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プロローグ
女性向けの異世界
しおりを挟む「お、更新キターーー♪」
悪役令嬢もの、令嬢もの、聖女もの。
女性向けジャンルはここ最近、これらに傾きがある。
そう、女性向け。
俺、香田陽夢浪——母親が芸能人好きで名付けられたキラキラネームだ、触れてくれるな——は女性向けの恋愛ものが大好きだ。
だって主人公が可愛い女の子なんだもん。
主人公を支える侍女やメイドも、デキるいい女ばっかり。
こういう頑張る女の子が報われるストーリーはいいものだ。
溺愛ものでなければヒーローの出番も結構そんなあるもんじゃないし、男でも十分楽しめる。
なにより、こんなに可愛いヒロインたちを捨てるダメ王子やアホ婚約者がザマァされるのがいいよな~。
イケメンが絶望して破滅していくサマは笑える!
別に俺がモテないから、やっかみで言ってるわけじゃないぞ、断じて。
「陽夢浪~、パパ、傘持ってってないから迎えに行ってー」
「えー……」
ゴールデンウィークで家族を放置し、同僚とゴルフに行ったとは聞いてるけど……そんな親父のお迎え~?
まあ、ゲームするから出かけないっつったの俺だけどな。
けどさー、そんなの高校生になった息子に頼むなよ。
コンビニで傘でも買って帰って来ればいいじゃん。
「千円あげるからー」
「行きます!」
それなら話は別だ。
ベッドから飛び降りて、財布を拾い、部屋の電気を消し一階に降りる。
母から千円札を受け取って傘を二本手に持ち、家を出た。
「コンビニでもいいから牛乳も買ってきて」
「はーい」
親父に買わせればこの千円は丸ごと俺のもの。
よし、計画は完璧だ。
ウキウキと駅までの道を進む。
交差点に差しかかり、この横断歩道を渡れば駅、というところまで来た。
「あ」
誰の声だ、と確認する前に、歩道を走ってきた電動キックボードに突き飛ばされる。
え、と声が漏れる。
傘が二本、手を離れた。
体が車道に飛び出す。
歩行者信号は赤。
点滅する車道信号は黄色。
赤になる前に、とスピードを上げた車が見えた。
ドン。
その音を最後に、俺は意識が途切れた。
いや、意味わからん。
なにあれ。
歩道を走るんじゃないよ電動キックボード。
許されると思うなよ歩道を走る電動キックボード。
すげーえげつない音したじゃん。
車にぶつかった、ドンって音のあと。
ゴキとかバキバキとか、俺の体どうなったわけ?
『未登録ノ霊魂ヲ補足。補修素材トシテ確保シマス』
あ?
なんだ?
変な声が……。
『データ化ヲ開始。————失敗シマシタ。データ化処理不能。解析。——不適合ト診断。スデニ取得済ミデアルタメ、人類トシテ、転生ヲ推奨』
『——輪廻転生システム、霊魂ヲ受領。転生ヘノ配分ヲ、開始シマシタ』
なんだ?
なにが起きている……?
俺、どうなっ——。
『完了シマシタ。人類種ヘノ転生ヲ開始シマス』
声が出ない。
自分の体が粘土のように作り替えられていく。
なにも見えない。
俺は、どうなってしまったんだ!?
『——フィーネを……』
なにも見えないと思っていたら、急に真っ白な少年? 少女? が、現れた。
茶色い髪が足首まで長いから、やはり女の子?
前髪が長くて顔が見えない。
服は着ていない、全裸だ。
でも、白くうっすら光っている。
『……呑み込まれる前に……』
なに、あれ、待って、俺はどうなったんだ。
誰か教えてくれ!
俺、まさか死んでないよな!?
そんなまさか——!
「……おめでとうございます! お妃様、産まれました! 男の子です!」
「はぁ、はぁ……はぁ……よか、った……」
「ギャァ、おぎゃあ、おぎゃあ……!」
声が出ない。
いや、出てるけど。
鳴き声しか出ない。
待て待て待て待て、なんだこれ!
まさか、そんなまさかだろ! なあ!?
「おお! ヒュリーよ! よくやった! これで我が国は安泰だな」
「えぇ、ええ、本当に……」
「陛下、どうぞこの子に良い名を」
「うむ。……そうだな……ヒューバート! ヒューバート・ルオートニス! それがお前の名だ! ヒューバート!」
——ただの日本の男子校生だった俺が、結晶大陸、ルオートニス王国の第一王子にして王太子、ヒューバート・ルオートニスとなった瞬間てあった。
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