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8歳編
結晶化した大地とデュラハン
しおりを挟む「ランディ、これ出しておいてもらえるか?」
「はい! 手紙ですね! 婚約者殿へ、ですか!」
「うん。まだ一回も返事が来てないんだけどな」
ランディと話してから一週間。
別人のようにすっかり明るくなってしまったなぁ。
俺の生活自体はさほど変わりがなく、毎日のようにレナへ手紙を書いて送っているが返事はない。
なので最近はその日の出来事ではなく、レナの体調を気遣う内容に変更した。
多分聖殿の検閲に引っかかって没収され、レナの手元にまで届いていないのだろう。
父上と母上に許可をもらって聖殿にレナをお茶会に招待しても、音沙汰なし。
クッソが!
と、心の中で叫びつつ、会えないと会いたい気持ちが募るものだな、と空を見上げたり、まあ、まあ、そんな感じだ。
「ところで、そろそろジェラルドにも会いたいんだがランディ、ジェラルド呼んでも大丈夫か?」
「え! ……自分のために距離を置いてくださってたのですか」
「んー、おれも自分がまだできないのをカンタンにやられると悔しい!って思うのわかる。でもランディはおれより悔しくてたまんないのかなーって、思ったから」
「なんというお心遣い……! 感動で涙が止まりません!」
「泣き止んで?」
なんかラノベにこういう忠犬キャラいるよね、っていう感じのキャラになってしまった。
実際いると期待が重いな。
「あとレオナルドにも会いたいんだ。きょうだいなのに、全然会えないから」
「レオナルド様の方は難しいと思います。少なくとも自分が行っても門前払いでしょう」
「……やっぱりジェラルドに戻ってきてもらうか」
身分主義なメリリア妃は、ジェラルドのことも門前払いするだろう。
でもランディが行くよりはマシだと思うんだよな。
なぜならジェラルドは顔がいいので。
ランディのように怒鳴られたという話は聞かないし、メリリア妃付きの侍女にお菓子までもらって帰ってきたことがある。
侍女さんたち、ジェラルドはまだ8歳だよ……。
将来が恐ろしい。
「そういえばジェラルドのやつは今どこに?」
「魔法をじゅーてんてきに学んでもらってるんだ。特に結晶魔石について」
「結晶魔石について? なぜです?」
「“人間が魔法を使う”以外の使い道を探ってる」
魔道具は存在しているのだが、職人が少なくなっただけでなく結晶病で亡くなったり技術継承が途絶えて作り方がわからなくなっているものがほとんど。
現代の魔道具は、貴重品だ。
その上、使い方がわからないものまで増えている。
理由としては隣国セドルコ帝国との戦争の折に略奪されたり、魔道具の核である結晶魔石を取り出して戦うための杖にしてしまったから。
文明ってこうやって失われていくんだな、と背筋が寒くなった。
やっぱ戦争は絶対悪だわ。
人間は改めて魔石の使い方を、コツコツ探らねばならなくなった。
そして俺のような凡人ではなく、ジェラルドのような天才であればなにか思いつくのではないか——と俺は考えている。
「魔道具、ですか。今だとランプが一般的ですが……それ以外の魔道具を開発するということですか?」
「そう。主に聖女の負担を減らす役割のものが好ましいかなって」
「聖殿の力を削ぐため、ですね!」
「違う。おれがレナとの時間をかくほするためだ!」
なぜならレナに振られてしまうと、もれなく国ごと滅びるからである!
レナは聖殿と実家に過酷な待遇を強いられ、くたくたになって思考力も落ち、婚約破棄を受け入れてしまう。
そのあと国がどうなるか、考える力がなかったのだ。
だから隣国セドルコ帝国に向かうつもりが、知らぬ間に西に向かい、結晶化した大地でデュラハンと出会う。
デュラハン——ある意味俺の恋敵。
やつの存在についてももう少し調べたいところだな。
漫画ではレナを保護してからはゆっくり休息を取らせ、結晶化した大地で生きていく術を教えていた。
そしてそれは驚くべきことに……規格外の魔法による結晶化した大地の治癒。
デュラハンは結晶化した大地を、元の土の大地に戻す研究を行っていたのだ。
俺だけじゃない。
世界がもっとも渇望する技術。
魔法でそれを行えないか、試していた。
魔王と呼ばれ、晶魔獣のボスと言われていたが『救国聖女は~』では、デュラハンはただの不死の研究者。
不死の、って時点で“ただの”じゃ、ねーけど。
そんなデュラハンですら大地を元に戻すのに、大規模な魔法を数日使い続けなくてはいけなかった。
結晶魔石を使えば、人間にも同じことができないだろうか?
というか、デュラハンって何者なんだろう。
漫画ではそこまで描かれてなくて、気になってしょうがないからwebまで見に行ったのにweb版にも『不死の研究者』としか書いてなくて「いやいや、そーじゃねーだろー!」ってなりつつ最後の期待を書籍版の原作に求めたわけだけど!
それも手に入らなかったしなー。
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