55 / 71
潜む闇
作戦会議です。
しおりを挟む「アリア、もう大丈夫かな?」
「はい、アイクお兄様」
ルチルレイの目が若干はれぼったいですが、これ以上遅くなると話が出来ないので仕方ありません。ルチルレイはちょっと恥ずかし気にしてますが、そんな所も可愛いので良し!もう可愛いルチルレイにデレデレですよ、こんな妹欲しいー!
「ラズ殿下から伝令が来てるよ」
「まぁ、ハシビロさんお久し振りですわ!」
「…ひっ」
アイクお兄様が連れてきたのは、ラズーラ殿下が好んで使っている、伝令鳥の『ハシビロ』さんでした。前世でのハシビロコウという種族名の鳥に近くて、小さい頃に私がそう呼んでからはその名前で決定してしまったのです。
獣騎するには、人の身体を支えて飛べないという事で、伝書専門になったハシビロさん。私も一度は餌にと捕食されかけましたが、お菓子を持っていたので、そちらに気を取られて捕まえられてしまったと考えています。
(鋭い眼光、大きな猛禽類の翼。恐竜のように太い足は鳥と言うより翼竜っぽいですが、何よりもこのハシビロさんは有能だったのです)
「あ、あの…アメーリア様、その鳥は…」
「ああ、大丈夫ですわよ。ハシビロさんはとても大人しくて、お利口さんなんですよ」
「ぎゃわ!」
お手紙を届けてくれたご褒美に、手作りのクッキーを差し出すと喜んで大きな嘴を開けたので、其の中に放り込んであげます。そういえば、雛の時からハシビロさんにはこうやってクッキーを上げてましたわね。もう一匹兄弟の雛が居ましたが、その子は陛下が気に入ったので、陛下専用となったのです。大出世ですが、本当は私が貰えるはずだったのに…。
「此方からもギベオン殿の話を伝えようと思ってね、少し見てもらってもいいかな?」
「はい、勿論ですわ」
「アリアお姉様、ルチルレイ様失礼します。ハシビロが来てるんですか?」
風の精霊であるリピドから聞いたのか、ラーヴァもウキウキとやってきました。この子動物全般大好きなのですが、ハシビロさんは別格のようで。たまに一緒に飛んで遊んでるとハウライトから聞いています。
(侯爵家の二男としてはどうかなー?と思う時もありますが、子供は元気なのが一番ですしね。素直な良い子のままで、真っ直ぐ育ってくれればいいかな)
公式設定とかだと屋敷では暗い顔をしてこっちをみているだけのラーヴァが、こんなにもニコニコと笑顔で懐いてくれているのです。『侯爵家の一員として』と上から窘めていたアメーリアと違うことをしているのは分かっていますが、公式のアメーリアはお母様の代わりにという侯爵令嬢としての矜持が高かったんでしょうね。
うーんと思いつつも、ラズーラ殿下からの手紙にも目を通します。やはり王宮では神殿に其処まで深入りは出来ないようです。ルミエール様を神殿から王宮の離宮に呼ぶことは出来ても、王太子でもないラズーラ殿下ではそれは難しいので、陛下を頼らなければならないようです。
(王太子が決定していないのは、リィ様の光属性の関係もあるかもしれないな。公式ではラズーラ殿下が火属性で、リィ様が風属性だったもんな)
『そういえば、王家ではその鳥を何度か見かけているが、神殿には使われていないようだな』
「ハシビロさんですか?この子と兄弟の一匹は有能ですが、他の兄弟は躾中のはず」
「違いますよ、嫌いなんですって。動物が」
「は?」
まさかのラーヴァからの一言に、私の目が丸くなってしまう。ラーヴァの情報通なのは、リピドが情報源なのは分かってます。何たって鳥の姿を模した精霊です、侮るなかれ鳥の情報網。
「もしかしたら、ラーヴァを王宮に連れて行ったほうが速いかもね」
「アイクお兄様」
「明日は学園も試験休みになるだろうから、王宮に召集だそうだよ。ハシビロにはグラッシュラー伯爵家かジャスパーの家にも寄り道してもらおうかな…」
「アイクお兄様、其処は是非ともロードナイト家でお願い致しますわ」
ハシビロ母に襲われた経験がありますので、アズラはハシビロさんが怖いのです。あのエメラルドグリーンの瞳に涙を浮かべて怖がる姿は、とても可愛いのでどうせなら生で見たいじゃないですか!
背後にハウライトとオブシディアンの呆れた視線を感じつつも、私だからと納得されるのは解せぬ。
5
お気に入りに追加
8,278
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
サブキャラな私は、神竜王陛下を幸せにしたい。
神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。
体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。
でも、スチル一枚サブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。
※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。
※完結しました。ありがとうございました!
※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。
表紙イラストはのの様に依頼しました。
悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい
鍋
恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。
尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。
でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。
新米冒険者として日々奮闘中。
のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。
自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。
王太子はあげるから、私をほっといて~
(旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。
26話で完結
後日談も書いてます。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる