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14歳編

出立の朝(1)

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 父上にも許可をもらい、母上にも挨拶を終わらせ、学院に休学届けを出してから諸々準備して三日もかかって出発の日。

「では、マリヤ。レナの世話をどうかよろしく頼む」
「か、かしこまりました」
「パティは今後護衛に専念してくれ」
「お任せください!」

 はい、というわけでレオナルドの初恋の人、マリヤさんをレナの侍女に任命。
 パティは護衛騎士にジョブチェンジ。
 ジェラルドの姉だけあって、パティも実はスペック高いんだよな。弟の影に隠れてわかりづらいけど。
 ちなみに、なんでマリヤさんをレオナルド付きにさせなかったかといえば彼女が未婚の女性だからだ。
 あと、レオナルドは今学生寮にいる。
 彼女を侍女として男子寮に入れることはできない。
 レオナルドには「お前が卒業するまでに、彼女には顔の傷跡を上手く隠して生活できるようにする」と伝えてある。
 実家に引きこもっていた彼女を、ひとまず外で仕事ができるようにリハビリをするって感じだ。
 元々働くのは好きなようだし、レナが主人なら本来の仕事の楽しさを思い出せるだろう。
 パティならレナだけでなく、マリヤのことも守れるだろうしな~。
 あとは王家に恩を売って、メリリア妃の悪印象を払拭するのも狙いだ。
 レオナルドとしては、自分の母が植えつけた王家の印象をなんとかする方が大きかった。

「ぼくも一緒に行きたかったよ~!」
「仕方ないだろう? ジェラルドは石晶巨兵クォーツドールを国内に普及させる仕事を、父上に直接頼まれてるんだから」
「ぶぅ~~~!」
「俺からも頼むよ」
「…………ぶううううううっ!」

 すごく拗ねられてしまった。どうしよう。

「殿下のことは自分が必ずお守りするから問題ない!」
「ジェラルドの代わりに僕が一緒に行くし~」
「トニスおじさんも影として同行するしぃ~」
「ずるいずるいずるい~!」

 ランディとラウト、そしておっさんまでジェラルドを煽る。
 やめて差し上げろ~。

「ヒューバート」
「兄上! 本当に行ってしまうんですね……」
「母上! レオナルド! ああ、でもミドレはすぐ近くの国だから、比較的すぐに戻れるはずだ。技術指南をしたら帰ってくるよ。その時は手紙を出すから」
「うううっ……。い、いえ! レオナルドは魔法の勉強を頑張ります! 兄上がいない間、父上を立派に補佐できるように、もっと勉強します!」
「レオナルド……! 偉いぞ! レオナルドが頑張ってくれていると思えば、お兄ちゃん安心して出かけられる!」

 レオナルド~!
 なんて頑張り屋さんなんだ~!
 俺が抱き締めて撫で撫でするので、母上も微妙な顔になっている。
 母上からすれば義理の息子ってことになるしなぁ。

「ヒューバート……気をつけて行ってくるのですよ」
「はい。もちろん気をつけます」

 でも、まあ、サルヴェイションとトニスのおっさんが一緒だからぶっちゃけ怖いもんなしなんだよなぁ。
 問題はルオートニスが侵略してきたって思われないか、だ。
 先触れをランディに頼もう。

「最近とても忙しそうだったから、言うのが遅くなったのだけれど」
「へ? はい?」
「ヒューバートがすごく頑張って国を立て直してくれたから、国王陛下にもわたくしにもずいぶん余裕が生まれてね」
「はい?」

 なに? すごいもったいつけるね?
 どうしたの、母上。

「今、妊娠五ヶ月なの」
「はい。…………え? はい? 五ヶ……へぁ?」
「ヒューバートが15歳になる頃には、弟か妹が生まれているわ」
「は、はぁぁぁぁあーーーーーー!?」

 弟が妹!?
 は? 母ーーーー!?
 え? 妊娠ーーーー!?
 いや、落ち着け、俺が生まれたのが母上が18歳の時。
 在学中成人してすぐに結婚したから、今の母は32歳。
 問題なく産める歳。
 なんならあと十年現役でイケるだろう。
 じゃ、なくて!

「ほほほ本当ですか!? え、待ってください、大丈夫なんですか、こんなお外に出て! 温かいところで横になっていた方が……!」
「悪阻も終わったしもう大丈夫よ」
「っていうか五ヶ月も黙っているなんてひどくありませんか!」
「気づいたのが先月なんだもの。安定期に入ったし、そろそろ公表してもいいかと思ってね」
「あ……」

 そ、そうか。
 母上と父上の子ども、俺の弟が妹ってことは、正妃の子。
 恐る恐る隣のレオナルドを見ると、衝撃を受けた表情で固まっている。

「レ、レオナ……」
「な、なんという……そんな大事なことを、このように人の多い場所で! あの傲慢クソババァの耳に入ったらどうするのです! お継母様かあさま、無事に兄上の弟御か妹御がお産まれになるまで、大切な御身を安全な場所にお隠しになられた方がよいのではありませんか!? いえ、これを機にお継母様へ危害を加える恐れのあるアバズレババアを牢獄にぶち込んで、サクッと処刑してしまいましょう!」
「レオナルド、落ち着いて! お前どこでそんな言葉覚えてくんの!?」

 誰だうちのレオナルドにそんな言葉を教えるやつは!
 母上を心配してるというより、実母への憎しみが強すぎる!

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