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甘え上手
しおりを挟む「あ、あっあっ、あっぁー……! き、気持ちイィ……っそ、そこ、弱いところ……ボクの……ぁああぁ……!」
自分が今、とんでもないことになっているのは、スライムの後ろにテーブルに寄りかかってこちらを見ているリグの姿でよくわかっている。
なんの感情もなく、ただジッとこちらを観察しているように見えた。
(み、見られてる……シドの、弟の、リグさんに……っ)
その背徳感がより、体の熱を押し上げている。
なにより明確に性交を匂わす指の動きに、涙が出るほど体が喜んでいた。
椅子から落ちないように片腕で背もたれに押さえつけられる、その痛みも気持ちがいい。
「やりづれぇ。こっち向いてケツ差し出せ」
「っ、う……ぁ、は、はぁ、はぁ……こ、こう?」
腰が抜けているのに、そんなことを言われてずるりと椅子から落ちる。
それでもなんとか上半身だけ捻って、椅子の上に這うように手をついて膝立ちになった。
頭ではちゃんと、このシドがスライムだとわかっている。
それでも、あの声と無感情な眼差しに射抜かれると言うことを聞いてしまう。
もっと冷たくされたいとも、思ってしまう。
「あ――! あ、あっあっあっ、あっ、は、挿っえぇ……!?」
男性器を模した、あの触手が入ってきた。
入り口を無理やり押し拡げるようなあの感覚に、体が悦んで涙が溢れる。
亀頭部が容赦なく中へと入り込み、次に肉厚な竿がまた入り口を押し拡げて奥へ進む。
「っぅ、ぉ!? ぁ、あ!? な、なぁ……!? ひ、っ、い、な、中ぁ……!?」
あの、腸を啄むスライムの感触がどんどん奥へと広がる。
腰が飛び跳ねるように、勝手に痙攣した。
しっかり腸壁に吸いつくようなスライムの触手は、それでもしっかり男性器の形のままであり、もし、このまま出し入れをされたらと思うと――
「ん!? ひ、いいいぃ!?」
そんな期待をしたからだろう。
スライムの触手が出入りを開始した。
内壁を捲るようにずり、ずちゅ、と脳が痺れるような音を立てる。
しかも容赦なく動きは速くなっていき、懐かしい指では届かぬ奥を抉るように突いてきた。
「いぃ! いぃっ! イィィイ! ぎ、ぎもちいぃぃ! こ、これへぇ、これ欲しかったぁ! お、おぐ、いっぱい突い、てへぇ、突いてへぇ……! あ、あ、あ、あ、あっあっ、ああん、あん、あぁー!」
本当に、なんの遠慮も容赦もなく、体を物のように犯されて下半身がただ熱く、気持ちがいいだけになってしまった。
ガクガクと腰を持って揺さぶられ、涎と涙が床に落ちて自分の下半身を見ると、粘液がぼたぼたと太ももを伝って床に溢れている。
その粘液に、尿なのか潮なのか、ノインの性器から半透明でサラサラした液体が流れ落ちていく。
「魔力を注ぐ」
「え、は、へぁ? ――ぁ、あああ!?」
シドの声よりも少しだけ高い声。
リグの声だと思い出せないままスライムを媒体に魔力を注がれて、絶頂する。
全身が痙攣し、椅子から手がずり落ちた。
服の下から入り込んだ細い触手が胸を食み、じゅるる、と吸う。
「ひぃぁああ!!」
胸を吸われて、中のモノを強く締め上げるとまた気持ちよくなって体が勝手に絶頂する。
達したばかりの敏感な体は胸と中の刺激で完全に脱力してしまった。
「は……、ぁ……うっ、あ……はっ、はっ……ぁ」
べしゃり、と床に倒れ込む。
びくん、びくんと跳ねる熱い体が、床の冷たさで気持ちがいい。
液体化したスライムが下半身と床、ノインの顔にも触れて涙や鼻水唾液を吸い取って綺麗にしていく。
「……ノインはすごいな……これで気持ちよく感じられるのか……」
なにを言われているのかわからなかったけれど、資料室のソファーに横たえられて服を整えられる。
ただ、リグがまた淫紋の上に手を置いてなにかを呟いていた。
意識が途切れ途切れで、よくわからない。
「リグ、ノイン、大丈夫か?」
「フィー、シド、もう終わった。問題ない」
「え!? リグが魔力供給したのか!?」
「え? ああ。なにかまずかったか?」
「いや、まずいことは……」
「あ、ああ……」
呼吸が落ち着いてきてから、ゆっくり目を開けると気まずそうなシドとフィリックスが資料室に来たところ。
本物のシドだ。
「それで、今調べてみたのだが、供給後の魔力の流れがだいたい理解できた。維持用の魔力は30程度。その他20ほど魔力は淫紋に回って、蓄積されている。思春期で年若いのも相俟って、性欲が暴走させられているようだな」
「え、マジで淫紋のせいでおかしくなってたのか?」
「精液のような形での供給でなければ、淫紋の発情効果が強烈に残ってしまうらしい。今項目を確認したが、項目10の絶頂回数管理権限がシドになっているから、発散にセーブがかかっていたのではないだろうか」
「あ。……う……」
心当たりがある模様。
あのシドが珍しく居心地悪そうな顔で目を背けた。
「あ、アレのせい、だったと?」
「一応、僕とシドは双子だから僕の魔力でも誤作動で発散させることはできたけれど、シドが定期的に三回ほど絶頂させてやらないと魔力が淫紋に蓄積して、常時発情状態になってしまう。限界は五日だな」
「げぇっ……え、ま、マジで?」
「今回のように僕がやってもいい」
「いや、それはちょっと」
「……え? だが……」
シドは未成年に触るのがダメなのでは、とリグが気を遣って見上げる。
それを理解して、シドもますます居心地悪そうに「お前にやらせるぐらいなら俺がやる」と舌打ちしながら言う。
ぼんやりしていた意識が戻り始めて、そんな会話が聞こえて、隣にいるリグを見ながらノインが最初に口を開いて出た言葉は――
「リグさんはいいなぁ……フィリックスさんに乳首チュウチュウ吸ってもらって……」
「「「………………」」」
それなりの沈黙。
震えた声で「発散……したんだよな?」というシドの問い合わせ。
リグも目を泳がせながら「心身の年齢が関係している……と、思う」という返答。
「いっぱい弄ってもらえるんだろうなぁ……乳首だけでイくのも気持ちいいよね。ボク吸われるの好き」
「あ、え、あ、ええ、と、あの、えっと……」
「強めに吸われるの気持ちいいよね」
「た、確かにもう少し強くしてもらっても大丈夫かもしれないとは思うけれど」
「リグ!?」
顔を赤くして、フィリックスから顔が見えないように俯いてそんなことを言うリグ。
え、あ、マジで、と震えるフィリックス。
胸に手を当てて、もごもごとする二人。
なにを見せられているんだ、というシドの虚無の顔。
「……フィリックスさんなら乳首のピアス優しくつけてくれるんじゃない?」
「え? あ……」
と、言ってリグの胸元を突くノインにギョッとしたフィリックスが思わずリグを抱き寄せて、シドがグーでノインの頭を殴りつける。
いったぁ、と叫ぶが、痛みでようやく「あ。ごめん」とやらかしたことを理解した。
「セクハラしちゃった、ごめんなさいー!」
「え、あ、い、いや。驚いただけだ。……でも、そうか……フィーにしてもらったら、もう、怖い夢は見ないのだろうか」
「え?」
土下座して謝った。
さすがに乳首をツンツンは完全なるセクハラ。
発散したはずなのに、頭のピンクが抜けきっていなかった。
羨ましい、という意識が先走りすぎてリグの乳首をツンツンしてしまったのに、そこからまさかの話題になってしまったようだ。
フィリックスを見上げて、こてんと頭を肩に乗せて「ダメか……?」と聞く。
リグのことが大好きなフィリックスが「あ、っぐっ……」と顔を赤くして言葉を詰まらせる。
それはもう、内容がそれでなければ秒で「いいよ!」と言っていただろう。
「え、ご、ごめん、ちょっと、ちょっと待って。ニップルピアスを、おれが、リグに、つけるっていう話してる?」
「そう。ダメか?」
「シドー!」
「俺に話を振るな!? リグ、それは、考え直した方がいいんじゃないか!?」
シドの言い方が珍しくリグの意見を問うような言い方。
普段の命令口調でも、指示口調でもない。
動揺がすごい。
リグは少し考えるが、フィリックスとシドを見上げる。
「でも、フィーが……フィーがしてくれたら……もう、痛い夢は見ない気がする。フィーに上書きしてほしい」
「う……うっ……!」
「だってフィーは、僕に痛いことや僕が嫌なことはしないから」
「ううっ、うううう!」
抱き着いたまま、震えるフィリックス。
お付き合いを始めて約九ヶ月。
絶対の信頼。
彼にそんなふうに言われたら――
「…………し、調べる時間をくれ。リグに痛い思いはさせたくない。やるんなら、リグが一切痛みを感じないように万全を期したい」
「わかった」
「マ、マジでやるつもりなのか?」
「……っ、な、なにかあった時のために、その時はシドもいてほしい」
「俺も!? ……わかった……」
フィリックスのガチの要請に、シドも仕方なさそうに了承する。
弟が望むのなら仕方ない。
そんな相変わらず弟にゲロ甘いシドを見て、なんとも言えない気持ちになる。
「じゃあちょっと、色々調べてくる」
「え? ここで調べていけばいいのでは……」
「いや、ちょっと……覚悟を決めたいので」
「そう、なのか?」
フィリックスは、真顔だった。
シドも哀れみの眼差しを向けるほどに。
「――で、リグ。絶頂回数管理権限のせいで発情が蓄積するとか、そんな話だったな」
「ああ」
「それってなんとかなるものなのか? その、お前はこれ以上手の施すところがないとか言っていたが」
「シドの処置は適切だったと思う。ただその処置によってどんな効果があり、そこからどう改善すべきかは時間と検証が必要だっただけ。ノインの体質的に絶頂回数管理権限で、絶頂回数は無制限に変更した方がいいと思う」
「は? 俺は回数制限したつもりはないぞ?」
「回数制限の設定をしていなかったのがよくなかったのだと思う。明確に“無制限”と設定していなかったから、セーブがかかっていたんだ。主にシドの望む感じに」
「あ。……そうか、そうだな。悪い」
珍しく素直に謝るシド。
どういうこと、とノインがリグに聞くと「シドはノインと……というよりも未成年にあまり、その……シたくはないから、その意識がセーブに繋がっていて……」と彼にしては珍しいくらいオブラートに包んで説明してくれた。
要するにシドが未成年のノインとヤりたくなさすて、無意識にノインの絶頂回数を制限していたということらしい。
「そうだったんだ……なるほどねー」
「……悪かった」
「ううん」
胸がモヤモヤする。
物分かりのいい“子ども”の部分が「仕方ないよー。だってシドはダロアログとおんなじになりたくなかったんでしょ。未成年のボクに手を出したくなかったんでしょ?」とすらすら口から出た。
けれど、顔を上げられない。
素直に本音を言うのなら、色々溢れてきそうで。
(ボクが子どもだから。大人ならシドとちゃんとえっちできた。そもそもボクがあの施設でシドの言うことを聞いていれば……。騎士として情けない。シドの負担になってるのはボク。ボクが大人ならシドの負担にならなかったのに。……それでも、ボク、やっぱりシドとえっちしたい……したい、したいしたいしたい……! でも……!)
シドと本気でセックスをしたい。
人間とセックスするのなら、はじめてはどうしても……シドがいい。
だが、子どもの自分とのセックスはシドの精神面で無理。
そのくらいノインにもわかる。
「絶頂回数を明確に“無制限”に変更する。触るぞ」
「あ……うん」
淫紋の支配権はシドが持っている。
だから、シドが改めて淫紋にアクセスして絶頂回数制限を“無制限”に変更してくれた。
これで発散しやすくなる、とのことだ。
服を元に戻して、双子を見上げる。
シドは少し参ったように溜息を吐いて、先程ノインがスライムに犯されていた時に縋っていた木椅子に座った。
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