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ⅩⅩⅦ.The Hierophant
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衝撃的な言葉を告げられたにも関わらず、愛しい少女のことしか目に入っていないセスクは、腕の中に閉じ込めたシェリルの頬へと手を伸ばすとその顔を覗き込む。
「シェリルってば本当に酷いなぁ……。突然いなくなるんだから」
「……ご、ごめんなさい……」
いやに呑気に告げられた言葉に反射的に謝罪して、それからそこで初めて自分を抱くセスクの存在を実感したのか、すぐにぶわりと大粒の涙が浮かび、シェリルはポロポロと涙を溢していた。
「セ、スク……ッ、ごめんな、さ……っ。ごめん、なさ……っ」
「シェリル……」
「セ、スク……ッ、セスク……ぅ……っ」
「……そんなに泣くほどオレのことを想ってくれているのにどうして?」
縋りつくように抱きつかれ、セスクは責めるでもなく愛しい少女へ柔らかな目を向ける。
不思議とシェリルからの愛情を疑ったことは一度もない。それは、今も変わらない。
「ごめんなさ……っ、ごめんなさい……っ」
「言ってくれなくちゃわからないよ」
宥めるように柔らかな髪を撫でながら、泣き続ける少女へと苦笑を溢す。
「お腹の子まで……。どうするつもりだったの」
身重な身体で旅立つなど相当だ。
セスクはシェリルを腕の中に閉じ込めたまま、ここでやっと男の方へと振り返っていた。
「……ラファエル……。お前は一体何者だ?」
気づいていて、今まで知らぬふりをしていたことを口にする。
「オレの想像通りなら、少なくとも300年以上前から生きているだろう」
「……よくご存知ですね」
「!」
「なにを驚いているんです?カマをかけたおつもりですか?」
思いの外あっさりと認められた真実に目を見張れば、ラファエルは相変わらずの人を馬鹿にしたかのような声色で笑う。
「いいんですよ、別に。知られて困ることなら記憶を消せばいいんですから」
「……絶対にやめろ」
ぐっと拳を握り締め、セスクはラファエルを睨み付ける。
その言葉が本気でないことはわかるが、それでもここは断固として拒否する態度を見せなければいけない気がしていた。
「で?こんなところまでこの子を追いかけて来たのですか?」
「そうだ」
飄々と、よくそんなおどけてみせるものだと、セスクは男を睨み付ける眼光を鋭くする。
――セスクをこの地に呼んだのは、他でもないこの男だ。
一切消息を掴めなかった二人の足取り。それが突然、それらしき人物の目撃情報が入ってくるなど、この男が故意にそうしたとしか思えなかった。
――シェリルを、連れ戻させる為に。
「我々は、もう貴方とは一緒にいられないんですよ」
「どうして」
「どうして、って……。その答えを、貴方はもうわかっているのでしょう?」
試すようなその口振りに、自分は覚悟を問われているのだろうことを理解する。
シェリルを手に入れる為の最終試練。
例えなにがあっても。どんな真実を聞いたとしても。この先、決して少女を手離すことなく、守り続けることを誓えるか。
「やはり、いくら払いが良かったからとはいえ、あまり縁深い場所に行くべきではなかったですね」
「それは……」
「はい?」
男は、セスクがどこまで知っていることを知っているのだろう。
覚悟を決め、セスクはラファエルへと挑むような目を向けた。
「……それは、シェリルが、300年前に死んだはずの公爵令嬢だからか?」
その問いかけに、腕の中のシェリルも凍りついていた。
「シェリルってば本当に酷いなぁ……。突然いなくなるんだから」
「……ご、ごめんなさい……」
いやに呑気に告げられた言葉に反射的に謝罪して、それからそこで初めて自分を抱くセスクの存在を実感したのか、すぐにぶわりと大粒の涙が浮かび、シェリルはポロポロと涙を溢していた。
「セ、スク……ッ、ごめんな、さ……っ。ごめん、なさ……っ」
「シェリル……」
「セ、スク……ッ、セスク……ぅ……っ」
「……そんなに泣くほどオレのことを想ってくれているのにどうして?」
縋りつくように抱きつかれ、セスクは責めるでもなく愛しい少女へ柔らかな目を向ける。
不思議とシェリルからの愛情を疑ったことは一度もない。それは、今も変わらない。
「ごめんなさ……っ、ごめんなさい……っ」
「言ってくれなくちゃわからないよ」
宥めるように柔らかな髪を撫でながら、泣き続ける少女へと苦笑を溢す。
「お腹の子まで……。どうするつもりだったの」
身重な身体で旅立つなど相当だ。
セスクはシェリルを腕の中に閉じ込めたまま、ここでやっと男の方へと振り返っていた。
「……ラファエル……。お前は一体何者だ?」
気づいていて、今まで知らぬふりをしていたことを口にする。
「オレの想像通りなら、少なくとも300年以上前から生きているだろう」
「……よくご存知ですね」
「!」
「なにを驚いているんです?カマをかけたおつもりですか?」
思いの外あっさりと認められた真実に目を見張れば、ラファエルは相変わらずの人を馬鹿にしたかのような声色で笑う。
「いいんですよ、別に。知られて困ることなら記憶を消せばいいんですから」
「……絶対にやめろ」
ぐっと拳を握り締め、セスクはラファエルを睨み付ける。
その言葉が本気でないことはわかるが、それでもここは断固として拒否する態度を見せなければいけない気がしていた。
「で?こんなところまでこの子を追いかけて来たのですか?」
「そうだ」
飄々と、よくそんなおどけてみせるものだと、セスクは男を睨み付ける眼光を鋭くする。
――セスクをこの地に呼んだのは、他でもないこの男だ。
一切消息を掴めなかった二人の足取り。それが突然、それらしき人物の目撃情報が入ってくるなど、この男が故意にそうしたとしか思えなかった。
――シェリルを、連れ戻させる為に。
「我々は、もう貴方とは一緒にいられないんですよ」
「どうして」
「どうして、って……。その答えを、貴方はもうわかっているのでしょう?」
試すようなその口振りに、自分は覚悟を問われているのだろうことを理解する。
シェリルを手に入れる為の最終試練。
例えなにがあっても。どんな真実を聞いたとしても。この先、決して少女を手離すことなく、守り続けることを誓えるか。
「やはり、いくら払いが良かったからとはいえ、あまり縁深い場所に行くべきではなかったですね」
「それは……」
「はい?」
男は、セスクがどこまで知っていることを知っているのだろう。
覚悟を決め、セスクはラファエルへと挑むような目を向けた。
「……それは、シェリルが、300年前に死んだはずの公爵令嬢だからか?」
その問いかけに、腕の中のシェリルも凍りついていた。
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