48 / 71
潜む闇
潔癖の王弟殿下
しおりを挟む呼ばれるのは、光の属性魔法を使う私とリィ様だけかと思って居ました。きっと、試合の最中に目に入った法衣の人物、ルミエール様のお呼び出しでしょうと、私は予測しています。ラズーラ殿下が警戒しているのはリモナイト殿下の為だと分かるのですが、ハウライトとオブシディアンはどうして尻尾が膨らんでるのかな?
「この人数は多いと思うが、代表だけではいけないのか?」
「申し訳ありません、全員を呼ぶようにと指示を受けております」
「…仕方無い、アイク、ジャスパー行くぞ」
「はい、ラズ殿下」
「リモナイト様はアズラ、お前が護衛を」
「はい!」
(ルミエール様の事だろうなぁ…、この時期のイベント何かあった?ないない、だって出てくるの早すぎるもの。試験でやっとアズラに逢うでしょ、ラズ様とリィ様の好感度上げるなら、試験で優勝してるのが前提になるからー…)
頭の中ではぐるぐると記憶を巡らせているが、何せルミエール様のルートは一回流したっきりなので、覚えていない事の方が多いのです。ほら、攻略するってなったらどんな台詞で、どうやって好感度あげてーってあるじゃないですか?アレが分からない。
そもそも、あの王弟様は獣嫌いの王弟様なんですよ。つまり、ハウライトは光の守護聖獣だから、苦手でも大目にみるけど、闇の守護聖獣は寄せたくも無い相手なのです。
(獣人嫌い・動物嫌いって設定だったんだけど、アレルギーならまだしも詳しい説明無いからどうにもなぁ。ルチルレイルートの時だって、ハウライトには無表情なスチルしかなかったもんなぁ。アメーリアルートでも一応出てくるけど、毛嫌いされてたから余計に苦手なんだよ)
今はギベオンが守護しているのはルチルレイですが、これがどう変わっているのかは想像出来ないんですよね。
オブシディアンとハウライトを肩に乗せ、目指すは学園長室なんですが、どうしたのでしょう?人だかりが出来ていますよ?呼ばれたのは私達だけなんですけど、何処で情報仕入れてきたのか、貴族科の令嬢達ですね。
「何事でしょうか?」
「きっと、ルミエール叔父上を見たくて集まってるのかも…。滅多に神殿から出てこない人だから」
「あの方は、神官の中でも最高位の位を持っているからな。唯一の王族なのだから当然かもしれないが」
「でも、どうやって通して貰いましょうか?」
「最悪ジャスパーとアズラに避けさせようか」
「そうですね、ラズ殿下とリィ殿下の護衛は私とマウシットでします」
呼ばれている事もあり、この人混みをどうしたものかと思っていると、ラズーラ殿下とリモナイト殿下に気がついた令嬢達が率先して道を開けてくれました。
中身は違うが侯爵令嬢が人混みを掻き分けて進むわけにもいかず、正直助かりましたが面倒な事に貴族科の御令嬢達の注目を集めてしまいましたわ。私とルチルレイに注がれる冷たい視線が痛いです。え、これなんて罰ゲーム?
「あ、アメーリア様…、怖いです」
「全く情報規制くらいして欲しいですね、注目される意味もわかりませんわ」
ルチルレイと二人で遠い目をしつつ、どうにか入り込んだ学園長室には、思ったとおり法衣を身に纏ったルミエール様がソファーに座っていた。腰まで届く長くて真っ直ぐな銀髪は、清廉なルミエール様を表しているようで、少し緊張してしまいます。
ゆっくりと此方を振り向き、捕らえられた瞳の色は冷たさを感じさせる薄い青。マウシット様と配色は同じなのに、どうしてだろう。マウシット様の方が柔らかくて優しい感じがする。
「何故此処に、闇の獣と下位の貴族がくる?」
「る、ルミエール様、此方の闇の聖獣様は優勝者のモルガ男爵令嬢の守護聖獣様です。こちらの子猫がアトランティ侯爵令嬢の守護聖獣様で…」
「光の守護聖獣のみでいいだろう、下がらせろ」
「ですが、我が学園にはとても稀少な闇の聖獣様が…」
「何度も同じ事を言わせるな」
優勝・準優勝全員を呼び出しといて何様だ、王弟様だったな。こっちはまだやる事あるのに呼ばれたんでしょ!?学園長はギベオンとオブシディアンと真っ青な顔をしているルチルレイを見てオロオロしてますが、私達は上位貴族特有の薄っすらとした怖い微笑みを浮かべています。気づけこの馬鹿。
何がつまらないのか無表情で私達を眺めていますが、その視線がアズラの方を向いた途端に嫌悪の表情が浮かび上がる。公式設定どおり、獣人も動物も嫌いだという事ですね。
(いいだろう、その喧嘩買った!)
「獣人と闇の獣と闇属性を持つものは出せ、汚らわしい…。」
その言葉に、その場に居た全員の思考が一瞬止まった。
17
お気に入りに追加
8,293
あなたにおすすめの小説

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる