129 / 385
15歳編
レナと再会
しおりを挟むうんうん、本来こうあるべきだよな。
父上もこうして息子の俺が気軽に会いに行けるお立場ではなくなった。
名実ともに、この国のトップだ。
……いや、最初からトップなんだけど。
聖殿に権威のほとんどを奪われ、その皺寄せに奔走していたことを思うと本当に出世したもんだよな。
……いや、出世どころかトップなんだけど。
いつでも好きな時に会いに行けたことを思うと、少し寂しいけど……これでよかったと思う。
ちなみにその日は城で父上と母上に助言をもらいつつ、仕事を任せられそうな者をピックアップして面会の約束を取り付けるだけで一日終わってしまった。
で、翌日。
レナの到着が昼頃と連絡が来て、王都郊外まで迎えに行こうとしたらランディが会いに来た。
馬に乗って、颯爽と現れる姿は俺より王子様然としている。笑う。
俺の王子様としての風格のなさよ。
いや、俺だって馬には乗れますよ?
乗馬、学びましたよ?
でもさ、なんか馬鹿にされるんですよ、馬に。
言うことを聞いてくれないんですよ、馬に。
乗馬の先生には「ヒューバート殿下が優しすぎると、馬にバレているんですね」と笑顔でフォローされたけど、要は「馬鹿にされて舐められてる」である。
俺が強く出られないと、馬に見透かされているのだ。
だって!
馬に鞭って可哀想じゃん!?
それに比べてランディよ、なんてかっこよく乗りこなしているんだ。
16歳って、16歳って……こんなに大人びて足も長くてかっこいいものでしたっけぇ!!
だがしかし、ランディは俺がレナの護衛を任せた時、泣いて喜んでいたのは記憶に新しいはずなのだが、俺の姿を見た途端またびゃわっと泣き始める。
俺より年上のはずなんだけどなぁ。
「殿下~! お元気でしたか!? お側にいられないとこんなにも、こんなにも不安で不安で仕方ないとは!」
「それもまた人生の勉強だ、ランディ。お帰り。何事もなかったか?」
「はい!」
報告でも「何事もなし」と受けてはいるけれど、実際見るまではやはり不安。
ランディのあとから来た馬車が停車し、パティが手を差し出して中から降りてくる人物をエスコートする。
かっこよすぎか。
「ヒューバート様!」
「レナ、おかえり!」
「ただいま帰りました!」
ぁ。消し飛んだ。
なんでって、そりゃあレナの嬉しそうな笑顔が眩しすぎて、俺など消し炭になる他ないだろう。
あまりにも、太陽の如き眩しさ。
レナの眩い笑顔が尊すぎて、久しぶり——と言っても三ヶ月ほど……いや、長いよ三ヶ月——の俺は耐性が弱っていたのだろう。
粉微塵だよ。
「ヒューバート様!? え!? ど、どうなさったんですか!?」
「たかが三ヶ月、されど三ヶ月。幼さの残る顔立ちがまるで別人のように大人びていて、しかし彼女の面影はしっかりと残っている。だが間違いなく最後に会った時よりも美しさが増しており、その輝きに消し炭になるのはもはや必然に等しい。可愛か美しい婚約者が笑いかけてくれるというのは、この貴族社会で奇跡に等しい。本当にこの神々しい少女が俺の婚約者なのかと未だに信じられないことがある。特に今」
「ヒュ、ヒューバート様……! も、もうぅっ!」
おい、誰だ今後ろで「なんだいつものヒューバート様の発作か」って言ったやつ。
その通りですが?
「ハヴェル、レナに午後の予定を……」
「かしこまりました。レナ様、ヒューバート様は現在起き上がれる状態ではなさそうですので、私からこのあとの予定を伝えさせていただきます。一時から三時までデュラハン様がいらっしゃるそうですので、研究塔でヒューバート様がご相談をされるとのこと。レナ様はいかがなさいますか? 旅の疲れは早々に癒していただいた方が、明日の責務に響かないと思いますが」
「デュラハンさんが来るのでしたら、わたしもご相談したいことがございます。同席してもよろしいでしょうか?」
「——とのことでございます、ヒューバート様」
「も、もちろんいいけど」
いかん、まだ腰が抜けて起き上がれない。
倒れたまま了承したけど、レナがデュラハンに相談事?
な、なんだろう?
俺には言えないようなこと……?
え? ふ、不安。
『救国聖女は浮気王子に捨てられる~私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした~』では、デュラハンこそがレナの運命の相手。
そんなデュラハンに、レナが直々に相談したいこと……?
「レナ様、その相談というのは、ヒューバート殿下には解決できない類のものなのですか?」
俺を気遣ってか、ランディがどストレートに聞いちゃった。
そして俺が今まさに思っていたことをクリティカルで言い当てるとか、ランディすげー。
でもそんな、シンプルには「はい」とか言われたら俺は泣くよ?
「あ、“歌い手”について詳しく教えていただこうと思って」
「歌い手?」
「ギア・フィーネに関係することのようなのですが、サルヴェイションには詳しく教えてもらえなかったんです。今聞いたらちゃんと教えてもらえるのではと思って、……ラウトが本当にルオートニスを滅ぼそうと襲ってくるのなら、わたしもわたしにできることで応援したいのです」
「レナ……」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる