攻略なんてしませんから!

梛桜

文字の大きさ
上 下
25 / 71
二人のヒロイン

モフモフ会議開催します

しおりを挟む
 試験でのチーム編成は出来ました、後は合同試験までにある筆記のテストやマナーやダンスの試験に合格するだけです。マナーはお母様という強力な先生がいますので、幼い頃から染み付いているのを発揮するだけです。転生者としての言葉遣いさえ出なければこっちのもんですよ。
 あの後寮に戻る三人にさよならを言って、アイクお兄様と屋敷に戻りましたが、明日のお菓子の用意をしつつマナーのおさらいとダンスのステップの確認をしていると、あっという間に寝ないといけない時間でした。侍女のセシルに怒られてしまいます。

「アリア」
「どうしたの?オブシディアン」

 屋敷の中では自分達の境界の中だからなのか、オブシディアンもハウライトも青年の姿を保っていられます。外に出ると子猫かラーヴァ位の少年の姿に一時間程度しかなれませんが、私は小さな姿もとても可愛いので十分満足しています。

「狼の気配がする」
「あら、ギベオンかしら?今日は来るとは聞いてないんだけど…」
「そうそう来られても困ります、此処は私とオブシディアンで結界を張っているのに」

 オブシディアンの言葉に不機嫌になってしまったハウライトが拗ねた顔をしています、拗ねているのに綺麗な顔をしている所為か似合いますね。青年姿に見合わない子供っぽさがとても可愛いです。

「もしかしたら、ルチルレイのチームの話の報告かもしれないわ」
「リモナイト王子が居たんですから、ちゃんとルチルレイを引き込んでいますよ。心配はしていないので、闇の狼は来なくていいです」
『随分な言い方だな、光の子猫』
「子猫ではありません!私はアリアの光の守護聖獣ハウライトです!」
「ハウライト、落ち着いて」
「ギベオンもおやめなさい、もう屋敷の皆も眠っているのだから、騒いじゃ駄目よ」

 気配無く部屋の窓からやってきたギベオンに、ハウライトが尻尾を膨らませて怒っています。子猫と呼ばれたのがいやだったのはわかるのですが、ハウライトとギベオンはこういうやり取りもたまに面白がってやっている気がするんです。

「僕も、そう思う」
「あら、オブシディアンもそうでしたの?」

 きっと今夜はギベオンが来るだろうと思っていたので、用意しておいたお菓子や簡単に摘めるサンドイッチやおにぎりをテーブルにセットしていると、オブシディアンは子猫の姿になってベッドで丸くなった。私もそっちに言っていいですか!?ああ、でも狼ギベオンもふもふしたい!

「アリア、落ち着いてください。話がまだ何も進むどころか始まっていません」
『それは食事と菓子の後だ』
「コホンッ…。わ、わかってますわよ」

 ハウライトに突っ込みを入れられて、慌てて体裁を整えましたが二人の視線が痛いです。いいじゃないですか、一日の最後にモフモフの手触りを味わって眠りに付くとか、前世からの入眠儀式のようなものですよ。ハウライトとオブシディアンのモフモフは最高です。

『アリアのモフモフと同じく、我にも魔力が必要なのだが?』
「それは却下で、大人しく食事で補給してください」

 魅惑のモフモフは惹かれますが、魔力の受け渡しにディープキスされる意味が解らない。絶対に半分以上はギベオンの趣味だろと疑ってます。若しくは乙女の為に、公式がやりやがったかだと思うんですよね。だって王道設定の裏に潜む腹黒様とかヤンデレとか、ツンデレのツンだけって誰得?ってなるじゃないですか。モフモフは完全に私得だけどね!
 ジッと見つめてくる狼さんに、ぷいっと顔を逸らして却下をだしたら嬉しそうに揺れていた尻尾がへたんっと地面に落ちました。え、いや、待ってよ、そんなに!?


『きゅーーん』
「うっ」
『くぅーん』
「ぐ、ず、ずるい…っ」
「というか、そもそも闇の狼はルチルレイの守護聖獣ですよね?主人から魔力を貰うのが当然では有りませんか?私達の主人に貰おうとか何を考えているんです」
『ルチルレイは今『魔』に憑かれているから、魔力を貰うと我まで闇落ちしてしまう』
「よくそんな事で守護聖獣を名乗れますね」

 泣き落とし作戦にでたギベオンでしたが、ハウライトが援護に入ってくれ一旦忘れたようです。有難うハウライト。いつからルチルレイが魔に憑かれていたのかは分かりませんが、きっとギベオンと長時間離れていないといけなくなった一年の時ではないかというのが、ギベオンの考えです。其の頃から魔力の質が変化したのだとか。
 因みに、人型のギベオンに執着しだしたのも其の頃だそうです。ギベオン的には、貴族科の重苦しい空気に繊細なルチルレイが合わなくて、心が疲れているのだろうとおもっていたようです。甘いよギベオン。でも、思ってたより気遣いさんで優しいな。

「何にしても、引き剥がせるか試してみないといけませんしね…」
「何か良さそうな試験とかありますか?」
「んー…」

 ハウライトの言葉に合同試験までの日程を再度見直して、私はとんでもない事に気がつきました。ヤバイ、本気で私忘れてた!

「私、試験のダンスパートナー探してませんでした」
「は!?駄目じゃないですか、どうして忘れられるんですか!?アイドクレーズやアズライトではどうなんですか?」
「アイクお兄様は上級生ですし、既にお相手がいます。というか今年も大変な競争率で妹だからと言って許してはくれない雰囲気で正直怖かったです。アズラは騎士科ですので違います」

(試験楽勝とか思ってた私、一回滅びればいいと思う)

『なら、我と踊るか?』
「は?」

 頭を抱える私に、ギベオンが人型になって手を差し出しました。その手に自分のを重ね最初のポージングをとってみると、以外にしっくりとくる。そういえば、公式のスチルで狼ギベオンとアメーリアが遊ぶようにダンスするのあったな!大変微笑ましく拝見させて頂きました、アメーリアの表情が渋々だったんだけどね。

「これなら、ルチルレイの反応も分かるわね。一石二鳥だわ」
「いっせ??」
「この礼は、アリアの魔力でいいぞ。その方が人型に変化する時間も長くなる」
「…せ、背に腹は変えられませんが、口以外では駄目ですの?」
「口が一番効率がいい」
「出来るんじゃないですか…っん!」

 しっかりと腰をホールドされて逃げられない密着状態で、大変不本意ですが私がやらかしたのもあるしと、自分の心を宥め、ギベオンに魔力を差し出しました。ギベオンの魔力補給は熱烈な恋人にキスされている感覚に陥ってしまうので、危険なんです!

この後、全力でオブシディアンとハウライト抱き締めてモフモフしました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

サブキャラな私は、神竜王陛下を幸せにしたい。

神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。 体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。 でも、スチル一枚サブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。 ※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。 ※完結しました。ありがとうございました! ※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。 表紙イラストはのの様に依頼しました。

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした

みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。 会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。 そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。

処理中です...