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12歳編

魔力量測定

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 石晶巨兵クォーツドール計画は学院にいる間に完成系を作れたらいいな、程度だったが、父上に許可をいただいた研究塔は想像を絶するモノだった。
 これなら予想よりも早く、素体は仕上がるかもしれない。
 そんなワクワクに胸躍らせた入学式翌日は、魔力測定を行う。
 訓練場に入学した男女全員が出て、魔力量と属性、現在の実力を見る。
 貴族が大半なので、平民には些か不利なのだが、ルオートニス王立学院では必ず貴族と同じ人数の平民が入学するよう義務化されていた。
 なぜか?
 聖殿の人気取りでーす。
 驚くべきことに、この意味のわからない義務は聖殿が無理やりねじ込んだ規定。
 入学して、本当に努力した者は城に文官や武官などで召し上げられることもあるのでまったくの無駄とは言わないが……そのおかげで城の人員の質はだだ下がりしているのも事実。
 じゃあ優秀な貴族はどこへ、って思うだろう?
 もちろん聖殿である。
 つっても聖殿の神聖官とかになったところで町や村の小聖殿に派遣されるぐらいで、やることなんて特にない。
 つまり、ぐーたらしてるだけでご飯が食えるし、平民にチヤホヤされるのだ。
 いいご身分だよなぁ。
 そりゃ、みんな聖殿に就職したがるよなぁ。
 でもな、そうやって貴族が入ることで、聖殿はどんどん役職が増え、特に一番偉いはずの“聖殿長”が今や“聖殿新教皇”様である。
 カオス……!
 きっと今後も無駄に増えていくことだろう。
 いちいち覚えてらんねー。

「では、入学試験トップのヒューバート・ルオートニス様から」
「はーい」

 入学試験といっても座学の成績だからなー。
 魔力量はジェラルドの十分の一よ、俺。

「……!? 魔力量ランク、7……!」
「お、最後に測った時より一ランク上がった」
「わあ、よかったねぇ~!」

 と、喜んでくれるジェラルド。
 周囲が「7?」「え? 嘘、同い年だよな?」「座学だけじゃなく魔力量もトップなんじゃないか!?」と騒ついているが安心してください。
 俺は凡人です。

「ス、スゲェ、これが王族か……さすがヒューバート殿下!」
「きゃー! ヒューバート様素敵ー!」
「ヒューバート様、ハンカチお使いください!」
「あ、いらないです。別に汗かいてないので」

 だというのにこの媚びと胡麻擦りぶりよ。
 逆に申し訳なくなる。
 でもハンカチはマジでいらない。
 毒でも染み込ませてあったら困るからな。

「つ、次に、同率首位のジェラルド・ミラーくん」
「はーい」

 お前はぶっちぎりだろうなぁ。
 にこ、と微笑んでいると、案の定先生が測定器の針が一瞬で天井を突き抜けてビクビクしているのに腰を抜かした。
 まあ、12歳の子ども用測定器なら魔力量ランク10まで測れれば御の字だろう。
 残念ながらジェラルドは城の魔法騎士団の50まで測れる測定器を、天元突破した男だ。
 子ども用測定器が壊れなくてよかったね、と優しい微笑みを浮かべてしまう。
 なお、測定器は基本的に魔力量ランク1がMP1~10、ランク2がMP11~20、みたいな感じで測定できる。
 俺は7までいったので、今の魔力量は70くらいってこと。
 俺の十倍は余裕であるであろうジェラルドは、城の騎士団の測定器でも測定不可なのだ。

「先生、ジェラルドは生まれつき魔力量が多い体質ですよ。城の測定器が壊れかねないので、申し送りがあったはずですが?」
「え、あ、いや、その……!」
「……まあ、城の申し送りがあっても、公正を記すためにやらねばならないこともありますよね。ジェラルド、もういいんじゃないか」
「はあーい」

 俺の時にザワザワしていた同級生たちが、もはや口を開けたまま固まっている。
 どんまーい。

「やっぱりすごいですね、ジェラルドさん」
「レナと一緒に結晶病の治癒に行ってたから、元々多いものが順調にさらに増えたっぽいからなー」
「結晶病にはだいたい魔力量100ぐらい消費するみたいだから~」
「本当に……ジェラルドさんにはたくさんお世話になりました」

 四年の間にレナとジェラルドは、一日平均十人程度を治癒してきた。
 魔力量は空っぽになるまで使うと、容量が少しずつ増えていく。
 俺も絞り出すまで魔法を使いまくったけど、やっぱこの二人には敵わない。
 レナの場合は、体の成長とともに魔力量の増幅が凄まじいようだ。
 やはり『救国聖女は~』の主人公!
 レナは国の守護聖女だな。
 聖殿で抱えていた高齢聖女も、もう結界を維持する力がなくなったと聞く。
 おそらく近いうちに、新聖女制定が行われる。
 それにレナが選ばれるのは、間違いない。
 ざっくりとだが調べた結果、今の聖殿にレナのような実績のある聖女候補は一人もいないのだから。
 問題があるとすれば、漫画と違ってレナが城に住んでる点。
 聖殿でいじめられるのを阻止するため、王妃教育を盾に四年間ずっと城暮らししていたレナを、聖殿は聖女として認めるだろうか?
 ま! その時はこっちにも考えがある。
 ククククク、お前らが聖女認定しないなら、ルオートニス王家認定聖女にするまでよ……!
 クーっクククククク!

「あ、そろそろ女子が始まるみたいです。行ってきますね」
「うん、頑張れ、レナ」
「はい! 見ていてくださいね、ヒューバート様」
「うん♡」

 ちなみに、レナは魔力量ランク10いった。
 二度も天元突破魔力量測定器はご臨終になった。
 ……魔力量測定器は犠牲になったのだ——。
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