鬼の時

またたび

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2章 赤き光

追跡

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帰り道、幸が足早になった。
「お腹すいた?」と尋ねる竜二。
「なんか怖い!」と幸。
後ろを振り返る竜二に早く帰る様に諭す。
竜二は気付いた、この時代に生きる人間の直感、危険回避の為の直感なのだと。
誰かが追跡してる?レンジャー訓練を思い出す、先輩レンジャーに追われ、見つかったり、捕まると、その後に過酷なペナルティ訓練があった。
しかし幸の顔つきからすると、命に関わるものなのだと!
竜二も後ろに注意しながら、家路を急いだ、確かに数人が付いてくる気配は感じた。
家が見えた時、竜二は幸に話した、「家に入らずに、車の中に入って下さい!」
竜二の真剣な目を見て、コクリと頷いた。
家には着いたが、裏に停めた車の中に入った。
桜を幸に預け、戦闘服に着替えた、通常装備を付け戦闘靴を履く。会社に行く父親に鞄を渡すかの様に鉄帽を桜が差し出した、桜の頭を撫でながら、「大丈夫だから、ここでおかあと、いい子で待ってるんだぞ!」と竜二。
拳銃の弾倉を抜き弾丸を確認して、八九式小銃も同じように確認した、接近戦にも備え、銃剣も装着した。
怯える目をしながら、幸が聞いた。「そんな短い刀で!大丈夫なの?」
レンジャーの中でも射撃はトップクラス、ましてや、接近戦は先輩レンジャーも嫌がる程の男だった。
幸に向かい優しい笑顔を見せて「大丈夫」と言った。車から出て、幸に鍵を掛けろと手振りで指示した、鍵音を確認して竜二は去る。
車の偽装網を下げた瞬間、竜二の顔つきが変わった。
鬼の顔つきに戻った。緑、茶、黒のフェイスペイントを塗る、その中にギラリと輝く鋭い眼差し!そして目を閉じた。
耳を澄ませ、敵の位置、人数を把握する。
二時方向二人、七時方向二人、十時に一人と瞬時に把握した。
「パン、パパン」と乾いた銃声、二時方向の二人を仕留めた、「て、鉄砲?」立ち上がった十時方向の男、すかさず一発で仕留める。
七時方向の男達が忍び寄る、すっと立ち上がる緑色の顔の長身の男を見て、驚くが時既に遅し、「パン、パン」と瞬殺された。
家の横から、大きな声「てめえ!覚悟しやがれ」と刀を振り上げる大柄な男。
「パン」一発の銃声、当たったが、怯まない、また刀を振り上げた、「よくも俺の子分達を!」瞬時に竜二の銃剣が男の胸を貫いていた。帰り血を浴びる竜二、男の頭を拳銃で留目を差した。
静まり帰った、家の裏藪、素に戻った竜二、顔のペイントを落とした。
車の窓を「コンコン」と叩いた、怯えきった顔で覗いた幸に笑いかけた。鍵を開ける幸、車に竜二が乗り込む、「もう大丈夫!」微笑む竜二。
「怪我は?」あわてて竜二を触りまくる幸、帰り血が手に着くと泣き出す幸、「大丈夫!」と笑う竜二、「俺の血じゃないから」って幸を落ち着かせた。
汚れた戦闘服を着替え、小銃を肩に掛けた。
桜を抱き、幸の手を握って家の前に出た。
「鉄砲?どうするんだい?」と聞く幸、「用心の為と鳥や猪を捕るためかなぁ?」と微笑む竜二。幸と桜を家の中に誘う。竜二だけまた外に出る。
「ちょっと片付けてくる!」穴を掘った、死体を全て埋めた。
泥だらけのまま家に入った竜二、桶に水を入れて差し出す幸、手を洗う竜二、「そこに座れ!」と幸に促され、座ると幸が足を洗ってくれた。
足を洗いながら、一粒、また一粒、桶の中に涙が落ちていた。
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