166 / 385
ハニュレオ編
お届け物でーす
しおりを挟む五号機が普段の純白の騎士姿に戻る。
喉と目頭が熱い。
……なんなんだよ、もう、こいつら。
話し合いで解決、できるんじゃねーかよ。
「ヒューバート様」
「ああ」
レナが俺の肩を叩く。
そうだな、このままだとあの二人、沈黙したままこれ以上話を進めなさそうだもんな。
「じゃあ、シズフさん。これからどうしますか?」
『……』
「もし行く宛がないなら、しばらくうちの国に来ませんか? えーと、ディアスとラウトは今、ルオートニスを拠点にしているんです。あと、ナルミさん、って人がいて」
『ナルミ? 鳴海紫蘭か?』
あ、やっぱり知り合いなのか。
そうだよな、ナルミさんは二号機の登録者の兄の婚約者、のはず。
あら? じゃあシズフさんにとってナルミさんって義理のお姉さん?
……なぜだろう、シズフさんに同情してしまう。
「そ、そうです。今はヒューマノイドという可動式人型量子演算処理システムを利用して、人格をダウンロードして現代の情報収集を行っています」
『ああ、らしいな』
らしいって言われてる~。
『——いいだろう、ナルミがいるのならお前に同行しよう』
「わかりました。とりあえず俺の部下たちと合流しましょう。ラウト、大丈夫か?」
一応、戦う意思はなくなったみたいだけど、一緒にいるのが嫌、とか言われたらとりあえず二手に分かれるしか。
『特に問題はない。合流するならここのポイントに向かえ』
「あ、ああ、ありがとう」
360度モニターの一箇所に赤い点が出た。
すごい、こんなこともできるのか、ギア・フィーネ。
「ジェラルド、ランディたちと合流する。スヴィア嬢は問題ないか?」
『うん、困惑したままだけど、大丈夫。ついていくよ~』
「よし、じゃあ行こう」
スヴィア嬢はまだ怯えているようだが、俺とラウトとジェラルド、新たに二号機——シズフさんも共に行動することになった。
まあ、スヴィア嬢が怯えてるのは、二号機と五号機の戦いぶりか怖かったからみたいだけど。
『そもそも反乱を企てておきながら、戦闘が怖いとは愚かすぎる』
「まあ、それはちょっと俺も思うけれども……」
『ヒューバートは操縦に慣れていないのか?』
秒でバレましたね。
その通りです。
「石晶巨兵と違って、サポートAIとかがなくて、難しすぎるんですよ……」
『難しい……?』
『訓練も受けていなければそんなものだ。
特に貴様は強化ノーティスなのだろう? 絶対に一緒にするなよ』
そうですね、さっきのあの大量の火球をサラッと全部避けていたこの人ととてもじゃないけど一緒にしないでほしい……。
「あそこか」
村——キャンプ場みたいなのがある。
トニスのおっさんから事前に聞いていた、エドワード・ハニュレオの反乱軍の拠点の一つ。
近くに行くと光炎がしゃがんで待機していた。
その隣につけて、ひとまずランディとトニスのおっさんと合流。
「スヴィア! スヴィアはどこだ!」
「スヴィア嬢、大丈夫か? 誰か呼んでるけど……」
「エド! あ、ありがとう」
「どういたしまして~」
手を差し出して、スヴィア嬢をエスコートする様に地上に下ろしてやるジェラルド、マジ紳士。
しかも顔がいいからな。
スヴィア嬢も少しまんざらでもなさそう。
けれど、地上に降りると少しふらつきながら駆け寄ってくる男のもとへと近づく。
うわぁ、金髪紫目のいかにもな王子様っぽいイケメンだぁ。
俺と歳も近そうだし、多分こいつが——。
「エド!」
「スヴィア、大丈夫か!? こいつらはいったい……」
「あ、こ、こいつらは……アタシが結界を張り直しに行ってたら、結晶化した大地から来たのよ。前に見つけた大穴の中の人間を助けるのに、協力してもらったんだけど……アタシ間違ってたの……! 化け物を蘇らせちゃったのよ!」
「なん、だと?」
い、言い方ぁ……!
さっきのを見たらまあ気持ちはわかりますけれども!
「ヒューバート様、ご無事のお戻りお待ち申し上げておりました。……これからいかがなさいますか?」
「うーん、スヴィア嬢を無事送り届けたし、このまま王都に向かおう」
「おや、目の前にお尋ね者の頭がいるんですし、手土産に生捕りにしてはいかがですか?」
「やめろよ、トニスのおっさん。こっちはことを構える気も、交渉する気もないんだ。行こう」
ランディはすぐに俺の前に跪く。
キャンプ地の人間たちが、瞬く間に武器を持って駆け寄ってきた。
持ってるのは剣や杖以外にも弓矢や槍。
ハニュレオの文明度もルオートニスやミドレ公国と大差ないようだ。
これなら一斉攻撃されても、俺の防御魔法で防げる。
相手をする必要はないだろう。
「待て!」
「なんだ? スヴィア嬢は無傷で送り届けただろう」
「貴様たちは何者だ! スヴィアに何をした!?」
お、さては聖殿の偉いヤツらみたいにあんまり話を聞けないタイプだなぁ?
スヴィア嬢を抱き締めて、キャンキャンと吠えてくるのはあのいかにも王子っぽい容姿の少年。
見た感じこいつがエドワード・ハニュレオ王子なんだろう。
周りの男たちも、スヴィア嬢がしがみつく少年を守るように固まっている。
ただ、その配置は訓練されている感じではないけど。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる