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14歳編
魔王デュラハンと死者の村(3)
しおりを挟む「ではまずは俺の研究所を案内しよう。そこで色々話を聞きたい」
「はい!」
出だしがアレだったが、本来の目的はそっちだ。
よーし、色々聞いちゃうぞー!
石晶巨兵についてはジェラルドの方が詳しいところもあるけど、リーンズ先輩もギギがいるから色々頼ろう。
そうして連れて行かれたのは、入り口から見えた塔だ。
中は空洞で、魔法陣の集合体が中央を光の柱のように流れていた。
壁は本棚ばかりで、色々な実験器具の置かれたテーブルが階段を登った一画にある。
あとは椅子。
不思議な場所だ。
「先に晶魔獣使役の首輪について教えよう。トニスがこれを使ってお前を殺そうとしたらしいから、その詫びも兼ねて」
「トニス……?」
って、まさか。
振り返るとヘラ……と笑われた。
あのおっさんトニスっていうのか。
「リーンズ先輩」
「失礼。……かなり細かい命令の刻まれた魔道具ですね。これはすごい……! 結晶魔石を、複数繋ぎ合わせて複数の属性を同時に使用できるようにしてある。しかも魔力は自然魔力のみ! おおお、これはすごい、殿下が石晶巨兵と交換と言い出すだけあります!」
「本当だ……こんなに綿密な魔道具初めて見た!」
「ジェラルドくんが大興奮しそうですね」
「あとで借りて——あ、実際に晶魔獣にも乗せてもらってもいいかな?」
「構わん。だが首輪で使役しているだけで、晶魔獣であることに変わりはない。十分な注意が必要だぞ」
はーい、と頷きつつ、中身を細かく分解して説明を受ける。
ランディに頼んでジェラルドを呼んできてもらい、一緒に分解されながら刻まれた魔法陣の命令についても教えてもらった。
やべぇ、普通にハイクラス魔法。
結晶魔石の複数使用の時点で、うちの国にはない技術。
魔樹により役割を分断して、魔樹の樹液を使うことで総括しているのか。
「魔樹、有能すぎる」
「ですよねですよね! わたくしめ滾ってまいりました! これはもう、帰ったら樹液の方も色々研究しなければー! うははははははは!」
「これなら石晶巨兵にも応用できそう~」
「…………」
デュラハンがジェラルドをじっと見つめてる。
わかる。
ジェラルドの顔っていつまででも見ていたくなるよな、綺麗で。
「似ているが、近くで見ると別人だな」
「ほあ?」
「ジェラルドはデュラハンさんの知り合いに似てるんですっけ?」
「ああ、だがよく見れば違う人間だとわかる。見たところ乗っ取られてもいないようだしな」
「そ、そこんとことても詳しく聞きたいんですが」
なんなのそれ、怖い。
うちのジェラルドが乗っ取られてるかもしれないとか、なんの危険性!?
「あの、ジェラルドさんが乗っ取られている、というのは、なにに、ですか?」
レナも心配になったのか、俺の代わりに質問してくれた。
俺は別な意味ドキドキしちゃう。
だって漫画の中では、レナとデュラハンは恋人同士になるのだ。
アレは割とゆっくり同じ時間を過ごして心を通わせていく系の話だったけど、デュラハン現物ヤバすぎるぐらいイケメンでレナがドキドキしちゃったらどうしよう。
俺、まだガキだし、大人の色気とかないし、素直に全部負けてると思うし……レナ~!
「ジェラルドという子はギア・フィーネと接触しているか?」
「ギア・フィーネ? サルヴェイションと、ですか? いえ、あいつ乗ったことないですよ?」
「サルヴェイション以外のギア・フィーネは?」
「ないです。ギギの話では、他にもあるらしい、とは聞いてますけど……」
「では問題ないだろう。ギア・フィーネは登録者の性格が穏やかで戦いに向かないと、疑似人格を登録者の脳にダウンロードして乗っ取ってしまうんだ」
「「え」」
サルヴェイションを知っている俺とレナには信じがたいことを、さらっと言われた。
は? は!?
なにそれなにそれ、ぎ、擬似人格!?
ののののの乗っ取りぃ!?
「サルヴェイションはそんなこと一言も言ってなかったです!?」
「は? サルヴェイションと対話をしたような口振りだな?」
「対話っていうか、音声サポートみたいなのをやってもらってまして……?」
「は? 音声サポート? なんだその機能は。知らないぞ」
「え?」
もうみんなで大混乱だぞ、なんだこのカオス。
いや、っていうかさ!
「デュラハンはサルヴェイションのこともギア・フィーネのことも、詳しいんですか?」
「詳しいかどうかははっきり明言できない。あれはわからないことの方が多い」
あ、ハイ。
それはなんか、わかる。
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「————」
……実は、うっすら、そうなんじゃないかな、と、思うところは、あったけれども。
『え、えーーー! 一号機の登録者なんですかー!』
「俺より驚くんじゃないよ」
ギギの頭を掴む。
デュラハンがサルヴェイションの登録者。
もしかしてそうなんじゃないか、と思ってたけども。
だって似てるんだ、なんか、雰囲気が。
サルヴェイションの音声サポートの擬似人格ってやつに。
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