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本編

第三十一話 月の翳りを取り払って③࿇

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「は……っ、ぁ……、ふ……っ」
 舌と舌とが絡み合い、吸い付くように貪られる口づけに、背筋がぞくぞくと痺れていく。
「ふ、ぁ……っ、ふ……」
 隙間なく重なった唇に、呼吸がままならない苦しさから涙が滲む。
「ん……っ、んぅ……!」
 それでも、その激しすぎる口づけさえ官能を煽る刺激にしかならなくて。
「……は、ん……っ」
 ぴちゃ……っ、という淫猥な水音を響かせて離れた唇からは、細い銀糸が引いた。
「……俺だって男です」
 今のアリーチェにはわかる。アリーチェを喰い尽くそうとするかのように光る獰猛な瞳の色に、ずくり、とお腹の奥が疼いた。
「煽ったのは貴女です」
 どうなっても知りませんよ……? と耳元で囁かれ、背筋がぞくぞくと震えた。
「あ……っ、クロ、ム……ッ」
 場所を入れ替えるようにしてソファに押し倒され、すぐに首筋に吸い付いてきたクロムの唇にびくりっ、と肩が反応する。
「あ……!」
 すでに下着姿だったアリーチェの身体は隠された場所などほとんどなく、クロムの大きな掌に脇腹を直接撫でられ、甘い声が上がる。
「あ……っ、ゃ、あ……っ!」
 そのまま這い上がってきた指先が下着の中に潜り込み、胸元の先端を探り当ててくる感触にびくっと背中が仰け反った。
「“嫌”、です?」
「あ……っ!」
 くす、とからかうように笑いながら、嘘をついたお仕置きだとでも言うかのように胸の先端を強く摘まれて腰が浮く。
「違……、ぁ……っ」
 嫌なのは、自分が自分でなくなりそうな感覚で、クロムから与えられる快楽ではない。
「だめっ、な、の……っ! 気持ちよすぎ、て……っ、……もっと、ゆっく、り……っ、ぁあ……っ、ん……!」
 じわりと涙を滲ませながら訴えている最中に、もう片方の胸の果実に吸い付かれ、涙の雫が零れ落ちる。
「や……っ、意地、わ……っ、ぁあ、ん……っ!」
 軽く歯を立てられ、もう片方は宥めるように転がされ、びくびくと腰が波打った。
「ク、ロム……ッ、だ、め……ぇ……っ!」
 胸元から広がっていく熱は腹部へ到達し、脚の間がじわりと濡れる感覚があって、アリーチェは嫌々と首を振る。
 この前より格段に強い快楽に襲われて、すでに思考回路が甘い色に染まっている。
「……っ、なにか……っ、きちゃ……っ、きちゃ、ぅ……っ、から……ぁ……!」
「これだけで達してしまうんですか? 相変わらず淫乱ですね」
 過敏になっているのは魔力酔いのためで。酷いことを言われているはずなのに、きゅん、とお腹が疼く感じがするのはなぜなのだろう。
「いいですよ。好きなだけイってください」
「……イ、ク……? はぁ、ん……っ!」
 クロムの大きくて器用な手は、胸の膨らみを揉みしだきながら指先で先端の果実を捏ねてきて、びくびくと内股が痙攣してしまう。
「はい。この前よりも酔いは強いでしょうから。我慢しなくていいです」
「あ……っ!」
 舌先に敏感な胸の果実を舐め上げられ、また一雫快楽の涙が舞った。
「ゃ……っ、ほんと、に……っ、きちゃぅ、から……ぁ……!」
 胸元への刺激だけで目の奥がちかちかし、がくがくと腰が揺れる。
「だから、イっていいですよ?」
「は、ん……っ!」
 唇と指先での愛撫を入れ替えたクロムに双方の果実を摘ままれて、白い光が脳を走った。
「イ、ク……っ。イっちゃう……っ! イっちゃう、から……ぁ……!」
 それが達することを意味する言葉だと理解しないまま、クロムの言葉を素直に繰り返す。
「ほんと、素直で可愛いです」
「あ……っ!」
 くす、と洩らされたクロムの吐息に、びくん! と腰が大きく跳ね上がった。
「あっ、あ……っ、ぁぁあ……っ、ん……! イ、ク……っ、イっちゃ……ぁ……っ! クロ、ム……ぅ……っ、ほんと、に、イっちゃぁ……」
 がくがくと腰が揺れ、次から次へと涙が溢れ出す。
「ひぁ……っ!?」
 クロムの空いた片手がアリーチェの腹部を愛撫して、指先に脇腹の性感帯を辿られて悲鳴が上がる。
 クロムが触れてくる場所は、どこも善すぎて。
 過ぎる快楽におかしくなる。
「イク……っ、イ……っ、ちゃ……ぁ……っ」
「胸だけで達するやらしい姿、見せてください」
「あ……!」
 恥ずかしいことを言われても、お腹の奥から止めどなく襲ってくる快楽の波に、もう逆らうことはできなかった。
 きゅ、と胸の果実を摘ままれて、クロムの温かな口の中に吸い付かれ。
「イ……っ、っぁぁああ……っ!」
 それだけの刺激で背筋へ雷に打たれたような感覚が走り抜けていき、アリーチェは甲高い悲鳴を上げていた。
「あ……っ、あ、あ……っ」
 絶頂の波はすぐには引かず、アリーチェは呆然と身体を震わせる。
 そこでようやく胸への愛撫に満足したらしいクロムが身体を起こし、まるで陸に打ち上げられた魚のように跳ねるアリーチェの姿を見下ろして濡れた唇を舐め取った。
「蕩け切った顔をして……。ダメですよ? そんな表情かおを簡単に見せたら」
「ん……っ」
 眦から流れる涙を親指で掬いながらさらりと頬を撫でられて、ぴくり、と肩が反応する。
「抑えが、利かなくなります」
「……ぁ……っ」
 欲の覗く囁きに、なぜかじわじわとした歓喜がお腹の奥から湧き上がってくる。
 それは、本能のままに手酷く貪り尽くしてほしいような、恐ろしすぎるほど貪欲な感覚。
「こんなに甘い薫りを振りまいて、俺をどうしたいんですか」
「そ、んな、の……っ、知らな……ぁ……っ」
 責めるように囁きながら、上半身を余すことなく滑っていく掌に、全身がぞくぞくと粟立った。
 アリーチェの白い肌は毒々しい呪いに侵されているというのに、全く気にすることなく繰り返される柔らかな愛撫に、その事実だけで泣きたいほどの安堵に満たされる。
 否。アリーチェの肌を執拗に愛撫するクロムの動きは、むしろ呪いの刻印を消そうとしているかのようでもあって。
「全身で、俺を誘っているでしょう?」
「ん……っ」
 太腿に移った掌に脚の筋を愛撫され、びくっ、と腰が反応する。
「そんなに、食べられたいですか?」
「あ……っ!」
 脚の間に潜り込みながら囁かれ、思わず頷いてしまいそうになった。
 クロムに触れられるとどこもかしこも善すぎて。
 全身を食べ尽くされたらどれほどの快楽を得られるのだろうかと思ってしまう。
「自分から脚を開いて腰を振るなんて……、可愛すぎます」
「ゃ、あ……っ!」
 そんなつもりは全くなかったのに、クロムの動きに合わせて無意識に開いてしまった膝に、アリーチェは羞恥で全身を薔薇色に染め上げる。
「ほら。腰、揺れてます」
「あ……!」
 内股の際どい部分にちゅ……っ、と吸い付くようなキスを落とされ、腰が大きく跳ね上がった。
 勝手に揺れてしまう腰は、もうアリーチェの意思ではどうにもならなかった。
 クロムにもっと触れてほしくて……。もっと気持ちよくなりたくて。それだけを感じてアリーチェの細腰は揺れ動く。
「ひ、ぁ……っ!?」
 内股の肌の薄い部分に舌先を這わされて、一際大きな快楽の波に甲高い悲鳴が上がる。
「あ……っ、だ、め……ぇ……っ! そ、んな……っ、待……っ」
 唇と掌で内側の脚の付け根を焦らすように愛撫され、腰ががくがくと打ち震える。
「また……っ、きちゃ……っ」
 蜜口がひくひくとした呼吸を繰り返し、次々と愛液が溢れ出ていくのがわかって嫌々と首を振る。
「またイっちゃう……っ、から……ぁ……!」
 昇り詰め、一度引いたはずの熱は、クロムの手にかかればすぐにまた再熱する。
「ぁぁあ……っ!」
 下着の上から蜜口の割れ目を辿られて、脳内に白い光が散った。
「……びしょびしょじゃないですか」
「ゃ、ん……っ、だ、って……っ」
 くす、と引き上がったクロムの唇に、全身を小刻みに震わせながら快楽の涙を零す。
「気持ちぃ……っ、から……ぁ……!」
 下着の上から花芽をゆるゆると愛撫され、がくがくと腰が揺れる。
「ぁぁあ……っ! それ……っ、だ、め……っ、イっちゃ、ぅ……っ」
「……本当に、素直で可愛い人ですね」
 与えられる刺激を全て受け止めて身悶えるアリーチェの姿に、クロムは嬉しそうな笑みを零す。
「これ、気持ちいいですか?」
「ん……っ、ぃい……っ! 気持ち、ぃ……っ」
 花芽を優しく擦られて、アリーチェは胸を突き出すように背中を逸らし、こくこくと首を縦に振る。
「こんなふうにされるのは?」
「ぁぁあ……っ! い、ぃ……っ、いい、の……ぉ……っ」
 敏感な部分を柔らかく揉み込まれ、指の腹で蜜口を撫でられると目の奥がちかちかと白くなる。
「気持ち、ぃ……っ」
 お腹の奥から次から次へと官能が溢れ出し、上り詰めることしか考えられなくなってくる。
「も……っ、と……っ。クロ、ム……っ」
 もっと、触れてほしくて。
 もっと、気持ちよくなりたくて。
「もっと、ほし……っ」
 もっと、深いところまでクロムを感じたくて。
「指、入れてもいいですか?」
 楽しそうに目を細めたクロムに尋ねられ、その意味をよく理解しないままこくこくと頷いた。
 その直後。
「ひぁ……っ!?」
 下着をずらしたクロムの指先が、蜜口の浅い場所へつぷり……っ、と潜り込んできて、アリーチェの身体は大きく揺れた。
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