上 下
32 / 58
本編

第三十一話 月の翳りを取り払って③࿇

しおりを挟む
「は……っ、ぁ……、ふ……っ」
 舌と舌とが絡み合い、吸い付くように貪られる口づけに、背筋がぞくぞくと痺れていく。
「ふ、ぁ……っ、ふ……」
 隙間なく重なった唇に、呼吸がままならない苦しさから涙が滲む。
「ん……っ、んぅ……!」
 それでも、その激しすぎる口づけさえ官能を煽る刺激にしかならなくて。
「……は、ん……っ」
 ぴちゃ……っ、という淫猥な水音を響かせて離れた唇からは、細い銀糸が引いた。
「……俺だって男です」
 今のアリーチェにはわかる。アリーチェを喰い尽くそうとするかのように光る獰猛な瞳の色に、ずくり、とお腹の奥が疼いた。
「煽ったのは貴女です」
 どうなっても知りませんよ……? と耳元で囁かれ、背筋がぞくぞくと震えた。
「あ……っ、クロ、ム……ッ」
 場所を入れ替えるようにしてソファに押し倒され、すぐに首筋に吸い付いてきたクロムの唇にびくりっ、と肩が反応する。
「あ……!」
 すでに下着姿だったアリーチェの身体は隠された場所などほとんどなく、クロムの大きな掌に脇腹を直接撫でられ、甘い声が上がる。
「あ……っ、ゃ、あ……っ!」
 そのまま這い上がってきた指先が下着の中に潜り込み、胸元の先端を探り当ててくる感触にびくっと背中が仰け反った。
「“嫌”、です?」
「あ……っ!」
 くす、とからかうように笑いながら、嘘をついたお仕置きだとでも言うかのように胸の先端を強く摘まれて腰が浮く。
「違……、ぁ……っ」
 嫌なのは、自分が自分でなくなりそうな感覚で、クロムから与えられる快楽ではない。
「だめっ、な、の……っ! 気持ちよすぎ、て……っ、……もっと、ゆっく、り……っ、ぁあ……っ、ん……!」
 じわりと涙を滲ませながら訴えている最中に、もう片方の胸の果実に吸い付かれ、涙の雫が零れ落ちる。
「や……っ、意地、わ……っ、ぁあ、ん……っ!」
 軽く歯を立てられ、もう片方は宥めるように転がされ、びくびくと腰が波打った。
「ク、ロム……ッ、だ、め……ぇ……っ!」
 胸元から広がっていく熱は腹部へ到達し、脚の間がじわりと濡れる感覚があって、アリーチェは嫌々と首を振る。
 この前より格段に強い快楽に襲われて、すでに思考回路が甘い色に染まっている。
「……っ、なにか……っ、きちゃ……っ、きちゃ、ぅ……っ、から……ぁ……!」
「これだけで達してしまうんですか? 相変わらず淫乱ですね」
 過敏になっているのは魔力酔いのためで。酷いことを言われているはずなのに、きゅん、とお腹が疼く感じがするのはなぜなのだろう。
「いいですよ。好きなだけイってください」
「……イ、ク……? はぁ、ん……っ!」
 クロムの大きくて器用な手は、胸の膨らみを揉みしだきながら指先で先端の果実を捏ねてきて、びくびくと内股が痙攣してしまう。
「はい。この前よりも酔いは強いでしょうから。我慢しなくていいです」
「あ……っ!」
 舌先に敏感な胸の果実を舐め上げられ、また一雫快楽の涙が舞った。
「ゃ……っ、ほんと、に……っ、きちゃぅ、から……ぁ……!」
 胸元への刺激だけで目の奥がちかちかし、がくがくと腰が揺れる。
「だから、イっていいですよ?」
「は、ん……っ!」
 唇と指先での愛撫を入れ替えたクロムに双方の果実を摘ままれて、白い光が脳を走った。
「イ、ク……っ。イっちゃう……っ! イっちゃう、から……ぁ……!」
 それが達することを意味する言葉だと理解しないまま、クロムの言葉を素直に繰り返す。
「ほんと、素直で可愛いです」
「あ……っ!」
 くす、と洩らされたクロムの吐息に、びくん! と腰が大きく跳ね上がった。
「あっ、あ……っ、ぁぁあ……っ、ん……! イ、ク……っ、イっちゃ……ぁ……っ! クロ、ム……ぅ……っ、ほんと、に、イっちゃぁ……」
 がくがくと腰が揺れ、次から次へと涙が溢れ出す。
「ひぁ……っ!?」
 クロムの空いた片手がアリーチェの腹部を愛撫して、指先に脇腹の性感帯を辿られて悲鳴が上がる。
 クロムが触れてくる場所は、どこも善すぎて。
 過ぎる快楽におかしくなる。
「イク……っ、イ……っ、ちゃ……ぁ……っ」
「胸だけで達するやらしい姿、見せてください」
「あ……!」
 恥ずかしいことを言われても、お腹の奥から止めどなく襲ってくる快楽の波に、もう逆らうことはできなかった。
 きゅ、と胸の果実を摘ままれて、クロムの温かな口の中に吸い付かれ。
「イ……っ、っぁぁああ……っ!」
 それだけの刺激で背筋へ雷に打たれたような感覚が走り抜けていき、アリーチェは甲高い悲鳴を上げていた。
「あ……っ、あ、あ……っ」
 絶頂の波はすぐには引かず、アリーチェは呆然と身体を震わせる。
 そこでようやく胸への愛撫に満足したらしいクロムが身体を起こし、まるで陸に打ち上げられた魚のように跳ねるアリーチェの姿を見下ろして濡れた唇を舐め取った。
「蕩け切った顔をして……。ダメですよ? そんな表情かおを簡単に見せたら」
「ん……っ」
 眦から流れる涙を親指で掬いながらさらりと頬を撫でられて、ぴくり、と肩が反応する。
「抑えが、利かなくなります」
「……ぁ……っ」
 欲の覗く囁きに、なぜかじわじわとした歓喜がお腹の奥から湧き上がってくる。
 それは、本能のままに手酷く貪り尽くしてほしいような、恐ろしすぎるほど貪欲な感覚。
「こんなに甘い薫りを振りまいて、俺をどうしたいんですか」
「そ、んな、の……っ、知らな……ぁ……っ」
 責めるように囁きながら、上半身を余すことなく滑っていく掌に、全身がぞくぞくと粟立った。
 アリーチェの白い肌は毒々しい呪いに侵されているというのに、全く気にすることなく繰り返される柔らかな愛撫に、その事実だけで泣きたいほどの安堵に満たされる。
 否。アリーチェの肌を執拗に愛撫するクロムの動きは、むしろ呪いの刻印を消そうとしているかのようでもあって。
「全身で、俺を誘っているでしょう?」
「ん……っ」
 太腿に移った掌に脚の筋を愛撫され、びくっ、と腰が反応する。
「そんなに、食べられたいですか?」
「あ……っ!」
 脚の間に潜り込みながら囁かれ、思わず頷いてしまいそうになった。
 クロムに触れられるとどこもかしこも善すぎて。
 全身を食べ尽くされたらどれほどの快楽を得られるのだろうかと思ってしまう。
「自分から脚を開いて腰を振るなんて……、可愛すぎます」
「ゃ、あ……っ!」
 そんなつもりは全くなかったのに、クロムの動きに合わせて無意識に開いてしまった膝に、アリーチェは羞恥で全身を薔薇色に染め上げる。
「ほら。腰、揺れてます」
「あ……!」
 内股の際どい部分にちゅ……っ、と吸い付くようなキスを落とされ、腰が大きく跳ね上がった。
 勝手に揺れてしまう腰は、もうアリーチェの意思ではどうにもならなかった。
 クロムにもっと触れてほしくて……。もっと気持ちよくなりたくて。それだけを感じてアリーチェの細腰は揺れ動く。
「ひ、ぁ……っ!?」
 内股の肌の薄い部分に舌先を這わされて、一際大きな快楽の波に甲高い悲鳴が上がる。
「あ……っ、だ、め……ぇ……っ! そ、んな……っ、待……っ」
 唇と掌で内側の脚の付け根を焦らすように愛撫され、腰ががくがくと打ち震える。
「また……っ、きちゃ……っ」
 蜜口がひくひくとした呼吸を繰り返し、次々と愛液が溢れ出ていくのがわかって嫌々と首を振る。
「またイっちゃう……っ、から……ぁ……!」
 昇り詰め、一度引いたはずの熱は、クロムの手にかかればすぐにまた再熱する。
「ぁぁあ……っ!」
 下着の上から蜜口の割れ目を辿られて、脳内に白い光が散った。
「……びしょびしょじゃないですか」
「ゃ、ん……っ、だ、って……っ」
 くす、と引き上がったクロムの唇に、全身を小刻みに震わせながら快楽の涙を零す。
「気持ちぃ……っ、から……ぁ……!」
 下着の上から花芽をゆるゆると愛撫され、がくがくと腰が揺れる。
「ぁぁあ……っ! それ……っ、だ、め……っ、イっちゃ、ぅ……っ」
「……本当に、素直で可愛い人ですね」
 与えられる刺激を全て受け止めて身悶えるアリーチェの姿に、クロムは嬉しそうな笑みを零す。
「これ、気持ちいいですか?」
「ん……っ、ぃい……っ! 気持ち、ぃ……っ」
 花芽を優しく擦られて、アリーチェは胸を突き出すように背中を逸らし、こくこくと首を縦に振る。
「こんなふうにされるのは?」
「ぁぁあ……っ! い、ぃ……っ、いい、の……ぉ……っ」
 敏感な部分を柔らかく揉み込まれ、指の腹で蜜口を撫でられると目の奥がちかちかと白くなる。
「気持ち、ぃ……っ」
 お腹の奥から次から次へと官能が溢れ出し、上り詰めることしか考えられなくなってくる。
「も……っ、と……っ。クロ、ム……っ」
 もっと、触れてほしくて。
 もっと、気持ちよくなりたくて。
「もっと、ほし……っ」
 もっと、深いところまでクロムを感じたくて。
「指、入れてもいいですか?」
 楽しそうに目を細めたクロムに尋ねられ、その意味をよく理解しないままこくこくと頷いた。
 その直後。
「ひぁ……っ!?」
 下着をずらしたクロムの指先が、蜜口の浅い場所へつぷり……っ、と潜り込んできて、アリーチェの身体は大きく揺れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

処理中です...