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愛しい歳下の恋人*

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 それから一週間程経つ。
 リュカは朝、剣の訓練を付けて昼間に書類仕事をし、悠来はお茶を持って執務室に行き、そこでささやかな恋人同士の触れ合いをする。
 そんな生活サイクルが完成しつつあった。
 体の痛みは治癒出来ても聖霊術で疲労までは取れなかった為、とりあえずは一週間、体を休ませろと言ったのだ。
 ほんの数十分の休憩時間だが、しかし、その時間で数度のキス。
 意外とそれだけでも満たされるもので、その日の休みもその程度で食堂に空っぽのティーカップとおやつの皿を持ち帰った。
 だが、リュカの若さを考えると一週間しないのはまずいかもしれない。
 普段抑圧されているからこそのあの精力だとしたら……。

(抜くの手伝うくらいはしないとまた俺が死ぬ)

 うん、と一人頷いて皿を洗おうとした時だ。

「失礼! こちらに聖女様の父上様がおられると聞いたのだが!」
「?」

 メイリアは厨房にも食堂にもいない。
 先程三階の騎士たちの部屋を掃除に行くと言っていたので、そちらだろう。
 なので、対応は悠来がすべきだ。
 まして呼ばれたのは悠来本人なのだから。
 厨房からカウンター越しに顔を出す。
 えらく良い生地を使った服を纏う、数人の貴族らしき男たち。
 見るからに『成金』だ。

(……ああ、例の『革新派』とかいう奴らか……)

 ならば対応は決まっている。
 口許に笑みを浮かべてから、タオルで手の水を拭う。

「これはこれは、貴族様がわざわざこのような場所になんのご用意でしょうか」
「む? 使用人か? ここに聖女様の父君がおられると聞いたが……」
「はい。しかし、一応ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか? 騎士団長に見付かると……ねぇ?」
「……う、うむ、なるほど?」

 なにが『なるほど』なのか。
 笑いたいのを堪え、頭を下げる。
 これだけでこの男が流されやすいタイプだと分かった。
 それなりに操作がしやすそうである。

「聖女様の父君は大変料理がお上手だとお伺いしている。なのでどうだろう。是非我が家の料理人としてお迎え出来ないかと思ってな」
「はて、そういえばお名前をまだお伺いしておりませんが……」
「ん、あ、ああ、そうか。ゾワール・サウザールだ」
「おお、なんと! あのサウザール様でしたか!」

 頭を下げ、大袈裟に驚いておく。
 すると男……ゾワールはなぜか鼻を上げて胸を張る。
 特に褒めたわけでもないのにこれだ。
 ますます笑いを堪えるのに苦労する。

(ああ、しかしサウザールってアレかぁ……)

 悠来が魔物に襲われた時、リュカを偉そうに責め立てていた奴らの、一番偉そうな奴だろう。
 それのご子息かなにかのようだ。
 もうこの時点で悠来の中で『敵』認定がされた。
 さて、それではこの意味の分からない主張に今しばし付き合うとしよう。

「聖女様のお父様をシェフにお迎えになるとはまたまた、凡人とは着眼点が違いますなぁ!」
「そ、そうだろうそうだろう? まあ、父上の考えなのだがな」
「なるほどなるほど。やはりサウザール様も聖女様のお力をに目を付けておられるのですな? さすがさすが」
「い、いやぁ、まあ、当然であろう? 聖女にしか厄気を完全に消し去る事は出来んのだからなぁ。手元に置いておきたいのは、まあ」
「いやいや、当然のお考えかと」
「だ、だよなだよなー!」

 ……チョロすぎて心配になるレベルだった。
 周りの付き人らしい貴族たちも、なにを「うんうん!」と頷いているのか。
 笑顔を浮かべたまま「マジこいつおつむゆるすぎるウケる」と思いつつ、ウンウン頷いてから「では、騎士団長を呼んで参ります」と告げる。
 するとようやく「あれ?」と思ったのか、ゾワールは「え、聖女の父は……?」と聞いてきた。

「いや、もう用件はお伺いしましたので。こちらにお座りになってお待ちください」
「え? ん? お、おお」
「ささ、今お茶をお淹れしますね。すみません、今、ここに私一人しかいませんで……」
「あ、ああ、そうなのか。騎士団も人手不足なのだなぁ」

 お前が言うな。
 と、心の中でツッコミを入れつつ、新しくお茶を淹れ、人数分テーブルに出してやる。
 そして彼らが座ったのを確認してからリュカのところへと戻った。
 執務室で仕事に精を出していたリュカに彼らの話をすると頭を抱えられる。
 一般人の悠来にさえ透けて見えるような方法を、なぜに取るのか……。

「というか、ユウキ、まさかその情報を自分で引き出したのか?」

 テーブルの上の書類をある程度片付けた後、執務室から出るリュカ。
 悠来も付いて行こうとしたら手で制止される。

「まあ、楽勝すぎてビビったくらいだが」
「はあ……っ、本当にまったく……! 待っていてくれ、とりあえず追い返してこよう。……その、こ、断っていいんだよな……?」
「ん? ああ、もちろん。あいつら真美を利用する事しか考えてなさそうだったからな。こっ酷くお断りしてやろうと思……」
「わ、分かった。俺が断ってくる」
「なんで俺は一緒にいっちゃダメなんだよ? あいつらの目当ては俺なんだから、俺が直接……」
「いや、面倒な事になりそうだし……それにその……」
「?」

 口籠るリュカは、思案した顔を食堂方面に向けている。
 なにか考えがあるのだろう。
 それならば悠来は言われた通りここで待っていた方が良い。
 溜息を吐いて頭を掻く。

「分かったよ、お前がそう言うなら……」
「……ああ、ありがとう。……奴らがユウキを『使用人』と勘違いしているのは都合が良いからな」
「!」

 なるほど、そういう事か。
 確かにそれならば悠来がわざわざ出て行ってネタバラシをする必要はない。
 むしろ、その勘違いを利用して……。

「なにか仕掛けるのか?」
「そうだな。だがまずは彼らにお帰り頂いて……ハーレンに相談をしよう。実はそろそろ陛下のお誕生日がある。その時に……その……」
「なるほど、ギャフンと言わせてやるんだな! ヒヒヒヒッ、それはいい」
「……ユウキ、とても悪い顔になっているぞ」

 あのいけ好かない奴らは少し痛い目を見た方がいい。
 話を聞いただけでも成金、金持ちの身勝手さが目立つ。
 メイリアは彼らの持つ財力で文化が守られている面もある、と言っていたが、だから真美を利用して良い理由にはならない。
 ひっひっひっ、とほくそ笑む悠来をリュカが眉尻を下げて宥め、それから執務室を出て行った。
 それを見送った後は途端に暇になる。

「……」

 さて、どうしたものだろう?
 周りを見回すが、そこは本と書類しかない。

(あ、そういえば読み書きの練習を最近していないな。俺でも読めそうな本は……と……)

 本棚を漁るがどれも軍事関係のものばかり。
 歩兵術、指揮、陣の展開……どれも難しそうなものばかりだ。

「お?」

 その中で不思議なものを見付けた。
 一冊の本を抜いたその奥に、表紙らしきものがあるのだ。
 明らかに複数の書籍で蓋をして隠してあるそれに、当然興味が湧く。
 その場の本をごっそりと取り出してみればやはり、一番奥へ貼り付けるように本があった。
 それを取り出す。
 表紙をめくると日記のようだった。

「……!」

 リュカの字ではない。
 息子が生まれた、とある。
 名をリュカ。

(リュカの親父さんの日記……)

 息子が可愛い、という話しかしていない日記に目元が和らぐ。
 彼がとても愛されているのだと伝わる。
 これ以上は野暮だ、と閉じて元に戻す。
 本棚のガラス扉を閉めると、ちょうどリュカが帰ってきた。

「おう、お帰り」
「? なにか読んでいたのか?」
「あー、難しくてやめた」
「ははは」

 それで?
 と、促してみると頷かれたのでゾワールとやらは帰ったのだろう。
 ハーレンは真美の護衛の日なので夜まで戻らない。
 ふむ、と頷いてから扉に向かって鍵を閉める。

「? ユウキ?」
「そろそろ……その、溜まってきてるだろ? ちょっとだけ……な?」
「!」

 リュカをソファーに座らせて、悠来はその手前に膝を付く。
 外へ出るわけではないので、鎧は着けていない。
 おかげで簡単にズボンの前を寛げる事が出来た。

「え、あ……ユ、ユウキ……な、なにをするつもりだ?」
「なにって、まあ……さすがに最後まではちょっと……。だから口で、な?」
「く、くち!?」

 派手に肩を跳ねさせ、顔を真っ赤にするリュカは可愛い。
 下着もずらすとむわりと雄の臭いが鼻をついた。
 というよりも、出てきたソレに悠来の目が点になる。

(は? ……は? でか……え?)

 リュカは顔を両手で覆っているのだが、恥ずかしがるサイズではない。
 思考が一時停止した。
 悠来のが日本人の標準サイズだとして……まだ半立ちにもなっていないリュカのサイズ感がすでにおかしい。
 緊張しながら触れてみると、まだ柔らかいが……。

(え、うそ……これ、マジ? 俺、こんなのケツに挿れたのか……? よ、よ、よく生きてたな……?)

 人体の神秘。
 そんな言葉が頭を過ぎる。
 しかし、やると言い出したのは自分。
 それに今抜いておかねば次にする時、また死ぬ。
 勘ではあるが、男としての確信でもあった。
 なので恐る恐る舌を伸ばす。
 先端をすおずおずと舐めてみるが意外にも味がしない。

「ユ、ユウキ! それはさすがに汚っ!」
「ん、まあ大丈夫だ……」

 悠来もフェラチオはした事がない……というより、自分が男のものを舐める、という行為をする日が来るとは思わなかった。
 人生分からないものだ、思いながら亀頭部からカリの部分を輪っかにした指で優しく揉みしごく。
 皮が剥けて飛び出してきた赤黒い先端に、ゴクリと喉が鳴る。
 なんとも逞しい……。
 その肢体と同じく、いや、この肢体だからこそのペニスだ。
 悠来にも付いているのに、大きさも色も形も別のもののようだった。
 敏感な先端を避けて、次に竿に舌を這わす。
 輪っかにした指はそのまま竿をしごく。
 舌を這わせたところからたっぷり唾液を絡めて、湿り気が増えてきたら掌全体。
 そして、両手で握って上下に動かした。

「っ……、こ、こんなこ、と……」

 などと言いながらしっかり見下ろしているリュカに、口元が緩む。
 目元は赤く染まり、涙目になっていた。
 この可愛い可愛い歳下の恋人をもう少し、歳上らしく翻弄したくなる。

「じゃ、そろそろ上の方も舐めてやる」
「っ!」

 そう宣言すると、リュカが驚いた顔をした。
 同じ男同士、良いところなら当然分かる。
 確実に最初よりも立ち上がり、質量を増したソレ。
 若干冷静に……客観的に見直すとなんという凶器なのか。
 カリ裏に舌を這わせると吐息が漏れる。
 その色っぽい吐息、呼吸に気分が良くなった。
 こんな凶器でも構造は悠来のモノと同じ。
 ならここは堪らなく気持ちいいだろう。

「あ……」

 唾液を混ぜて滑りをよくしながら皮のシワを沿うように舐めながら舌を上へ、裏へ、舌先でわざと筋をなぞる。
 唇で喰み、玉を指先でなぞって刺激しながらますます熱くなる肉棒を弄ぶ。

「!」

 滴り始めたのはリュカの先走りだ。
 それを舌先ですくってみる。
 苦い。
 だが、妙に甘く感じる。
 これがリュカの味。

「ん……っ、あ……ユ、ユウ、キ……これは、ダメだと思……っ」
「らいりょうふら」
「喋っ!」

 余裕がない顔に悠来まで興奮してきた。
 存分に舌先で弄んだ後、一度顔を離す。
 舌を口の中にしまい、唾液と咥内の熱を補充してから先端へ向けて口を開く。
 あーん、とわざと声を出してやると、リュカの情けのない「えぇ」という声が耳に届いた。

「っう!」

 口の中に亀頭を含む。
 でかい。
 分かっていた事だが、でかい。
 よくこれを尻の中に呑み込んだものだ。
 呑み込み、死ななかったな……と心の底から思う。
 じゅっぷ、じゅっぷと咥内に溜めた唾液を全て絡め、リュカの先走りと混ぜ合わせて舌で亀頭へ塗りたくる。
 そこからカリや、筋裏へ指ですくって親指などで刺激し続けた。

「あ……まっ……!」

 待てと言った悠来にリュカはやめてくれなかったので、聞こえないフリを続ける。
 頰の裏に亀頭を擦り付け、咥内の熱をたっぷりくれてやった。
 舌で鈴口も突いてやれば「うあっ」とまた情けのない声が漏れる。
 それに気分が良くなって、顎の上のザラザラした場所にも先端を擦り付けてやった。
 唾液と、先走り。
 苦い、しょっぱい、不味い。
 なのにリュカの熱、質量、味なのだと思うと堪らなく興奮する。
 頰を窄めてわざと吸い上げると「ひっ」と喉を鳴らすリュカ。

「ん、んっ、ンッ……んっくっぷ……じゅ……」
「あ……だ、だめだ、ユ、ウ、キ……! イ、イってしま……!」
「んんん」

 いいよ、と言うと頭の後ろを手で掴まれた。
 一気に喉の奥までペニスが入ってくる。

(あ……やべぇ……)

 苦しい。
 だが、喉の奥に注がれるネバネバとしたもの。
 鼻から出るな、と思いながらも、リュカは恐らく無意識に押し付けている。
 口を離した後きっと申し訳なさで泣きそうな顔をするのだろう。
 わざと喉を鳴らして飲み込んでやる。
 喉をネバネバ、コリコリとしたものが降っていく。

「……あ……!」

 案の定、慌ててリュカが手を離す。
 前のめりになったせいで悠来の口の中にペニスを深く挿れてしまった、とようやく気付いたのだろう。
 口の端から飲み込みきれなかった精液が垂れる。
 喉奥から同じく精液が迫り上がり鼻からも出てきた。
 それを、手の甲で拭って笑ってやる。

「~~~~っ!」

 役者の顔の筋肉を舐めるなよ、と……ほんの少し意地を張った。
 だが、その甲斐があったというものだ。
 リュカが半泣きで叫ぶ。

「は、吐けえええぇ!」


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