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潜む闇
企み
しおりを挟む光の溢れる綺麗で荘厳な神殿。
キラキラと色彩溢れ、柔らかい光が温かを含んで降り注ぐ祭壇。その前に立つのは、綺麗な顔をした一人の神官。ふわりと微笑みを向けられて、少女は頬を紅く染め微笑みを返す。
その光景が、公式設定でのルチルレイとルミエール神官長の出会い。
(確かに、あのスチルは綺麗だった。だが、あえて言わせて頂こう。あの出会い編は突っ込みのオンパレードであると!)
突っ込み属性を持っていたら、思わず突っ込まずにはいられない。私もゲーム画面に向かって突っ込みをいれたもんだ。侯爵令嬢は力抑えてないで倒せよと。攻略対象者は見てないで手伝えと。トキメクなら助けてからにしようよと。
好感度が突出しないように慎重に慎重に、何度もハウライトに話しかけて好感殿チェックをして、そしてイベントもメインルートのみこなして、ラブイベントは一切出さない。メインは淡々とこなされていくから、ルミエールが出るまで本当に大変だった。しかし、モフモフが足りないので達成感の無さよ!
(あの時は本当、アズライト様不足だったわー…)
ラズーラ殿下の王宮での執務室、王族のラズーラ殿下とリモナイト殿下はソファーに座り、私とルチルレイも勿論ソファー。アイクお兄様とマウシット様は座ってはいるけど、何度も立ち上がったり書類を用意したりと忙しい。
私の膝には丸くなったハウライトとオブシディアンが寛いでいますが、その毛並みを撫でていると、護衛として壁に立つアズラへと視線が向く。リモナイト殿下が撫でているハシビロさんにおどおどしてますが、いつの間に泣かなくなったのかしら。
「アメーリア様、此方のハシビロさんは昨夜のハシビロさんなのですか?」
「違うわよ、此方はハシビロさんの母鳥なの。昔私とアズラを餌と間違えてくれた方ですわ」
「ええ!?」
「もう年だからね、たまにラズ兄様の部屋に遊びにくるんだよ」
リィ様はニコニコと話をしてますが、アズラは顔面蒼白です。倒れないように頑張れ、アズラ!飛んでなければ大丈夫とは、震えながら言ってましたけどね。ちょっと涙目なのが可愛いわ、ラズーラ殿下GJ!
「ああ、そうだ。アリアいい事を教えてあげようか」
「私ですか?」
「ああ、光の神殿の最高神官長の昔から一番のお気に入りは、アトランティ家が秘匿している特製のお菓子だよ」
「はぁ!?」
ニヤリと黒い笑みを浮かべて告げられたのは、誰が流したんだおい!と言いたくなる御言葉でした。いやもう、王弟殿下の口に入る場所なんて限られてましたよね、愚問でしたわ。
お父様の馬鹿!軽々しくお菓子を上げちゃいけませんってあんなに言ったじゃない!
「ですけど、人見知りでしたわよね?あの方」
「横流しをしているのは、国王陛下だからね」
「そっちかぁ!馬鹿って言ってごめんなさいお父様!」
「国王陛下に流しているのは、宰相だよ」
「前言撤回!」
このやり取りにラズーラ殿下はお腹を抱えて大笑いですよ、リモナイト殿下も頬を膨らませて怒っているのは、国王陛下にでしょうか?それともお父様?警護をしているジャスパー様も涙を流して笑ってます。「アズラ、警護を頼んだっ」て其処まで笑うなよ!
(待て、待て待てちょっと待て!という事は、魔力チートなお菓子を、王弟殿下も食べているってこと?なのに魔力が無いの?)
「国王陛下の執務室にはハシビロ二号がいましたね」
「アメーリア嬢のお菓子を、産まれたてで食べたと聞いているあの怪鳥ですか?アイドクレーズ」
「まぁ怪鳥だなんて、ハシビロ二号はとってもお利口さんですわ!マウシット様」
「アメーリア」
「…はい、ラズーラ殿下」
ラズーラ殿下が黒い笑みのまま、書類から視線を上げて私に微笑みを向ける。楽しくて仕方無い時のラズーラ殿下は、声のトーンが少し低くなる。これは、悪戯を思いついたのか、何か楽しい獲物を見つけた時の癖。
「王弟殿下はね、ハシビロ二号に、お菓子を取られていたんだよ。秘匿の頃のお菓子をね?今は国王陛下の執務室に来ることは無くなったし、お菓子も勿論」
「今は料理長が作っておりますわ。学園へ持って行くお菓子は別ですが」
「リィはとても良い子に育ってくれて、嬉しい限りだよアメーリア。最高神官長様も、欲しくて招いてしまうかもね?もしかしたら又学園へいらっしゃるかも知れないよね、ジャスパー」
「はい、ラズーラ殿下」
「殿下の、お望みのままに」
ゆっくりと微笑みを浮かべてカーテシーをする私に、ラズーラ殿下は満足気に頷きジャスパー様へと指示をだして立ち上がった。
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