質問にシズフさんが首を横に振る。
 サラッと言ってるけど、この人血筋とかわかるの?
 は? わかるもんなの?
 思わずラウトを見てしまう。

「……シズフ・エフォロン、貴様、血筋とかわかるのか? どうやって?」
「デュレオの能力だろうな」
「そうだね、俺の能力だね。まあ俺は血を飲めば、相手の遺伝子レベルで血縁とかそうじゃないとか色々わかるけどー」

 便利だけど怖すぎんなぁ!

「その姫の母親が皇帝家の直系だったということか? 平民上がりだったと聞いた気がするが」
「千年間も同じ支配者が君臨し続ける国なんて存在しないでしょ」
「まあ、それもそうかもしれないが」

 ラウトの困惑に、デュレオがあっさり言ってのける。
 ……でもあれ?
 前世の日本の、天皇家は千年以上続いてるって、学校で習ったような……?
 え? そう考えると前世の日本すげーな!?
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