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ハニュレオ編
問答
しおりを挟む「ぐっ! な、なんなの、お前! ワタシはお前のことを助けたのよ! 離しなさいよ! 助けたのはワタシなんだから、エドの部下になってエドを助けなさいよ!」
「…………」
「ちょっと、聞いてるの!? こんな強そうな遺物があるんだから、お前戦えるんでしょう!? エドの力になってよ!」
「…………」
なるほど、スヴィアの目的はギア・フィーネと登録者。
多分知識はないのだろうけど、コレが兵器で、戦うためのモノだということはわかっていたのか。
だから助けた恩を売って、利用しようって?
あ、悪質~~~~!
モロに見返り目的で人助けする聖女って、ええぇ~。
い、いや、俺はレナの聖女ぶりに慣れているから、違和感バリッバリだが……聖女だって人間だ。
『聖女』という称号を与えられただけの、ただの人間の女性。
だから『救国聖女は浮気王子に捨てられる~私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした~』では、マルティアは聖殿の命令に従い『ヒューバート』を籠絡したのだ。
なにもおかしなことはない。
彼女、スヴィアもエドワードのため、か。
まあ、見てて面白いものではないけど。
「待ってくれ! えっと、二号機の登録者! 確か——シズフさん!」
「……」
ぴくり、と肩が動く。
ヘルメットで表情がよくわからないけど、反応はしてくれた?
「俺はヒューバート・ルオートニス! 現在の四号機イノセント・ゼロの登録者だ。頼む、話を聞いてほしい!」
「あ、わたしはレナ・ヘムズリーと申します!」
まずは友好的な関係を築こう。
……上にあなたの宿敵、五号機がいますとはとりあえず伏せて置いて。
「あなたが眠っていた間のことを、たくさん説明しないといけません。お願いですからその女性を放してください。我々は敵ではありません」
「…………」
スヴィアの首に回されていた腕が外れる。
けれど、手首を捻り上げてそのままイノセント・ゼロの手のひらの上にうつ伏せで押しつけた。
す、素早……。
早業すぎて一瞬スヴィアが解放されたのかと思った。
全然そんなことなかった。
あと女の子相手にもマジで容赦ねぇなこの人!?
「いいだろう。話せ」
「! あ、はい! あのですね、長くなるんですが——」
イ…………イケボーーーーーー!
なに今の簡素かつ程よい耳心地の安心感ある超イケボ!?
津田○ジローさんかよ!?
ヤバい、あのヘルメットの下、さっき見た感じすでにイケメンだった。
ディアス並みの顔面宝具と声帯宝具の予感しかしない。
これは俺の顔面が崩壊するおそれがある。
待って待って?
三号機の登録者もやばかったじゃん、声。
しかも顔がジェラルドに似てるって三号機の登録者も顔面宝具と声帯宝具確実なのに、二号機もそう、って、なあ、待てよ、登録者って顔面と声帯がそれで食っていけるレベルじゃないとならない的な縛りでもあんの?
それなら俺はなんで選ばれたんですかねぇ!?
ギア・フィーネって俺と同じで面食い、声帯フェチなんだろうか?
俺だけ盛大に浮くからやめてほしい。
並ぶだけでいじめになるよ?
「——という感じで、俺はこの国と交渉に来ていて、あなたはそこの彼女が『助けたいから手伝って』と言うので、俺たちは救助を手伝いに来たんです」
「…………そうか」
あれ? 理解してもらえた?
普通千年も寝てたって聞いた時点で混乱しませんか?
それとも、意外に寝ていなかったのだろうか?
一回か二回起きてた、的な?
「それで……お前は俺になにを望む」
「だ、だから、エドの力になってよ……!」
「指示が抽象的すぎる。エドとやらはなにを目的にしている?」
「え、それは……この国の国王になるのよ! そしてハニュレオを統治するの!」
スヴィアの主張は“具体的”とも言い切れないような……。
俺はそう思うのだが、シズフさん?は、それを聞いてどうするつもりなのだろう。
あと、やっぱイケボだな!
「なぜ統治するために力を欲する? 武力である必要があるのか?」
「え、それは……だって、こっちの話も聞かずに追放したのよ!? 向こうが話をする意思がないんだったら、話を聞かせるために戦うしかないじゃない!?」
「ルオートニスという国の王子は、世界は終末に傾いているといっている。事実この場は結晶化した大地という水晶世界。世界全体がこうだとしたら、なぜ残された者たちで殺し合う? 手を取り合うの選択肢をなぜ選ばない?」
「だ、だから、それは……向こうが……」
「相手も武力でお前たちを傷つけたのか?」
「……そ、そこまでは……ないけど……」
だんだんとしおらしくなっていくスヴィア。
あまりにも勢いが失速したので、思わず黙って見守ってしまう。
「命は有限だ。なぜその命をわざわざ縮める? なぜ相手の命は奪っていいと思う? 殺されたなら、殺していいだろう。ただし、殺したならば殺される覚悟も必要だ。引き金を引くということは、そういうことだ」
「…………そ……それは、そんな……でも」
諭す言葉。
口調からディアスのようなのに、底冷えするような冷淡さを感じる。
ラウトとも違う冷たさ。
なんだろう、これ。
無機質……?
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