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14歳編
お披露目
しおりを挟む冬、ラウトが入学してくる睦月。
俺たちは無事に進級し、初等部三年生になりランディは初等部四年生になった。
リーンズ先輩も卒業し……卒業式は出なかったっぽいが……正式に王宮勤めの植物研究員になり、研究塔で研究に精を出して……あれ、あんまり変わってないな? まあいいか。
なにはともあれ、王太子、忙しすぎて目が回りそう。
『救国聖女は浮気王子に捨てられる~私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした~』のヒューバートは、どうやって浮気する時間を作ったのか?
俺にはわからない。
全然わからない……。
「兄上!」
「レオナルド、おはよう」
「今日からよろしくお願いします!」
「うん、頑張れよ」
忙しいけど、少しずつ情勢はいい方向に変わってきていると思う。
俺が入学した頃より中立派と王家派の数が増え、聖殿派はかなり数が減っている。
その割合、およそ王家派3:中立派4:聖殿派3。
その分悪さしてたやつらの精査で父上と母上は忙しくしておられる。
レオナルドがもう少し状況の理解ができるようになれば、俺としては父上と母上を助けてあげてほしい。
「兄上は次の休日どちらかへお出かけになると聞きましたが、どちらへ行かれるのですか?」
「南の国境だ。大型の晶魔獣が増えているらしい。討伐と、結界修復をするレナの護衛だな。……あと、聖殿の聖女も参加するというから、監視も兼ねて」
「さすがにレナお義姉様がいては霞みますものね」
「まぁなぁ」
後ろをついてくるランディもうんうん頷いている。
授業でも晶魔獣討伐が入ってくる三年生なのだが、公務で討伐に行くことになってる俺的にはなんか今更感というか……あ。
「そうだ、ランディ、今度の討伐、うちの学年とランディの学年の生徒を連れて行こう」
「はい! わかりました!」
「え! いや、なぜですか!」
疑問を投げてきたのはレオナルド。
はっ! そういえば最近ランディがイエスマンになってたから、理由を述べなくなっていたが普通の人からすると「なんでだよ!」って思うのか!
これはいかんな、ランディには側近らしく俺が間違えた時に訂正してもらえるようにしなければ!
破滅エンドのヒューバートにならないためにも、人の意見は聞くようにしなければ!
「ええと、三年生からは晶魔獣討伐の課外授業があるんだ。どうせなら国で行う討伐遠征に同行させた方が、生徒たちの安全性は高まるし、騎士たちの戦いぶりを間近で見学できて勉強にもなるだろう? 単位もそれで取れるようにすればいいし、今回は俺たちが秘密裏に進めていた計画のお披露目と実験も兼ねているんだ。サルヴェイションも一緒に行くから、万が一陸竜クラスが数体来ても大丈夫」
「……なるほど……。……計画とは?」
「それはまだ言えない。当日出発の時に見にこれたらおいで。歩いていくから、見えると思うよ」
「?」
そう、いくつかの素体の霊魂体化定着が完璧となった。
試運転も問題なし。
この二年で、三体に増えた、石晶巨兵の完成形。
それらが問題なく結晶化した大地を歩けるかどうか、確認するのだ。
危険ではあるが、レナが一緒なら結晶化した大地に入っても一時的に凌げると二年前に俺が立証したので今回もレナの協力のもと俺が結晶化した大地に完成形を操縦し——試験に臨む。
こればかりは他の誰にもやらせられない。
言い出しっぺは俺だからな。
「……怖いけど、なんかあんまり心配はしてないんだ」
「?」
「ヒューバート殿下……」
俺が言い出して、ジェラルドとリーンズ先輩に協力してもらいながらランディやレナ、パティにも支えてもらい出来上がったあの機体たち。
きっといい結果をもたらしてくれると思う。
石晶巨兵が完成すれば、きっと歴史が変わる。
人類は大地を取り戻せるはずだ。
そう、信じよう。
***
目まぐるしい忙しさから、あっという間に討伐日になった。
俺はサルヴェイションにレナと同乗。
聞いて! 最近足が鐙に届くようになったの!
……まあ、届くだけで踏み込むにはまだ身長が足りないというこの悲しみの事実。
つまりまだまだ俺はサルヴェイションを操縦することはできない——ということですね!
そんなわけで本日もサルヴェイションには自律機動をよろしくお願いしております。
城から騎士団を先頭に、大通りを歩き出す。
『ヒューバート殿下、こちらも問題なく起動しました』
「わかった、合流しよう」
『はっ!』
『了解~』
顔の脇にウインドウが開き、ランディとジェラルドの顔が映る。
この二年間の間にサルヴェイションとギギからノウハウを教わり、取りつけた通信機能!
本日も問題なく使えている。
なんか、いよいよロボットっぽい……はぁはぁ、ちょっと興奮するよな。
「さぁ、石晶巨兵——一号機光炎、二号機地尖! お披露目だ!」
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