終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
24 / 385
12歳編

学院入学式(1)

しおりを挟む
 
「ヒューバート様、おはようございます!」
「おはよう、レナ。今日も可愛いね」
「あ、ありがとうございます……」

 照れ、と頬を染める。
 四年間毎日毎朝やっているのに、レナは未だに照れるのだからもーわー、可愛い!
 もはや世界はレナを世界遺産にして崇め奉るべきではなかろうか。
 今日も可愛い。毎日可愛い。
 レナを城に連れてきたのは大正解だ。
 毎日レナに会えて幸せすぎる。

「……ヒューバート様、声に出てます」
「あ、あれぇ?」

 気をつけてるんだけど、レナに対してだけ心の声が全部漏れるこれ、全然治らない。
 なーぜー!

「ヒューバート、レナ、おはよう」
「ジェラルド、おはよう」
「おはようございます、ジェラルドさん」

 今朝も早いな、ジェラルドは。
 ニコニコと迎えると、変な顔をされた。
 そしてこてん、と首を傾げる。

「二人とも、制服は? あと、今日から寮だよねぇ? なんでまだお城にいるの?」
「ああ、それはだなー」
「えっと、それはですね……」

 魔法研究のために、城の図書室に篭りがちのジェラルドもすでに制服を着て荷物を持っている。
 そして、俺とレナも当然制服を着て寮に向かわねばならない。
 なんなら昨日の夜、「早めに起きて出るように」と城の者にも言われている。
 だが俺もレナも普段着。
 そしてこんな時間までしっかりと寝た。
 実を言うと昨日の夜は夜更かししてしまったのだ。
 そう、夜のデートというやつ!
 まあ、年齢的なこともあり、俺とレナは清い仲のまま。
 チューすらしてない。
 でも、昨日ついにメイドや護衛の目を掻い潜り、城の庭で手を繋いだのだ!

「へへへ」
「え、えへへ」
「? なんだかよくわからないですけど、おれなら三人で一緒に行きましょうか」
「そ、そうだな!」
「そうですね! ランディさんもきっと待ってますよね!」

 えへへ、と笑い合う俺とレナ。
 学院に行ったら、もっと一緒にいる時間は増えることだろう。
 そしたら、ちゅ、ちゅ、ちゅ…………チューくらいは……!

「ヒューバート、入学の挨拶と立太子の挨拶、ちゃんと暗記してる?」
「……ジェラルドよ、思い出させるな。今から緊張で胃が痛む」
「ええ……なんかごめんね」



 ——ルオートニス貴族学院。

 王都中央区にある、貴族のみが通うことを許された共学校。
 十二歳から成人である十八歳までの貴族が通い、教養を高め、交流を行う場。
 また、婚約者がいない者はお見合いの場でもある。
 共学校ではあるが、男子寮、女子寮としっかり別れており、かつ成績によって上・中・下に部類される。
 そこに家柄は関係なく、過去王族であっても下級クラス行きになった者もいるという。
 今年から俺とレナ、そしてジェラルドが入学する。
 ランディは一つ上なので、今日から二年生。
 なんと昨年は上級クラスですべての学科で首席を取り、実家から手放しで祝福されたという。
「それもこれもすべて殿下のおかげです」と胸を張って感謝されたが、俺なんにもしてないんだよなぁ。
 ランディずっと頑張ってきたおかげだと思うんだよ。
 今も情報を流してもらうためにメリリア妃とは通じてもらっているが、この四年でだいぶ強かさを身につけて、最近は手玉に取っている模様。
 先日も「あの間抜けな女はレオナルド殿下に不正入手した問題集を与えていました」と軽口まで叩くようになっている。
 メリリア妃もランディの学院の成績を聞いて、暴言が極端に減ったとか。
 学院の成績ってすごいんだなぁ。
 メリリア妃といえば、レオナルド。
 結局四年間、色々試したが交流がほとんどできなかった。
 メリリア妃だけではなく、俺がレオナルドと仲良くしようとすると聖殿や聖殿派の貴族も妨害してくるのだ。
 なんだかなぁ、と思う。
 王家と聖殿の関係性もあまり変わり映えはしていないが、レナがジェラルドと魔力を借りれば現在の『聖女』であるフォリア様よりも聖女の魔法を使えることが発覚して以降、少しずつ立場が悪くはなっている。
 レナはまさしく『救国聖女は浮気王子に捨てられる~私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした~』の、主人公らしい力を身につけ始めているのだ。
 なにしろ最近は、ジェラルドの補助なしで聖女の魔法を用いて結晶病の治癒が可能になった。
 王妃教育もとても頑張ってくれていて、漫画のレナより品位があるように思う。

「そう、俺の婚約者マジ淑女の鑑。非の打ちどころのない美しさ。可愛いだけでなく最近は美しさにも磨きがかかり、これからもっと可憐に成長していくと思うと学院で悪い虫がつかないから心配で心配で心配で」
「大丈夫です! あたしが一緒に行くんですから!」
「はっ! パティ!? まさか俺はまた全部声に出ていたのか!?」
「出てましたよ」

 なぜだ……!
 頭を抱えて崩れ落ちそうになるが、ジェラルドが腕を抱えてくれたのでなんとか立ったままでいられた。
 でも王族としてほんとどうかと思うこの癖。

「それにしても、ヒューバートは相変わらず護衛騎士の一人もいないんだねぇ」
「騎士は全体的に人手不足だし、聖女候補の護衛の方が重要だからな」
「王族に護衛がつかないのもどうかとおもうんですけどー!」
「そうですね……」

 と、パティとレナが頬を膨らますのも仕方ない。
 でも俺はこの四年で結構鍛えたので大丈夫!
 幸い暗殺未遂と毒殺未遂が十回くらいしかない!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...