終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
181 / 385
ハニュレオ編

人外バトル(1)

しおりを挟む
 
「ラウトっ」
「し、知らん! 死んだ人間が生き返るなんて……!」

 ラウトも知らない、あれはなんだ?
 振り返って見れば——くっ、なんという美丈夫!
 体躯そのものはほとんど変化はなく、黒い燕尾服と黒い外ハネの長髪が気品の中に大胆さを醸し出している。
 そろそろ慣れてきたと思っていた千年前の人間の造形の美しさ。
 彼もまた例に漏れず、大変に美しい。
 あと、声ヤベェ……!
 ディアスの声も、シズフさんの声もヤベェけど、二人とはまた違った、妖艶な声。
 引き込まれて、つい耳が聴こうとしてしまうような、そんな声。

「というか、あの男は——」
「知ってるのか?」
「知ってるもなにも……千年前の世界であの男の名を知らぬ者はいないぞ! 本当にどういうことなんだ!?」
「え、えっ」
「誰なの~?」

 もったいつけないで教えてほしい!
 と、思っていたが、轟音がして視線をシズフさんとオズの方に戻す。
 目にも止まらぬ速さでシズフさんがオズの目の前に移動して、腹パンかましたのだ。
 お待ちを。
 腹パンで聞こえていい音じゃありませんよ。

「ごっふ……!」

 か、貫通?
 腹からシズフさんの腕が貫通しておる?
 ひ、ひぃぃぃー!
 本日何度目かのグロ映像すぎるー!

「こっの!」
「俺を返り討ちにするんじゃなかったのか?」
「っ」

 腹パン貫通で動けなくなったオズの髪を掴み、そのまま顔面に向かって膝蹴り。
 容赦がなさすぎて悲鳴上げちゃった。
 しかも膝蹴りを五回も繰り返し、ここから見えないのがありがたいほど地面に血と髪とあとなんか肉っぽいのが散らばったあと、腹から腕を抜いて両手で頭を掴むとそのまま地面に叩きつける。
 よ、容赦が! なさすぎる!
 そこからの踏み抜き!
 また地面が広範囲にひび割れた!

「……、……な、なあ、誰かシズフさんに身体強化魔法教えた?」

 振り返ってジェラルドとランディ、ラウトに聞いてみる。
 あまりにもシズフさんから
 でもそんなことあり得る?
 身体強化魔法を使わないと、あんなことにならないでしょ。
 石畳が半径六メートルは砕けてんだぞ?

「ぼくは教えてないよ~」
「じ、自分も」
「そもそもあいつ、ずっと寝てただろ。身体強化魔法を使う機会もなかったから、見て覚えることもしていないはずだ」
「……。……じゃ、あ……あれ……?」

 ラウトがシズフさんに魔法をコピーされたのは見ていた。
 機体同士の戦闘中だったし、神回避の方が印象強すぎて忘れてたけど、そう、あの人魔法を見ただけで完コピしやがるんだよ。
 だから身体強化魔法を、見て覚えたんじゃないかとも思ったけど……そうでもない。
 だとするならば、あの身体強化魔法ばりの破壊力が元々の身体能力ということになる。
 そんなことあるぅ?
 目の前の現実が、受け入れられないんですけど!?

「「「「………………」」」」

 思わず押し黙ってしまう。
 俺だけでなく、ジェラルドとランディとラウトも。
 ラウトも驚いてるのは、多分生身の戦闘を初めて見たからだ。
 千年前からの因縁はあるだろうが、それは“ギア・フィーネの登録者同士”のもの。
 機体同士の戦闘が主流で、白兵戦はしたことなかったんだと思う。
 二度目の死亡をしたはずのオズが、また立ち上がって頭を再生させる。
 どちらも、異常だ。
 あまりにも異様な光景。
 本当に、あそこだけ異質すぎる!

「オズ……」
「どうなっておるのだ」

 騎士たちに囲まれ、守られているソードリオ王とマロヌ姫。
 俺たちよりも関係が深いマロヌ姫たちには、オズがあんなトンデモ生物だとは到底思わなかっただろう分ショックもでかいだろうな。
 視線を戻すととても入り込めない超次元肉弾戦バトル。
 シズフさんが蹴りで左腕を肋骨ごと折ると、着地した途端左腕がぐにゃんと垂れ下がる。
 しかしそれを笑みすら浮かべて再生させるオズ。
 体が自由自在すぎるだろ。
 攻撃力でゴリ押しするシズフさんの労力が、徒労に終わるのを数回繰り返し見た時いい加減苛立ってきたオズが上級魔法を展開した。
 [ファイヤランス]。火の槍だ。
 あれだけの数を一気に展開するなんて……。

「いい加減ウザいんだよ! 死ね! シズフ! 赤き炎よ、我が敵を穿ち火葬せよ! [ファイヤランス]!」

 そう言って発動させた炎の槍が、シズフさんに向かって飛んでいく。
 俺たちとしては「やっちまったなぁ」という感情しか浮かばない。

「は?」

 目を見開くオズ。
 シズフさんの背後から湧き出る炎の槍。
 オズとまったく同数。

「あの男、本物の化け物か……!」

 神格化して人間辞めてるラウトでさえ、シズフさんの初見コピー魔法をそう評する。
 無理もない。
 ラウトが五号機に乗ってる時使った魔法も、オズが今使った[ファイヤランス]も、上級魔法だ。
 それを初見で、魔法陣を見ただけでコピーする。
 魔法の基礎すら学んでない、杖すら持たない人間が。
 どれほどの使い手でも、ジェラルドやラウトでさえも、呪文は必要不可欠だというのに無詠唱で。
 規格外だ。
 なんなんだ、あの人は。人か?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!

ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生! せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい! 魔法アリなら色んなことが出来るよね。 無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。 第一巻 2022年9月発売 第二巻 2023年4月下旬発売 第三巻 2023年9月下旬発売 ※※※スピンオフ作品始めました※※※ おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

処理中です...