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15歳編
一年後の世界(3)
しおりを挟むっていうか!
サルヴェイションは最初の登録者、6歳の女の子って言ってなかった!?
明らかに足とか手とか届かないよな!?
どうやって操縦させる気だったの!?
未知!
「今日はもう帰って寝るよ」
「「そうしてくださ~い」」
「うぐぅ」
二人に研究塔のことは任せて、今日は寮に帰ることにした。
三人の護衛騎士が塔の前で待っているので、そのうち一人に「今日は寮で寝ると伝えて」と城へ伝言を頼む。
最近城で仕事ばかりで、まったく学生生活エンジョイできてない!
デュラハンには「青春は一度だけなのだから、学院で友達を作れ」と言われてるのに!
父上と母上にも「手伝ってくれるのは嬉しいけど、学生の本分を忘れないように」って言われてるのに!
仕事が!
一区切りすら!
見えない!
「はぁ……最近レナにも会えてないし」
レナはレナで忙しいったらねぇのだ。
石晶巨兵の大地治癒の効果は、聖女の魔法があって初めて効果を発揮する。
聖女候補たちや、マルティアも効果がないわけではない。
しかしレナの時と、比べるべくもないのだ。
あまりにも効果に差があり、あれはもはや『レナ・ヘムズリーだから可能』という結論をまざまざ見せつけた、というか。
そんな感じでレナは今、ミドレ公国の方を重点的に治癒している。
一日中歌い続けて、レナの喉が心配だ。
「あ、そうだ。蜂蜜で飴を作ろう」
土地が増えたこともそうだが、リーンズ先輩は薬草の花で蜂も育てていた。
自然交配に蜂は必要不可欠。
あとシンプルに花の蜜を使った実験もしている。
薬草によって蜂蜜も効果が異なるらしい。
あの人本当植物が関わってることは手広くやるよな……。
でも、うん、蜂蜜で飴を作って送ってあげよう。
飴なら俺も手軽に摂れるし、いいと思う。
「ハァーーー」
溜息が止まらない。
まさかこれ、過労?
15歳で過労とか、これがブラック?
今日からはしっかり寝て身長伸ばそ。
「あ」
「! 殿下!」
護衛騎士がバシッと音を立てて、俺が顔を向けた方へ剣を振るう。
矢だ。矢が飛んできた。俺の顔面目がけて。
「性懲りもなく……!」
「学院の中も危なくなってしまったな。犯人を捕らえ次第、仲間の居所を吐かせろ」
「はっ!」
一人は城へ俺が寮で寝るのを伝えに行ってるし、もう一人が弓矢を放った犯人を捕らえに行ったので側にいる騎士は一人。
先程俺の命を狙ってきたのは、反王家派。
というか、最近反王家派は二つに分かれてるっぽい。
その辺はまだまだ調査中なのだが、俺があまりにもあちこちに手を広げてしまった結果、不利益を被ってしまった者たちの不満の受け皿のようだ。
そういう者たちの不満が噴出しないように、新たな仕事や嗜好品の種類を増やすなどしているのだが、思考が凝り固まってる感じで聞く耳を持ってくれない。
アレだ、前世で「陰謀ダー!」って話を大好きな人たちみたいな感じ。
ああいう人種は、一度決めつけたら簡単には元に戻らない。
身内の話も聞かなくなる——洗脳状態。
そんな状態なので彼らの話を聞くとだいたい「王族が悪い」「王族が滅びれば元に戻る」の一点張りで、話にならないそうだ。
もう一方の反王家派は狡猾で、レナを亡き者にし、自分の娘を正妃——俺の妻に据えようとしている。
レナがミドレに行っているのはミドレの大地の治療もあるけど、俺の中ではルオートニス国内よりも安全だと判断したから。
もちろん、側室のお誘いは全部お断りしているけれど。
ただ、反王家派の、そういう自分の娘を側室にしようとしている貴族の中にも、俺に怪我をさせることによって『聖女でありながら婚約者である王太子の側にいなかったから、王太子が怪我をした』なんて言いがかりをつけてレナを婚約者から引き摺り下ろそうという勢力もいるらしい。
なんかもう、とにかく自分の思い通りにならないとなにをしてもいいと思っている層がいるようだ。
「殿下!」
「今宵はこちらでお休みとのことで、お迎えにあがりました」
「よろしく頼むよ、フューイ」
「あ! ヒューバート様!」
「ん? ケニー?」
フューイは寮限定の護衛騎士。
寝ずの番担当だ。
で、護衛騎士が引き継ぎをおこなっている間、平民の同級生たちが駆け寄ってきた。
本来なら俺と会話する身分ではないが、俺が入学の時に“挨拶”をスルーしたので普通に話しかけてくれる。
ケニー以外はガルバ、ロイ、トニィ。
「で、ヒューバート様、あの、差し出がましいようですが、どうか仕事を我々にもお命じください!」
「へ?」
「ヒューバート様はお一人でなんでもかんでもやりすぎです! 我々平民では不安だとおっしゃるのなら、お貴族様に仕事を振り分けてください!」
「我々はヒューバート様に恩がございます。少しでもお返しする機会をお与えください!」
「……お前たち……」
今更ながらその通り。
そのための貴族。
そのための学院。
彼らに言われなければ、全部自分一人で背負い込んでいた。
このまま自分で自分を追い詰めるのではなく、彼らの能力を信じて任せることも——きっと上に立つ者には必要なんだろう。
「わかった。ありがとう。誰にどの仕事を振り分けるか、明日考えておこう」
「「「はい!」」」
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