上 下
48 / 58
本編

第四十七話 食べ尽くして②࿇

しおりを挟む
「綺麗です」
「あ……っ! ゃ、あ……っ! あっ、あ……っ!」
 くす、と囁かれたかと思うとすぐに肩口へと舌を這わされて、アリーチェの身体は陸に打ち上げられた魚のようにびくびくと跳ね上がった。
「ゃ……っ、あっ、んっ、んっ、あ……っ! あっ、ぁ……!」
「もしかして、背中、弱いですか?」
「は……っ、ん……、そ、なの……っ、わかん、な……ぁ……っ」
 クロムの楽しそうな問いかけに、アリーチェは小刻みに身体を打ち震わせながら、ふるふると首を横に振る。
 じわり、とした涙が滲み、少しでも刺激を逃そうとシーツを掴む指先に力がこもるが、そんな抵抗は全く意味をなさなかった。
「あ……っ、ゃ、あっ、あ……っ!」
 ちゅ……、と首の後ろにキスを落としたクロムは、肩口から背筋へと少しずつ唇を下ろしていく。
「ゃ……っ、あっ、あ、あ……っ、は……っ、ゃ、あ……っ!」
 軽く吸い付かれる感覚がする度に身体が跳ね、ぞくぞくとした刺激に襲われる。
「ゃ……、な、に……っ? あ……っ、あ……、ぁ、ん……!」
 まさか、背中に触れられるだけでこんなふうに感じるとは思わなかった。
「敏感ですね」
「ひぁ……っ? あっ、あ……!」
 くす、と笑ったクロムが楽しそうに指先を滑らせてきて、脚の間からまたじわりと蜜が溢れるのを感じた。
「ゃ、ん……っ、ん、ん……っ、あ……っ!」
 背中へクロムの唇と指先が滑るたびに、ざわざわとした快楽が湧き上がり、嬌声が溢れて止まらない。
「ふ……っ、ぁ、あ、ん……っ、ん……っ」
 気持ちがよくて。気持ちがよくて。
 クロムに触れられるたびに身体が跳ね、頭の中が白くなる。
 けれど。
「あ……っ、あ、あ……っ」
 びくびくと全身を打ち震わせながらも、アリーチェの内股は無意識に擦り合わせるような動きをしてしまう。
 柔らかな快楽はとても気持ちがいいけれど、少しもどかしい感じもして。
「ぁ、ん……っ、ぁ、あ……っ」
 その先の刺激を誘うように、勝手に腰が揺れ動く。
「あっ、あ……っ、ゃ……っ、ク、ロム……ッ、も、っと……っ」
 とうとう気持ちが溢れ出て、アリーチェはまた一つ快楽の涙を零しながら懇願する。
「……もっ、と……っ、触……っ、て……ぇ……っ」
 この身体は、もっと大きな快楽を知っている。
 貪欲な身体は、ただ心地よいだけの快楽では満足できなくて。
「触ってますよ?」
「ゃ……っ! ぁ、ん、違……っ」
 くす、と笑ったクロムが背筋に舌を這わせながら脇腹を撫で上げてきて、涙を滲ませながら首を振る。
「もっと……っ、ちゃん、と……っ」
「ちゃんと触ってます」
「ん……っ」
 羽根のような感覚でさわさわと脇腹を愛撫され、びくりっ、と腰が揺れる。
 確かにクロムは、もう触れていないところなどないのではないかと思うくらい、丁寧にアリーチェの肌を愛撫してくるけれど。
「ぁ、ん……っ、ゃ、意地、悪……っ」
「!」
 思わず後ろへ振り返り、涙の溢れる瞳で恨めしげに訴えれば、クロムの目が驚いたように見張られた。
「な、に……?」
 なにか自分はおかしなことをしてしまっただろうかと不安定に瞳を揺らめかせるアリーチェへ、クロムは僅かに顔を赤くする。
「いえ……。アリーチェさんが可愛すぎて……」
「!」
 照れるように口元を手で覆うクロムには、アリーチェの方が恥ずかしくなってしまい、顔へとじわじわとした熱が広がっていく。
 気位の高い令嬢、と言われていたアリーチェのことを「可愛い」などと言うのは、クロムくらいではないだろうか。
「……こっち、がいいんですか……?」
「ひゃ、ん……っ!」
 そうして恥ずかしくなっている間にふいに内股へと掌を滑らされ、驚きの混じった高い声が上がった。
「……あ……っ!」
 くちゅ……、と蜜の溢れる脚の間に指を滑らされ、びくりっ、と身体が震えた。 
「! もうこんな、ですか……?」
「っ」
 そんなアリーチェに再び驚いたクロムの声が届き、かぁぁぁ……! と全身が赤くなる。
「……だって……、気持ちいいんだもの……」
「っ」
 キス一つで火がついて。舌を絡ませる深いキスには官能を刺激され、ただ触られるだけでお腹の奥が熱くなる。
 瞳を潤ませて告げるアリーチェにクロムは息を呑み、なぜか打ちのめされたようにこうべを垂れる。
「……俺を殺す気ですか」
「?」
 苦悩混じりのクロムの呟きの意味はよくわからない。
 アリーチェはきょとん、と不思議そうな表情かおになり……。
「あ……っ!」
「でも、まだ、です」
「ひゃ、ん……っ」
 今度はお尻の柔らかさを確認するかのようにゆっくりと揉み込まれ、びくりっ、と腰が揺れた。
「可愛い声が出ますね」
「ゃ、ん……っ、ん……」
 ちゅ……、と双丘にキスを落としながら嬉しそうに笑うクロムに、きゅん、と胸がときめてしまうのはなぜなのだろう。
「まだアリーチェさんを味わい尽くしてないですから」
「あ……っ!」
 まろやかな膨らみに吸い付くようなキスを落とされ、腹部がじわじわとした熱を持つ。
「あ……っ、ゃ、……あ……っ!」
 クロムはゆっくりと丁寧にアリーチェの膨らみを手と唇とで堪能し、それから優しい愛撫は下へ下へと下がっていく。
「あっ、あ……!」
 太腿の後ろから膝の後ろ、ふくらはぎまで舌を這わされ、びくびくと身体が打ち震える。
「ゃ……っ、クロ、ム……ッ」
 本当に余すところなくアリーチェを味わおうとするかのような愛撫と口づけに、快楽と羞恥でおかしくなってくる。
「ん……っ、ん……」
 クロムの唇は、とうとう足首にまで這わされて。
「あ……っ!?」
 そこで再び身体を仰向けられ、アリーチェは驚きに目を見張る。
「な、に……? !?」
 と。
「……や……っ!」
 アリーチェの足首を取って持ち上げたクロムが口を開け、足の親指を含もうと顔を寄せてくる姿に、アリーチェは驚きの声を上げる。
「待……っ」
 まさか足の指まで舐められるなど、とても正気ではいられない。
 だが。
「ひゃ、ん……っ!」
 親指が生あたたかな口の中へ包まれる感覚に、ぞくり……っ、と背筋が粟立った。
「や……っ、クロ……ッ」
「アリーチェさんは、足の指まで美味しいんですね」
「……ゃ、ん……っ」
 ぴちゃり……っ、と。まるで見せつけるかのように舌を這わされて、ぞくぞくとした刺激が背筋を昇っていく。
「ゃ、め……っ」
「どうしてです?」
「ひゃ……っ」
 人差し指に移った唇が、今度は軽く歯を立ててきて、びくびくと腰が震えてしまう。
「全部、俺にくれるんですよね?」
「……ゃ、あ……っ、ぁ……っ」
 舌で舐められ、ゆっくりと見せつけるように含まれて。
「頭の先から足の先まで」
「あ……っ、ゃ、ん……っ! あっ、あ……!」
 時には甘噛みしなからアリーチェの足の指を一本一本口に含んでいくクロムに、背筋が甘く痺れていく。
「俺のものにしていいんですよね?」
「ん……っ」
 獰猛な瞳に射抜かれて、びくびくと内股を震わせながら無意識に首を縦に振ってしまう。
「あ……っ、ふ……っ、ぁ、あ……っ」
 クロムの口の中へ指が含まれるたびにお腹の奥がきゅんとなり、脚の間がじわじわと濡れていくのを感じる。
「だったら、食べ尽くして構わないですよね?」
「あ……っ」
 こくこくと頷くアリーチェに満足気な笑みを浮かべたクロムは、今度は反対の脚を手に取った。
「アリーチェさん」
「ん……っ」
 親指の先にちゅ……っ、と口づけられて、ぞくりっ、と背筋が震えた。
「愛してます」
「あ……っ!」
 それは、愛を語るというよりも獲物を狩らんとする獣の瞳に近いものだったが、なぜかお腹の奥深くから蜜が零れ落ちてくる。
「ク、ロム……ッ」
「離しません」
「……ぁっ、ん、ん……っ、違……っ」
 反対側の脚の指先も、一本一本丹念に口に含まれて、アリーチェはびくびくと細腰を震わせながら口元を手で覆ってふるふると首を振る。
「なんですか?」
「……あ……っ、ね、も、ぅ……っ」
 背筋をひっきりなしに昇ってくる甘い痺れに、もう限界だった。
 経験があるわけでもないのに、本能のようなものがこの疼きを埋める術を知っている。
 けれど。
「ひゃ、ん……っ!」
 親指と人差し指の脚の付け根をねっとりと舐められて腰が跳ねる。
「も……っ、や、ぁ……っ」
 次から次へと溢れ出る快楽に、身体はもう限界を訴えていて。
「……も……っ、ほし……っ」
 身体中を脅かす熱を少しでも逃そうと首を振りながら、アリーチェは懇願の涙を零す。
「クロ、ム……ッ!」
「まだだめです」
「あ……!」
 くす、と笑ったクロムが口に含んだ親指へ軽く歯を立ててきて、蜜口からは新たな愛液が溢れ出た。
「や……、ぁ……っ!」
「まだ慣らしてもいないのに」
「ひぁ……っ」
 お仕置きだとでもいうかのように親指へ吸い付かれ、びくんっ! と背中が仰け反った。
「いい子ですから、もう少し我慢してください」
「や、ぁ……っ!」
 ようやく満足したのか、脚の指から口を離したクロムに宥めるように囁かれ、アリーチェは嫌々と首を振る。
「あ……っ! あっ、あ……っ、も……っ、早……っ」
「まだ全部味わってません」
「あ……っ!」
 ギラギラとした瞳でアリーチェを見つめたクロムは、今度は足首から上のラインを指先と唇で辿っていき、アリーチェの口からは歓喜とも絶望とも取れない声が上がる。
「そ……っ、な……っ」
 この拷問のような甘い快楽は、一体いつまで続くのだろうか。
「あ……っ、あ……!」
 欲しくて。欲しくて。
 具体的になにをどうしてほしいのかわからないまま、それでも自然と脚は開いてクロムを誘うように腰が揺れ動く。
「自分から脚を開いて誘うなんて、どこで覚えたんです?」
 そんなアリーチェの淫らな姿に、白い内股へ舌を這わせながらクロムが意地の悪い目を向けてくる。
「そ、なの……っ」
「わかってますよ。俺のことがほしくてほしくて堪らないんですよね?」
 くす、と目だけで笑われて、かぁぁぁ……! と全身が羞恥で赤くなる。
「本当に可愛い人ですね」
「あ……!」
 脚の付け根の際どい部分へ吸い付かれ、また蜜が溢れ出た。
「甘い匂いがします」
「ひぁ……っ!?」
 そうしてアリーチェの開いた脚の間に潜り込んだクロムが蜜口の割れ目を舌でなぞり上げてきて、びくりっ! と身体が震えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされた令嬢は野獣王子に溺愛される!

ビッグベアー
恋愛
BLACK会社で無給の残業体の限界が来て私は通勤中に倒れそのまま意識が薄れ気づくと異世界のアリス・ラディッシュ公爵令嬢として生まれた。 そう私が唯一ハマった携帯ゲームの18禁乙ゲーの〈婚約破棄からの恋〉と言うなんとも分からないゲームだ。 ヒロインのアリスは王太子の婚約者でも悪役令嬢のせいで王太子と婚約破棄をされそこからゲームがスタートがファンの間に広まり私も同僚に進められやってハマった。 正直ヒロインは顔とかあまり出て来ないイベントでドキドキするような画像が出でくる位だから王太子との婚約まで気付くことはなかった。 恋や恋愛何てしたことがないから私は考え悪役令嬢を演じ婚約破棄まで我慢した…

憧れだった騎士団長に特別な特訓を受ける女騎士ちゃんのお話

下菊みこと
恋愛
珍しく一切病んでないむっつりヒーロー。 流されるアホの子ヒロイン。 書きたいところだけ書いたSS。 ムーンライトノベルズ 様でも投稿しています。

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末

藤原ライラ
恋愛
 夜会が苦手で家に引きこもっている侯爵令嬢 リリアーナは、王太子妃候補が駆け落ちしてしまったことで突如その席に収まってしまう。  氷の王太子の呼び名をほしいままにするシルヴィオ。  取り付く島もなく冷徹だと思っていた彼のやさしさに触れていくうちに、リリアーナは心惹かれていく。けれど、同時に自分なんかでは釣り合わないという気持ちに苛まれてしまい……。  堅物王太子×引きこもり令嬢  「君はまだ、君を知らないだけだ」 ☆「素直になれない高飛車王女様は~」にも出てくるシルヴィオのお話です。そちらを未読でも問題なく読めます。時系列的にはこちらのお話が2年ほど前になります。 ※こちら同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

姉の夫の愛人になったら、溺愛監禁されました。

月夜野繭
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、憧れの騎士エルネストから求婚される。しかし、年長者から嫁がなければならないという古いしきたりのため、花嫁に選ばれたのは姉のミレーナだった。 病弱な姉が結婚や出産に耐えられるとは思えない。姉のことが大好きだったリリアーナは、自分の想いを押し殺して、後継ぎを生むために姉の身代わりとしてエルネストの愛人になるが……。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

【完結】【R18】伯爵夫人の務めだと、甘い夜に堕とされています。

水樹風
恋愛
 とある事情から、近衛騎士団々長レイナート・ワーリン伯爵の後妻となったエルシャ。  十六歳年上の彼とは形だけの夫婦のはずだった。それでも『家族』として大切にしてもらい、伯爵家の女主人として役目を果たしていた彼女。  だが結婚三年目。ワーリン伯爵家を揺るがす事件が起こる。そして……。  白い結婚をしたはずのエルシャは、伯爵夫人として一番大事な役目を果たさなければならなくなったのだ。 「エルシャ、いいかい?」 「はい、レイ様……」  それは堪らなく、甘い夜──。 * 世界観はあくまで創作です。 * 全12話

処理中です...