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あなたの隣
守護聖獣の壁
しおりを挟む『それなら、アリアの守護獣達の前で言ってみよ』
アズラの言葉に真っ白になっている私の背後に、急に現れたのは猫型のハウライトを抱えた人型のギベオン。抱えられているハウライトは凄く不満顔をしているけど、走りよっていったオブシディアンには尻尾を振って答えて見せていた。
「ハウライト様は分かりますけど、どうしてギベオン様まで?」
「それは…」
ハウライトが猫型をしているのは、運びやすいからではなく、猫型のほうがオブシディアンと意思疎通が出来るからです。猫語ですね。最もな指摘をしているアズラですが、唇を尖らせて拗ねてますとやってると、やっぱり可愛いアズラだとホッと安心する。
(…安心?困ってたわけではないんですけど…?あれ?)
ギベオンと話をしているからか、冷静になって考えてみると、どうしてあんなに動揺していたのか不思議になってしまう。今までの可愛いアズラのままだと安心して、大人になった、いえ、男だと感じてしまったその瞬間、頭が混乱してしまった……。
「ええええええー!?」
「アリア、お前聞いているのか?」
「は?え?」
「聞いていなかっただろう?お前の闇属性が消えてい無かった原因だ」
「あ、ああ。そうですわね、オブシディアンの影響ではないのですか?」
首を傾げる私に、『やっぱり聞いていなかったのか』と呆れた顔をしたギベオンですが、これは悪いのは私なので素直に謝りました。ごめんなさい、アズラに気を取られてたんです。
「それで、原因でもありましたの?」
「オブシディアンは完全に只の黒猫だ、お前の闇属性の力は、我のものだといっている」
「……はぁ?」
訳が分からないと首を傾げる私に、ギベオンは口元に笑みを浮かべて、近付いてきた。ってちょっと待て!必要以上に、近い近い近い!!
耳元にギベオンの息が掛かる距離、この狼は相変わらず対人距離と言う名のパーソナルスペースが近いのよ!
「何度も、貰っただろう?お前の魔力を」
「…奪ったの間違いでは有りませんの?」
楽しさが混じる声色に、からかっているのだと睨みつける。確かにルチルが『魔』に憑かれていた時期に私の魔力を与えた事はあるけど、それで私にもギベオンの闇属性の加護がついたと?まぁ、好き勝手に顎で扱き使っていたのは反論しない。
「ルチルに比べれば、アリアは守護聖獣の主人として的確だったからな。我の加護も自然と身についたのであろう」
「だからって、アリアに近付いてもいいとはなりませんから!離れてください、ギベオン様」
「アズラ!」
「聖獣様の守るべき主人であろうとも、アリアの事は譲りません!」
勢い良くギベオンから引き離されて、今度はなんとアズラの腕の中です。
(ぎゅっとだきしめられてるううううぅっ!)
今まで考えてもいなかった、ふわりと香ってくる爽やかな草原のそうな良い匂いとか。力強く、でも、私が痛くないように加減されている腕だとか。
もう、私の頭は真っ白とおり越えてオーバーヒートです。
意識をしてしまったんです。
ゲームだと、有りもしなかった壁を自分で作っていた。前世と同じ様に、画面の向こう側に自分から入って、誰の言葉も本気にしようとしなかった。だから、家族だけは安心していたんです。アイクお兄様もラーヴァも家族だからと、家族だから全力で愛してもいいのだと。
アズラは伯爵家の二男で幼馴染で、今では騎士科の将来有望株で
私とオブシディアンを、最後まで『魔』から守ってくれた人で、私の心を守ってくれた人。
「アリア?」
「…っ!!」
呼ばれる名前に、一気に体温が上昇した。
(わたし、私、どうして今まで平気でいられたの!?)
温かい腕の中、耳に心地良い大好きな声、優しいエメラルドグリーンの瞳、惹き付けてやまない愛しいもふもふの耳に尻尾。こんなにもドストライクな人が現実とか!!
私の態度の変化をダイレクトに感じたのか、アズラが瞬きを繰り返して、瞳がキラキラと輝きだす。あ、ちょっと待って、これ、駄目なやつ。
『にゃあーん』
『……仕方ありませんね、闇の狼、引きますよ』
「守護獣の役目はいいのか?」
『うにゃ』
『ですね、馬に蹴られるそうですよ』
「仕方無い、此方も忘れているようだからな」
耳に届いた呆れた声、ぎこちなく首を動かして手を伸ばす。待って、待って三人共!私のHPはもう0なんですよ!置いていかないで、オブシディアン、ハウライト!!いつもは人の話も聞かずに連れ去るのに、何で空気読んでるんですか、ギベオン!
私の味方は何処にもいないのですか!!
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