子育て騎士の奮闘記~どんぶらこっこと流れてきた卵を拾ってみた結果~【WEB版】

古森きり

文字の大きさ
上 下
26 / 45
4章 王族騎士、一緒に成長を誓う

告白

しおりを挟む

「ごめんな、アウモ……俺、アウモに食べさせてあげる魔力がなくて……ごめんな……ごめんな……っ」

 アウモに弱い風魔法を食べさせていると、隣でフェリツェが涙を滲ませながらアウモを抱き締めた。
 途端にアウモは俺の指を口から離し、フェリツェに抱きつく。
 人の姿を取ったことで、なんとなくその判断が早くなったのでは、と感じた。
 まだお腹がグゥグゥいっているのに、フェリツェを優先した。

「……アウモは“お父さん”が大好きなんだね」
「ぱぁーう」
「アウモ……っ」

 言葉は通じているし、日々のお世話でアウモはちゃんとフェリツェの親心を理解してくれていたのだ。
 改めて向き合い、抱き締め合う“親子”に――今更ながら俺は父と出会ってから一度しか抱き締めてもらっていないな、と思い出した。
 初めて出会った時に、信じられないという目で見られ、居心地悪さを感じていたらそのまま引き寄せられて抱き締められたのだが、それ以後は貴族の親子として生活していたから。
 孤児院で生活していた時は、誰かしらに抱き着いたり抱き締められたり。
 もちろんフェリツェにも……フェリツェとも。
 そう思ったら、自然にアウモを挟むようにフェリツェを抱き締めていた。
 俺はこの人を――。

「フェリツェ、あのさ……これは、俺の感情込みの話なんだけれど…………俺と、結婚してくれないだろうか」
「…………………………は……?」

 大変に長い長い沈黙のあと、ゆっくりと顔を上げたフェリツェが聞き返す。
 なので噛み砕くように現状を伝えることにした。
 フェリツェの今の立場。
『神』の『親』になっていること。
 あまりにも危うく、翻弄されかねない危険な立ち位置にいるということ。
 すでに王族はフェリツェを男性妻に迎える予定があること。
 もちろん、立場のある男との婚姻がフェリツェとアウモを守る意味もあること。
 反対に今のようにアウモが破壊活動をすれば切り捨てられかねないこと。

「俺はフェリツェのことも、アウモのことも守りたいんだ。国の方針でもしもアウモのこともフェリツェのことも放逐されることになっても、俺には実母の伝手もある。だから……守らせてほしい。アウモのためにも」

 卑怯とは思うかもしれないけれど、アウモのことを引き合いに出して告げることができた。
 そして、一度目を瞑り覚悟を決める。

「フェリツェのことが好きだから」

 真正面から、自分の長年の想いを告白した。
 フェリツェの反応は――放心状態。
 まあ、そうなる気はしていたけれど。

「答えは……その、今すぐでなくてもいいけれど、早い方が色々、いいと思う。少なくとも来月には王族の方から打診がある予定だそうだから。今は、父がそれを止めているらしい」
「お……お、おっ……王族……!?」
「うん。それは『国として風の妖精竜《アウモ》を守る』という意味。けれどもしもアウモが国にとって厄災になりえる場合は、切り捨てられる。もちろん、一度王族に輿入れするとそう簡単に切り捨てられることはないけれど、平民のフェリツェは王宮の謀略には疎いから策に嵌めるのは容易いと思われているんだよ」
「うっ……それは……」
 
 本人もそれを理解しているのだろう、言い返してくることはなかった。
 俺の説明をちゃんと理解して、自分の置かれた状況も把握した、と言ってアウモをまた抱き寄せる。
 フェリツェの腕の中にいるのはこの世界の神の一柱。
 扱いは困るし、どう育てるべきなのかもわからない。
 アウモのお腹の音のせいでどうにも締まらない感じだけれど、フェリツェの深刻な悩み顔。

「さっきも言ったけれど、答えはすぐ出なくてもいいんだ。できるだけ早い方がいいっていうだけ。その、こういう方針で考えている、とかでもいい。俺はその……他の男に君を奪われたくない。だからそういう意味でも俺のことを選んでもらいたい。でも無理強いはしたくないし……」
「う……うん、まあ……その、わかった……よ?」

 本当かなぁ、と疑いの眼差しを向ける。
 だがそんな俺の視線をアウモが振り返って絡め取っていく。
 盛大にお腹がグウウウウウと鳴る。
 
「ぱぁぁあう」
「ああ、限界? また少し食べようか」
「ぱぁーーーう!」

 と、叫んで大きく口を開けた。
 フェリツェの顔を見て確認すると、コクリ、と頷かれる。
 微風の魔法を食べさせるが、本当に終わりがない。
 
「うん……うん、考えるよ」
「フェリツェ?」
「ちゃんと考える。俺は魔力がないから、アウモになにを与えられるのかわからないけれど……俺もアウモのことはちゃんと守りたいから」
「ぱぁう……?」

 俺の指から口を離して、抱き締めてくるフェリツェにアウモは手を伸ばしてまるで「よしよし」と慰めるような仕草をした。
 その仕草は、フェリツェがアウモに対してやってきたことだ。
 それを見て、ああ、やっぱりフェリツェの愛はアウモにしっかり届いていたし、アウモはフェリツェの愛情をちゃんと受け取っている。

「でも、これ以上エリウスに迷惑をかけたくない。それでなくとも討伐任務でエリウスには毎回毎回世話をかけさせているし……申し訳ないじゃん」
「そんな……!」
「俺の問題だよ。これは。俺の気持ちの問題。……自分が情けなくて納得できてないっていうか。だからごめん。考えたい」
「……うん、わかった。待っているよ」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

処理中です...