満月の夜にご注意を! 〜双子の兄弟から迫られて!?〜

姫 沙羅(き さら)

文字の大きさ
上 下
31 / 39
本編

第三十話 満ちる月に導かれ②(*)

しおりを挟む
「!」
 元々満月の夜はナイトの領分だ。表に出てこようとするライトを無理矢理抑え込んでいるというようなことを匂わせて、ナイトは不敵な笑みを浮かばせる。
「ルージュ……」
 両手首を一つに纏めて抵抗を封じられ、ルージュの顔に陰が差す。
「ん……っ」
「好きだ」
 ちゅ……っ、と軽いキスを落とし、ナイトが真摯な声色で囁きを落としてくる。
「ん……っ、んん、ぅ……っ」
 再度唇を塞がれて、割り開かれた唇の間からナイトの舌が入り込んでくる。
「ん……っ、ん……、ふ、ぅ……っ」
「愛してる」
 逃げるルージュの舌を追いかけながら深いキスをして、その合間で告げられる愛の言葉。
「あ……っ!」
 なんとかその口づけから逃れようとしていたルージュは、ふいに服の上からその形を確かめるように触れてきた胸元の愛撫に小さな嬌声こえを洩らす。
「待……っ」
 下から優しく掬うように柔らかな膨らみを揉まれ、びくりっ、と肩が揺れた。
「や……っ、ナイ……ッ」
「本気で嫌なら死に物狂いで抵抗しろよ」
 いつの間にかルージュの首筋へと唇を這わせ始めたナイトの声色は少し怖いくらいのもので、泣きたくないのになぜかじわりと涙が滲んでくる。
「あ……っ!」
「そうでなければ、同意とみなす」
 首筋を舐め上げながら一つ二つと胸元のボタンを外されて、びくびくと身体が震えてしまう。
「や……っ、ナ、イト……ッ! だ、め……っ」
 開いたブラウスの中へと潜り込んできた掌が直接胸元に触れてきて、ルージュはふるふると首を振って抵抗の意思を示すものの、それをナイトが受け入れてくれる様子はない。
「あっ、ん……っ、ナ、イト……ッ」
 すぐに実り始めた胸元の先端に触れられて、小さな嬌声が零れ落ちた。
「あ……っ、だ、め……、ん……っ、ゃ……っ」
「可愛い……、ルージュ……。ココもつんと立っててめちゃくちゃやらしい」
「や……っ!」
 指先で摘ままれ、嬉しそうに笑われて、一筋の涙が零れ落ちる。
「……ナ、イト……ッ、お願……っ」
 ナイトを、完全に拒否することができるはずもない。
 けれど、このまま受け入れることもできなくて。
 できることと言えば、ナイトの意思で止めてもらうことを祈るばかりで、ルージュは泣きそうな表情と声で懇願する。
「お願い……。ナイト……」
 抵抗することを完全に止め、ただ唇を震わせて言葉を紡ぐルージュに、その瞬間、ぴたりとナイトの動きが止まった。
「……そんなにライトがいいか?」
 ナイトがライトである以上、本気でルージュが嫌がることをできるはずもなく、酷く冷静な声色で問いかけられて、ルージュは一瞬固まった。
「……ナイト……」
「オレじゃダメなのかよ……っ」
 ルージュの身体を縫い留めたまま苦し気に吐き出され、ルージュはきゅっと手を握る。
 自分のことを求めてくるナイトのことを、愛おしいと本気で思う。
 その背中に腕を回して思わず抱き締めたくなってしまうのは。
「……何度も言ってるじゃない。ナイトもライト、でしょ?」
 決して嫌なわけではないと仄かに微笑んでみせるルージュに、ナイトの顔が苦悩で歪む。
「だったら……!」
 その先の言葉は続かなかった。
 きっと、ナイトにもわかっているのだろう。
 ライトがナイトで、ナイトがライトである理由。
 そして、ルージュの気持ちも。
「……好きだ」
「……うん。嬉しい」
 真摯な瞳と声で告げられて、ルージュの顔には柔らかな微笑みが浮かぶ。
「愛してる」
「うん」
 その言葉を、素直に受け入れる。
 ライトとナイトがルージュのことを心の底から愛してくれていることは、もう充分すぎるほど実感させられている。
 真っ直ぐすぎる二人の愛は、ルージュには過ぎるほどのもので。
「……ルージュの気持ちはよくわかった」
 少しだけ寂し気に微笑わらわれて、くすりと悪戯っぽく微笑み返す。
「ナイトのこともちゃんと好きよ?」
「……わかってるよ」
 ナイトの瞳が優しくルージュを見つめ、さらりと長い髪を撫でてくる。
「ルージュ……」
「……ん……」
 そのままそっと降りてきた唇を、ルージュは素直に受け止めた。
 それは、とてもとても優しいキス。
 触れるだけの口づけにルージュの胸へと切なさが溢れ出て、閉ざした瞳の端から静かに一雫の涙が零れ落ちていった。
 そうしてゆっくりと唇が離れていった時。
「……ルー、ジュ……?」
 そう、僅かな戸惑いの色を浮かべてルージュの名前を呼んだのは。
「ライト……?」
 疑問形を取りながらも、なぜか相手がライトであることを確信していたルージュは、そのまま静かにライトへ問いかける。
「……ナイト、は……?」
 思わずそんな確認をしてしまったのはなぜなのか。
「……わからない」
「え?」
 困ったように小さく微笑わらったライトに、ルージュの瞳は揺らめいた。
 わからない、とはどういうことなのか。
 ここ最近のライトとナイトは、本当に一人二役のように互いの意思疎通ができていた。
 それが。
「ルージュ」
 一体ライトとナイトの間でなにが起こっているのだろうと考え込みかけたルージュに、なぜかライトからはくすりという可笑しそうな笑みが零された。
「ライト?」
「凄くやらしい恰好」
「!?」
 乱れた服から覗く白い肌を見下ろされ、ルージュはこれ以上ないほど大きく目を見張ると真っ赤になる。
「このまま襲ってもいい?」
 悪戯っぽく光る瞳。
「ラ、ライト……!?」
 今、ルージュの目の前にいるのはライトだ。
 なぜか、それだけは確信する。
 ルージュを見下ろす瞳は間違いなくライトのものなのに、その奥には確かな欲望の色が覗いている。
「ま、待って……っ! ライト……!? ぁ、ん……っ」
 耳の後ろ辺りへそっと唇を落とされて、それと同時に優しく腰を愛撫され、びくりと肩が反応した。
「ゃ……っ」
 ぞくりと背筋を伝っていく甘い痺れ。
 それは、思わずそのまま身を委ねてしまいたくなってしまうほど甘い誘惑だけれど。
「……冗談だよ。初めてはちゃんと、ね?」
 身体を起こしたライトがちゅ……っ、と優しく額にキスを落としてきて、ルージュは真っ赤になったまま抗議の目を向ける。
「っ、ライト……!」
「ん?」
 ルージュの顔を覗き込むライトの瞳には、明らかにルージュをからかう色が見て取れる。
「……な、んか……」
「なに?」
 くす、と笑うライトの顔を、ルージュは潤んだ瞳で恨めし気に睨み付ける。
「ライトなのに、ナイトっぽい」
 それはまさにナイトのようなライト・・・・・・・・・・で、妙にドキドキしてしまう。
「……まぁ、元々ナイトは俺だしね」
 そんなルージュの動揺を知ってか知らずか、ライトは困ったように苦笑する。
 ライトの本質はナイト。
 ライトは、ライトがこうでありたいと望んで作り出した理想像。
 ずっと隠し続けていた自分の本性がルージュに知られてしまった今。ルージュがそんなライトのことを受け入れてくれた今。ライトが遠慮・・する必要はどこにもない。
「せめて、キスしてもいい?」
 有無を言わさない雰囲気を纏いながら顎を取られ、ルージュの目は丸くなる。
「え……?」
 これは、本当にライトだろうか。
 その、答えは。

(ライトが……、変わった……!?)

 ナイトが溶け込んだとしか思えないライトの姿に、ルージュは優しく唇を奪われながら、心の中で驚愕の声を上げていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

会社の後輩が諦めてくれません

碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。 彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。 亀じゃなくて良かったな・・ と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。 結は吾郎が何度振っても諦めない。 むしろ、変に条件を出してくる。 誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...