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本編
プロローグ
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星々の煌めく夜空から、美しく輝く満月が、重なり合う二人の姿を見下ろしていた。
そこは、どこかの貴族の屋敷と思われる中庭のガゼボ。
少しだけ淫靡で……、そしてどこか甘い空気が流れる二人は、恐らくは恋人同士であることを窺わせる。
「……ん……っ、ん……」
少しだけピンクがかった茶髪の、ふわふわとした長い髪。少女は切なげに目を閉ざし、恋人からの口づけを懸命に受け止めていた。
ぴちゃり……っ、と、唇が離れる水音が響いて。
「……ルージュ……。好きだよ……」
青年の、僅かに欲の覗く碧眼が、ルージュと呼ばれた少女の顔を映し込む。
「ライト……」
少女――、ルージュもまた、紫がかった瞳で青年――、ライトを見つめ返し、少しだけ上がった吐息で互いの名前を囁き合う。
「可愛い君の姿をもっと見せて……?」
「……ぁ……っ」
首筋に埋められるライトの顔に、ルージュの口からはほんのりと甘い吐息が洩れる。
「……で、も……っ」
今は二人きりとはいえ、ここはいつ誰が顔を覗かせるともわからない庭の一角。僅かな抵抗を示すルージュの身体をゆっくりと押し倒し、ライトの舌先が白い首筋に這わされる。
「……ん……っ」
そのまま、ちゅ……っ、と薄い肌を吸われ、ルージュの身体は小さく震えた。
「ルージュ……。可愛い……」
青い小花の刺繍があしらわれた胸元に伸ばされるライトの手。
「あ……っ、ラ、イト……ッ、だ、め……っ」
ドレスの上から柔らかく胸元を愛撫され、ルージュは小さく震えながら悪戯なライトの腕に手をかける。
「本当に?」
「っ」
形ばかりの抵抗を示すルージュを見下ろして、ライトの口元からはくすりという意地悪な笑みが零れ落ちる。
「その顔、誘っているようにしか思えないよ?」
ほんのりと上気した目元に、潤んだ瞳。
少し深い口づけだけで酔ってしまったらしいルージュからは、甘い色香が薫り立つ。
「あ……っ」
「……甘い匂いがする……」
首筋から鎖骨へと唇での愛撫を下ろしていきながら、器用に背中の留め具を外したライトは、ルージュの白い肩を露わにする。
「このまま最後まで食べちゃいたい……」
「……あ……っ!」
そのままドレスを引きずり下ろせば、そこから零れ落ちた胸は意外にもふくよかだった。
「あぁ……。ココも、こんなになって……。美味しそうだね」
「っぁあ……っ!」
露わにした胸元の果実を口に含まれ、片方の手で直接胸の膨らみを愛撫され、ルージュの身体はびくん! と反応する。
「ルージュは着痩せするタイプだったんだね。柔らかくて……、綺麗だ」
「あ、ん……っ」
片方の果実を舌先で舐め取りながら、もう片方はやわやわと掌で揉み込まれ、ルージュはびくびくと身体を震わせる。
「……あ……っ、ライ、ト……ッ」
ライトの肩越しには美しく輝く丸い月。
「待……、って……」
ここがどこであるか思い出したルージュは、僅かな抵抗を示してふるふると首を振る。
ライトとルージュは、誰もが認める恋人同士であり、しばらく前に婚約を結んだ婚約者同士でもある。
けれど、いくら婚約しているからとはいえ、こんなところでこんなことは許されない。
「あ……っ! だ、め……っ」
その間にも、ドレスの裾から忍び込んできた掌がルージュの内股を撫でてきて、指先が足の付け根の際どい部分に触れてくる。
「……あ……っ、あ……っ、ラ、イト……ッ」
太腿まで露わになった白い脚はびくびくと震え、ルージュは背筋を昇ってくる甘い刺激に抵抗しようと身悶える。
眦には涙が浮かび、下腹部がじんわりと熱を持つ。
けれど、その時。
「……“ナイト”」
「……え?」
ふと動きを止めたライトから真剣な表情で告げられて、ルージュは驚いたように瞳を瞬かせる。
「ライト、じゃなくて。ナイト、って呼んで」
「――――……え……?」
ライト、ではなく、ナイト。
どことなく寂し気に苦笑され、その言葉の意味がわからずに、ルージュの顔へは困惑の表情が浮かぶ。
「ルージュ……。好きだよ……」
「……っ!」
そうしてそのまま続けられる愛撫に、はっと我に返ったルージュは、慌ててライトの――、ナイト、の?――肩を押し返す。
「……あ……っ、貴方、誰!?」
先ほどまでの甘い空気はどこへ行ったのか、胸元を隠し、責めるような瞳を向けてくるルージュに、青年はくすりと自嘲気味に苦笑する。
「……酷いなぁ……、愛する婚約者に向かってそんなこと」
そこにいる青年は、顔も声も、ルージュが知る婚約者そのものだけれど。
「……だ、れ……? ライト……? “ナイト”……?」
困惑に揺れるルージュの瞳に、自虐的に笑う青年の綺麗な顔が映り込む。
「だから、“オレ”は、君の婚約者だって」
月の光が降り注ぎ、青年の金色の髪を幻想的に照らし出す。
「あ……っ!」
ルージュの胸元へ再び埋められる顔。
強引に行為を進めてこようとする青年に、ルージュは懸命に腕を突っぱねる。
「嘘……っ! 違うわ……っ! 離して……っ!」
嫌々と首を振り、ルージュは青年を拒否して悲鳴に近い声を上げる。
恋人であるライトと、姿かたち、声までも、なに一つ変わらない謎の青年。
「貴方は、誰!?」
そこは、どこかの貴族の屋敷と思われる中庭のガゼボ。
少しだけ淫靡で……、そしてどこか甘い空気が流れる二人は、恐らくは恋人同士であることを窺わせる。
「……ん……っ、ん……」
少しだけピンクがかった茶髪の、ふわふわとした長い髪。少女は切なげに目を閉ざし、恋人からの口づけを懸命に受け止めていた。
ぴちゃり……っ、と、唇が離れる水音が響いて。
「……ルージュ……。好きだよ……」
青年の、僅かに欲の覗く碧眼が、ルージュと呼ばれた少女の顔を映し込む。
「ライト……」
少女――、ルージュもまた、紫がかった瞳で青年――、ライトを見つめ返し、少しだけ上がった吐息で互いの名前を囁き合う。
「可愛い君の姿をもっと見せて……?」
「……ぁ……っ」
首筋に埋められるライトの顔に、ルージュの口からはほんのりと甘い吐息が洩れる。
「……で、も……っ」
今は二人きりとはいえ、ここはいつ誰が顔を覗かせるともわからない庭の一角。僅かな抵抗を示すルージュの身体をゆっくりと押し倒し、ライトの舌先が白い首筋に這わされる。
「……ん……っ」
そのまま、ちゅ……っ、と薄い肌を吸われ、ルージュの身体は小さく震えた。
「ルージュ……。可愛い……」
青い小花の刺繍があしらわれた胸元に伸ばされるライトの手。
「あ……っ、ラ、イト……ッ、だ、め……っ」
ドレスの上から柔らかく胸元を愛撫され、ルージュは小さく震えながら悪戯なライトの腕に手をかける。
「本当に?」
「っ」
形ばかりの抵抗を示すルージュを見下ろして、ライトの口元からはくすりという意地悪な笑みが零れ落ちる。
「その顔、誘っているようにしか思えないよ?」
ほんのりと上気した目元に、潤んだ瞳。
少し深い口づけだけで酔ってしまったらしいルージュからは、甘い色香が薫り立つ。
「あ……っ」
「……甘い匂いがする……」
首筋から鎖骨へと唇での愛撫を下ろしていきながら、器用に背中の留め具を外したライトは、ルージュの白い肩を露わにする。
「このまま最後まで食べちゃいたい……」
「……あ……っ!」
そのままドレスを引きずり下ろせば、そこから零れ落ちた胸は意外にもふくよかだった。
「あぁ……。ココも、こんなになって……。美味しそうだね」
「っぁあ……っ!」
露わにした胸元の果実を口に含まれ、片方の手で直接胸の膨らみを愛撫され、ルージュの身体はびくん! と反応する。
「ルージュは着痩せするタイプだったんだね。柔らかくて……、綺麗だ」
「あ、ん……っ」
片方の果実を舌先で舐め取りながら、もう片方はやわやわと掌で揉み込まれ、ルージュはびくびくと身体を震わせる。
「……あ……っ、ライ、ト……ッ」
ライトの肩越しには美しく輝く丸い月。
「待……、って……」
ここがどこであるか思い出したルージュは、僅かな抵抗を示してふるふると首を振る。
ライトとルージュは、誰もが認める恋人同士であり、しばらく前に婚約を結んだ婚約者同士でもある。
けれど、いくら婚約しているからとはいえ、こんなところでこんなことは許されない。
「あ……っ! だ、め……っ」
その間にも、ドレスの裾から忍び込んできた掌がルージュの内股を撫でてきて、指先が足の付け根の際どい部分に触れてくる。
「……あ……っ、あ……っ、ラ、イト……ッ」
太腿まで露わになった白い脚はびくびくと震え、ルージュは背筋を昇ってくる甘い刺激に抵抗しようと身悶える。
眦には涙が浮かび、下腹部がじんわりと熱を持つ。
けれど、その時。
「……“ナイト”」
「……え?」
ふと動きを止めたライトから真剣な表情で告げられて、ルージュは驚いたように瞳を瞬かせる。
「ライト、じゃなくて。ナイト、って呼んで」
「――――……え……?」
ライト、ではなく、ナイト。
どことなく寂し気に苦笑され、その言葉の意味がわからずに、ルージュの顔へは困惑の表情が浮かぶ。
「ルージュ……。好きだよ……」
「……っ!」
そうしてそのまま続けられる愛撫に、はっと我に返ったルージュは、慌ててライトの――、ナイト、の?――肩を押し返す。
「……あ……っ、貴方、誰!?」
先ほどまでの甘い空気はどこへ行ったのか、胸元を隠し、責めるような瞳を向けてくるルージュに、青年はくすりと自嘲気味に苦笑する。
「……酷いなぁ……、愛する婚約者に向かってそんなこと」
そこにいる青年は、顔も声も、ルージュが知る婚約者そのものだけれど。
「……だ、れ……? ライト……? “ナイト”……?」
困惑に揺れるルージュの瞳に、自虐的に笑う青年の綺麗な顔が映り込む。
「だから、“オレ”は、君の婚約者だって」
月の光が降り注ぎ、青年の金色の髪を幻想的に照らし出す。
「あ……っ!」
ルージュの胸元へ再び埋められる顔。
強引に行為を進めてこようとする青年に、ルージュは懸命に腕を突っぱねる。
「嘘……っ! 違うわ……っ! 離して……っ!」
嫌々と首を振り、ルージュは青年を拒否して悲鳴に近い声を上げる。
恋人であるライトと、姿かたち、声までも、なに一つ変わらない謎の青年。
「貴方は、誰!?」
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