終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
上 下
1 / 385
プロローグ

女性向けの異世界

しおりを挟む
 
「お、更新キターーー♪」

 悪役令嬢もの、令嬢もの、聖女もの。
 女性向けジャンルはここ最近、これらに傾きがある。
 そう、女性向け。
 俺、香田陽夢浪こうだひむろ——母親が芸能人好きで名付けられたキラキラネームだ、触れてくれるな——は女性向けの恋愛ものが大好きだ。
 だって主人公が可愛い女の子なんだもん。
 主人公を支える侍女やメイドも、デキるいい女ばっかり。
 こういう頑張る女の子が報われるストーリーはいいものだ。
 溺愛ものでなければヒーローの出番も結構そんなあるもんじゃないし、男でも十分楽しめる。
 なにより、こんなに可愛いヒロインたちを捨てるダメ王子やアホ婚約者がザマァされるのがいいよな~。
 イケメンが絶望して破滅していくサマは笑える!
 別に俺がモテないから、やっかみで言ってるわけじゃないぞ、断じて。

「陽夢浪~、パパ、傘持ってってないから迎えに行ってー」
「えー……」

 ゴールデンウィークで家族を放置し、同僚とゴルフに行ったとは聞いてるけど……そんな親父のお迎え~?
 まあ、ゲームするから出かけないっつったの俺だけどな。
 けどさー、そんなの高校生になった息子に頼むなよ。
 コンビニで傘でも買って帰って来ればいいじゃん。

「千円あげるからー」
「行きます!」

 それなら話は別だ。
 ベッドから飛び降りて、財布を拾い、部屋の電気を消し一階に降りる。
 母から千円札を受け取って傘を二本手に持ち、家を出た。

「コンビニでもいいから牛乳も買ってきて」
「はーい」

 親父に買わせればこの千円は丸ごと俺のもの。
 よし、計画は完璧だ。
 ウキウキと駅までの道を進む。
 交差点に差しかかり、この横断歩道を渡れば駅、というところまで来た。

「あ」

 誰の声だ、と確認する前に、歩道を走ってきた電動キックボードに突き飛ばされる。
 え、と声が漏れる。
 傘が二本、手を離れた。
 体が車道に飛び出す。
 歩行者信号は赤。
 点滅する車道信号は黄色。
 赤になる前に、とスピードを上げた車が見えた。

 ドン。

 その音を最後に、俺は意識が途切れた。
 いや、意味わからん。
 なにあれ。
 歩道を走るんじゃないよ電動キックボード。
 許されると思うなよ歩道を走る電動キックボード。
 すげーえげつない音したじゃん。
 車にぶつかった、ドンって音のあと。
 ゴキとかバキバキとか、俺の体どうなったわけ?

『未登録ノ霊魂ヲ補足。補修素材トシテ確保シマス』

 あ?
 なんだ?
 変な声が……。

『データ化ヲ開始。————失敗シマシタ。データ化処理不能。解析。——不適合ト診断。スデニ取得済ミデアルタメ、人類トシテ、転生ヲ推奨』
『——輪廻転生システム、霊魂ヲ受領。転生ヘノ配分ヲ、開始シマシタ』

 なんだ?
 なにが起きている……?
 俺、どうなっ——。

『完了シマシタ。人類種ヘノ転生ヲ開始シマス』

 声が出ない。
 自分の体が粘土のように作り替えられていく。
 なにも見えない。
 俺は、どうなってしまったんだ!?

『——フィーネを……』

 なにも見えないと思っていたら、急に真っ白な少年? 少女? が、現れた。
 茶色い髪が足首まで長いから、やはり女の子?
 前髪が長くて顔が見えない。
 服は着ていない、全裸だ。
 でも、白くうっすら光っている。

『……呑み込まれる前に……』

 なに、あれ、待って、俺はどうなったんだ。
 誰か教えてくれ!
 俺、まさか死んでないよな!?
 そんなまさか——!



「……おめでとうございます! お妃様、産まれました! 男の子です!」
「はぁ、はぁ……はぁ……よか、った……」
「ギャァ、おぎゃあ、おぎゃあ……!」

 声が出ない。
 いや、出てるけど。
 鳴き声しか出ない。
 待て待て待て待て、なんだこれ!
 まさか、そんなまさかだろ! なあ!?

「おお! ヒュリーよ! よくやった! これで我が国は安泰だな」
「えぇ、ええ、本当に……」
「陛下、どうぞこの子に良い名を」
「うむ。……そうだな……ヒューバート! ヒューバート・ルオートニス! それがお前の名だ! ヒューバート!」

 ——ただの日本の男子校生だった俺が、結晶大陸クリステル・アース、ルオートニス王国の第一王子にして王太子、ヒューバート・ルオートニスとなった瞬間てあった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...