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陵辱(2)
しおりを挟む「う、あ……や、やはぁ……やら、やめへぇ……! ほふはほ……はひははひ……!」
今度はグロテスクな男の性器の形をしたもの。
その長さは三十センチはありそうだ。
幅も太く、亀頭部だけで八センチぐらいあった。
そんなものが、これから尻の中に押し込まれるのだと思うと体をくねらせて逃げようとするのも無理はない。
そして、自分が今置かれている状況も――なんとなくわかってきた。
大人たちが自分を遠ざけてきた“なにか”の、真っ只中に放り込まれているのだろう。
これはとてもひどいことで、許されないこと。
それを自分が、されている。
「ふうううう! ひゃぁあぁらぁあ!」
てかてかに濡れた器具が尻の方へと消えていく。
涙が止まらなくなる。
自分は今から、あの凶器に貫かれるのだ。
(シドの言う通りに、しておけばよかった……)
散々、しつこいくらいに注告してくれたのに。
ぼろぼろと、次から次に涙が溢れる。
泣きながら両手で尻穴を塞ぐようにしたけれど、指先にあの凶器が押し当てられて恐怖で体が震えた。
こんな恐怖は感じたことがない。
両親に怯えた目で見られた時すら、こんな気持ちにはならなかった。
こんな――絶望は……。
「ううあああああぁぁぁーーー!?」
けれど、警戒すべきは後ろだけではない。
散々扱いてもなにも出すことのないノインになにを思ったのか――はたまた、最初からそういう予定だったのか、勃起しているノインの性器に、あの筒の中からなにか非常に細長い棒状のモノが突き刺さった。
(ひぃ、い、いいいやだいやだいやだぁ! なになになになに!? もうやだよおおおっ! そこ、おしっこするところなのにぃ!)
排尿する道筋を、冷たい棒が中へと突き進んでいく。
信じられなくて、尻穴を覆っていた手で性器を包む筒を抜こうとした。
ぬる、と手が滑って失敗した――瞬間。
「っう――!?」
尻穴を、あの凶器が押し拡げ始めた。
スライムの、塊のような質量が入っていく感覚に似ている。
つまり――。
(入っ……)
ずぶん、と凶器の先端部がずっぽりと入ってしまった。衝撃で固まっていると、前の方から入った棒が腹の下の方に届く。
届いた瞬間、下半身に渦巻いていた熱が爆発でもしたのかと思うほどに全身に駆け巡った。
「――!? っ? ……!?」
目の前が真っ白になる。
声も出せないほどの、まったく感じたことのない感覚。
全身から力が抜けたせいで、後ろの凶器がさらに楽々と尻の中から腹の方へ進んできた。
それを止めるほど、体に力が入らない。
先端部から竿部分繋がる間……カリと呼ばれる部分。
その突起が、性器の中を通って腹の下の方を押し潰している先端部を掠めた。
「う、いいぃっ……!?」
目の前が点滅した。
体が仰け反り、轡を歯がガチガチと噛む。
自分の体なのに、自分の体ではないような感覚。
なに一つ自分の自由にならない。
(こわ……い……怖い……助けて……助けて……誰か……師匠……!)
尻に入ったものが、わざとらしくとある箇所――前から侵入している棒の先端が押し潰す場所を狙って抽送をし始めた。
痛みの少ない、電撃でも浴びせられているかのように、全身がその都度跳ね上がる。
「う、あああっ! ひい! い、いああぁっ! や、やへ、やへえええ! やへへえええっ! ひい! いいやぁ!? あああっ! ああああっ!?」
そこを擦られると、意識がブツブツと途切れるのだ。
声が勝手に出るし、全身を電撃で撃たれたようになる。
痛いような、痛くはないけれど、けれど形容できない感覚。
どんなに「やめて」と叫んでも、止まることはない。
……きっとこれは、拷問なのだろう。
けれど、自分がなんで拷問を受けるのかがまったくわからない。
「――――あ……あー…………?」
苦しみの中、いつの間にか意識を手放していた。
どれほど気を失っていたのかはわからないが、性器に筒は被さったまま。
ただし、形が違っていた。
田舎で時折見る、牛の乳を絞る時に使われる搾乳器の形状。
荒い息を整えながら、ぼんやりとそれを見下ろしていると尻の中のものが動き始めた。
「!?」
いや、そもそも、尻の中になにかが入っていたのにも今気がついた。
先程の凶器のようなものではなく、深い段差のついたボコボコとした形のもの。
それがまた、例の場所を執拗に擦り上げていく。
「んううぅぁぁ! ああああっ! あっ、ああっ! ああっ!? あああっ、ア、あっああっ、や、やへぇ――!?」
否が応でも理解した。
それが擦る場所は、自分の“弱点”だ。
そこを擦られると体から力は抜けて跳ね上がり、背筋から電気が走り、切ない声が勝手に出る。
(もう、やだあ……もうやだぁ……)
つらい、苦しい、こわい。
いっそ死んでしまおうか、とすら思う。
けれど、棒状の轡で舌を噛むこともできない。
その上、轡のせいで涎が胸や腹の上に散らばりっぱなし。
胸や首筋や耳などは、先程と同じ器具たちが舐め回ったり吸い上げたりと忙しなく動き続けている。
こいつらも、どうせろくな理由で動いていないだろう。
「んああああああっ!」
尻の刺激も酷いが、ついに搾乳器も動き始めた。
圧迫感と、吸い上げる力。
後ろの刺激も合間って、ずっと渦巻くものが出口を求めて彷徨い出した。
(出したいいぃ、ヤダァ、こわい、怖いぃ!)
しゅー、と圧迫感は定間隔で取れていく。
中の空気を抜いたり入れたりしているせいのようだ。
その刺激が、またまずい。
吸い上げられる時、腰が痺れて力が抜ける。
目の前が真っ白になる。
その瞬間、後ろの弱いところを擦られると……点滅する視界から意識が飛びそうになった。
両腕は自由なのに、手摺りを強く握り込むことしかできない。
「ううううー!」
ゴリ、と中を強く突かれた。
その瞬間、ノインの性器から白濁の液が放たれる。
精通した。
強制的に近いが、しっかりと。
白濁の中にやや赤い、血のようなものも混じっているが、その強制的の名残だろう。
すると全身に虚脱感が襲う。
意識を保っていられず、目を閉じて気を失った。
その間も、尻を犯す道具は延々取り稼働し続ける。
股を大きく開いたまま、後ろの刺激だけでノインが絶頂を繰り返す。
ビクビクと体が小さく跳ねる。
性器から搾乳器が取れて、またイソギンチャクのようなものが内部に生えた筒がかぽり、と被せられた。
「あ……いっ、あ……あっ、あ……あぁぁぁー……」
意識はない。
それでも刺激は続けられる。
涙が溢れるが、機械に憐れむ心などない。
バキンと足枷が外れる。
椅子の背もたれがゆっくりと倒れ、仰向けにされるノインの体。
その間も、絶え間なく機械たちはノインの体を犯し続ける。
天井からサイボーグの腕が降りてきて、自由だった腕を掴むと頭の上で拘束具をつけた。
さらに腰と腹も、背もたれに体をしっかり固定するようにベルトが巻かれる。
『――十分解れたわね。第二異次元を作るわ』
女が部屋の外のカプセルの中から手を伸ばす。
ノインの腹の上に魔法陣が現れた。
魔法陣の上にはサイボーグの腕により、八種類の魔石が置かれていく。
尻の中も、性器も、道具に犯され続けたまま。
意識のない状態で些細な絶頂を繰り返すノインに、女の魔力が注がれていった。
下恥部骨の上に、赤い魔法陣が転写されていく。
くっきりと、淫紋が刻まれた。
『ようこそ、私と同じ地獄へ。さあ、第二異次元は成った。次は魔力を注ぎましょう。優秀な遺伝子と共に、魔力をたっぷり集めるの。その胎に……貴族どもを討ち滅ぼす兵器を宿すのよ。何年かかっても……』
「う、ああああああっ!」
固定された腰に、激しく打ちつけられる。
意識のない状態だからこそ快感をあるがまま感受してしまう。
拘束具が外れた瞬間、一際大きな絶頂で全身を痙攣させた。
「……ぁ……?」
また、意識を失っていた。
目を覚まして、自分がベッドの上に寝かされていることに気がついて上半身を起こす。
「!? あ……? 拘束具とか……取れてる……」
自由の身、というやつだ。
全裸のままだが、シーツが体にはかけられていた。
頭を抱える。
身体中が、痛い。
「……時間、どのくらい……経ったの……?」
時計のようなものはない。
部屋の中はすべて白。
吐き気がする。
部屋の隅の洗面所、その奥のトイレに近づいて、吐いた。
水道で口を濯いでから、改めて部屋の中を見た。
正方形で、ベッドと洗面台、トイレ、シャワールーム以外なにもない。
ベッドの足元側の壁はガラス窓になっており、まるで牢獄のようだ。
「そ、外に出られないの?」
監禁されている? と怯えながらも洗面台などがある壁とは逆方向の壁に近づいてみる。
すると、ドアノブのない扉があった。
壁と一体化していて、わからなかったのだ。
押してみるが、当然開かない。
(外からしか開けられないタイプか……どうしよう)
蹴り飛ばしてみようか、と思ったところにボト、という音が聞こえてきた。
振り返ると、あのピンクのスライム。
(剣もないのに……!)
構えようとするが、なにも守るもののない真っ裸。
剣もなく、武器になりそうなものもない。
ベッドの足でも引きちぎってやろうかと思ったが、スライムがいるのはそのベッドの上だ。
「っぅ!?」
次の瞬間、下腹部に強い熱を感じてしゃがみ込む。
全身から力が抜けて、息が上がる。
背中を駆け上がるような痺れ。
意味がわからなかった。
「? な、ん……なの……こ、これ」
唾液が大量に出てくる。
スライムが触手を伸ばして、ノインの体を持ち上げベッドへと引きずり上げた。
無意識に足を開いてしまう。
はあ、はあ、と視線が彷徨い、スライムが尻の間に侵入してくると全身が甘く痺れた。
「あ……っ、あっ、は、はいって……ぇ……っあ、ああぁっ!」
強烈なあの刺激とは違う、優しいピストン。
ノインの弱いところを芯のない柔らかな質量が、ずぷずぷと叩く。
あの刺激のあとでは、物足りなさすら感じるような優しさだ。
「はあ! はあ、はあっ! ああっ、あっ、あぁあん!」
なのに、声が漏れる。
自分がまるで喜んで受け入れているかのような声。
しかも、両手も両足も拘束されていないのに、スライムを拒もうともしない。
脳が痺れる。
「そ、そこ、そこ、そこ気持ちいいっ……」
咄嗟だった。
スライムが擦り続けるその“弱点”を、ノインは「気持ちいい」と言った。
自分の口から出た言葉にハッとしたが、スライムのピストンは止まることなく続く。
だからだろうか、一度左手で口を覆い、そのあとじんわりと涙を浮かべて唇を震わせた。
「き……気持ち……いい……気持ち、いい、気持ちいいっ! そこ、もっと……もっとして……っ」
自分がなにを口走ったのか理解した上で、その甘い痺れで堪らなくなっている。
ボロボロと涙が溢れて止まらなくなった。
上半身を捻って、ベッドシーツを握る。
気持ちと体が、バラバラになっているようだった。
(スライムに、僕……お尻に、挿れられて……気持ちいいって……なに?)
意味がわからない。
わからないのに口から出た「気持ちいい」という言葉。
きっとそれは“体の気持ち”。
心の気持ちは、スライムを引き剥がして逃げ出したい。
(やだ、やだ、こわい、嫌だ。助けて師匠……こんなの嫌だよ。……助けて――)
声と涙が止まらない。気持ちがいい。
目をきつく閉じた時、白い外套に金の髪が見えた。
「あっ……う、あ……た、たすけて……たすけて、シド……」
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