私の夢物語

故郷

「懐かしいな…」

私はそう呟いた。

キャスター付きのワークチェアに乗りながら、明確には定まらない目的地を求め滑走して行く。

風を感じながら周りを見渡すと、古めかしい瓦屋根の平家、私が幼少期通っていた幼稚園、その幼稚園に隣接されたお寺などなど、懐かしい風景が辺りに広がっている。

…ここはどうやら私が昔住んでいた街らしい。

「お寺、昔は怖かったな…。お化けが出るなんて言われてて…。」

見るところ人通りはほとんどない。

陽はすでに暮れかけ、赤く鮮烈な光が車のボディと私の体を燦々と照らしている。

「？」

ふと、異様な光景が目に止まり、私は足を止めた。

見覚えのある広い庭の民家の塀の前に、人集りができていたからだ。

私はワークチェアを捨て、その場へ向かう。

そこにはスーツ姿の男達が五人ほど屯していた。

「あ……本…か？」

しきりに民家の方に指差しをしている。
何やらぶつぶつ話しているがはっきりとは聞き取ることができない。

私は更に距離を詰めた。

一体民家に何があるのだろうか。

男達と並び民家の庭の方へ目をやる。


そこには…


「あれは本物か？」


今度ははっきりとそう聞こえた。






さあ、どうだろうね