30 / 32
花の朔祭編
其の十三
しおりを挟む
「お久し振りですわね、クリステラ側妃様」
お嬢様が殊更『側妃』という名称を強調して御呼びになりました。勿論、そこを気にしている側妃様が扇を持つ手に力を籠めたのを見逃しません。にっこりと綺麗な微笑みを浮かべ、狭い馬車の中ですが、淑女の礼を取ります。
「相変わらず、マリアーナに似てます事」
「お母様なのですから、当たり前ではありませんか。美しいお母様に似ているとの言葉は、私には何よりの賛辞でございますわ」
「その忌々しさもそっくりだわ!」
「あら、母も私も昔から普通にお話をしているだけですわ、クリステラ側妃様」
顔を顰めて扇で隠す側妃様に対し、リーユお嬢様はにっこりと微笑みを浮かべたまま素顔を晒しています。エアレズ殿がどうしていいのかオロオロとしていますが、貴方は何もせずじっとしているのが一番だと思いますよ。この時点で終わってますので。
(そもそも、うちのリーユお嬢様に言葉で勝とうと思うほうが間違いだと思います。余計な事をしないようにルファとゼルクがエアレズの側についていますが、ルファはついでに側妃様を狙うの止めなさい)
「私の執事達は、皆優秀でしょう?クリステラ側妃様。皆、幼い頃に貴女が役に立たないと退けた者達ですのよ?力の使い方を学べば、こんなにも優秀なのです」
「……何が言いたいの」
「相変わらず、ご自分で考えるという事をなさりませんのね」
「っ、言い方までマリアーナにそっくりだこと!無礼よ!」
「貴女様は一応側妃でも、離宮に幽閉されているはずの罪人。私は隣国ライラクスの公爵令嬢ですわ、無礼なのはどちら?」
リーユお嬢様のアメジストの瞳が楽しげに細められ、ゆっくりと私の手を取り愛用の扇を取り出す。宿で頼んでいた食事に入れられていたのは、麻痺の薬だとルファが言っていたので、きっとクリステラ側妃が持っていた薬かもしれません。何処で手に入れたのかは、後で記憶に残っていれば調べてみましょうか。
(リーユお嬢様に使われたというなら、何があっても調べますし解毒薬もルファに作らせますが。飲んだのはルファで、何も効いてませんしね)
「そもそも、アイクロメア王国の王妃様に無礼を働いていらしたのは、クリステラ側妃様でしょう?聞きましてよ?部屋の前には鼠や虫達の屍骸の贈り物を毎日、ましてやどうやって丸め込んだのか、食事にまで入れ込むとか。性質が悪すぎませんこと?」
「なんの事でしょう?私には覚えがありませんわ」
「身に覚えがあり過ぎて、忘れてしまったのではありませんか?クリステラ側妃様」
「使用人風情が!弁えなさい!」
口を挟んだ私に、これ幸いと八つ当たりをしに着ましたが、私の顔はそんなに変わったのでしょうかね?エアレズも分からなかったようですし。まぁ、それはそれで戻らなくて済みますし好都合ですが。
「私の顔をお忘れですか?この瞳は、陛下譲りの王家を示す深い藍の色。第二王子のマンティスもこの瞳でしたね、エアレズだけは何故か別の色ですが」
「その金の髪と生意気な口の聞き方…」
(一応記憶に引っ掛かっていたようですが、生意気ですかね?この話し方は昔と変わってますよ?)
お嬢様が殊更『側妃』という名称を強調して御呼びになりました。勿論、そこを気にしている側妃様が扇を持つ手に力を籠めたのを見逃しません。にっこりと綺麗な微笑みを浮かべ、狭い馬車の中ですが、淑女の礼を取ります。
「相変わらず、マリアーナに似てます事」
「お母様なのですから、当たり前ではありませんか。美しいお母様に似ているとの言葉は、私には何よりの賛辞でございますわ」
「その忌々しさもそっくりだわ!」
「あら、母も私も昔から普通にお話をしているだけですわ、クリステラ側妃様」
顔を顰めて扇で隠す側妃様に対し、リーユお嬢様はにっこりと微笑みを浮かべたまま素顔を晒しています。エアレズ殿がどうしていいのかオロオロとしていますが、貴方は何もせずじっとしているのが一番だと思いますよ。この時点で終わってますので。
(そもそも、うちのリーユお嬢様に言葉で勝とうと思うほうが間違いだと思います。余計な事をしないようにルファとゼルクがエアレズの側についていますが、ルファはついでに側妃様を狙うの止めなさい)
「私の執事達は、皆優秀でしょう?クリステラ側妃様。皆、幼い頃に貴女が役に立たないと退けた者達ですのよ?力の使い方を学べば、こんなにも優秀なのです」
「……何が言いたいの」
「相変わらず、ご自分で考えるという事をなさりませんのね」
「っ、言い方までマリアーナにそっくりだこと!無礼よ!」
「貴女様は一応側妃でも、離宮に幽閉されているはずの罪人。私は隣国ライラクスの公爵令嬢ですわ、無礼なのはどちら?」
リーユお嬢様のアメジストの瞳が楽しげに細められ、ゆっくりと私の手を取り愛用の扇を取り出す。宿で頼んでいた食事に入れられていたのは、麻痺の薬だとルファが言っていたので、きっとクリステラ側妃が持っていた薬かもしれません。何処で手に入れたのかは、後で記憶に残っていれば調べてみましょうか。
(リーユお嬢様に使われたというなら、何があっても調べますし解毒薬もルファに作らせますが。飲んだのはルファで、何も効いてませんしね)
「そもそも、アイクロメア王国の王妃様に無礼を働いていらしたのは、クリステラ側妃様でしょう?聞きましてよ?部屋の前には鼠や虫達の屍骸の贈り物を毎日、ましてやどうやって丸め込んだのか、食事にまで入れ込むとか。性質が悪すぎませんこと?」
「なんの事でしょう?私には覚えがありませんわ」
「身に覚えがあり過ぎて、忘れてしまったのではありませんか?クリステラ側妃様」
「使用人風情が!弁えなさい!」
口を挟んだ私に、これ幸いと八つ当たりをしに着ましたが、私の顔はそんなに変わったのでしょうかね?エアレズも分からなかったようですし。まぁ、それはそれで戻らなくて済みますし好都合ですが。
「私の顔をお忘れですか?この瞳は、陛下譲りの王家を示す深い藍の色。第二王子のマンティスもこの瞳でしたね、エアレズだけは何故か別の色ですが」
「その金の髪と生意気な口の聞き方…」
(一応記憶に引っ掛かっていたようですが、生意気ですかね?この話し方は昔と変わってますよ?)
0
お気に入りに追加
1,416
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる